DX推進ガイドライン- 中小企業診断士 経営情報システム 令和3年 第16問

ピックアップ過去問解説

問題

経済産業省は、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver.1.0」を平成30年12月に発表している。これは、DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が押さえるべき事項を明確にすること、および取締役会や株主が DX の取り組みをチェックする上で活用できるものとすることを目的として作成されたものである。 この中で失敗ケースや先行事例がガイドラインとともに取り上げられているが、これらを踏まえた提言に合致する記述として、最も適切なものはどれか。

ア DX 推進に当たっては、トップダウンではなくボトムアップで行う。

イ ITシステムのオーナーシップは、情報システム部門やベンダー企業が持つのではなく、事業部門が持つ。

ウ 技術起点で PoC(Proof of Concept)を行ってから経営戦略を立てる。

エ 刷新後のIT システムは、再レガシー化を回避するために、そのITシステムが短期間で構築できたかによって評価する。

オ 組織・人事の仕組みや企業文化・風土に影響を与えないで済むようにDX プロジェクトを進める。


解答・解説

解答:イ

 本問では、経済産業省の、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」について問われています。

専門的な用語はあまり出てきませんが、DX推進ガイドラインの提言内容が問われており、解答が難しい問題です。

DX推進ガイドラインは、2018年に経済産業省が公表しています。DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が抑えるべき事項を明確にすること、取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できるものとすることを目的としています。DX推進ガイドラインは、「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と、「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」から構成されています。

では、選択肢を見ていきましょう。

選択肢アについて、DX推進ガイドラインの中に、DXの実行にあたって「全社的なITシステムを構築するための体制(組織や役割分担)が整っている」ことが重要であり、「トップダウンで変革に取り組む事例がある」と示されています。ボトムアップで行うことが推奨されているわけではありませんので、不適切です。

選択肢イについて、DX推進ガイドラインの中に、「各事業部門がオーナーシップを持って DX で実現したい事業企画・業務企画を自ら明確にしている」ことが重要であると示されています。また、失敗ケースとして「事業部門がオーナーシップを持たず、情報システム部門任せとなり、開発した ITシステムが事業部門の満足できるものとならない」が挙げられています。よって、選択肢イは適切であり、これが正解です。

選択肢ウについて、DX推進ガイドラインの中に、「データとデジタル技術の活用によって、どの事業分野でどのような新たな価値を生み出すことを目指すか、そのために、どのようなビジネスモデルを構築すべきかについての経営戦略やビジョンが提示できているか」が重要であると示されています。そして、失敗ケースとして、「戦略なき技術起点の PoCは疲弊と失敗のもと」が挙げられています。PoCProof of Concept)とは、新しいプロジェクト全体を作り上げる前に実施する戦略仮説・コンセプトの検証工程をいいます。技術起点でPoCを行ってから経営戦略を立てるのではなく、経営戦略を提示してからPoCを行うことが勧められています。よって、不適切です。

選択肢エについて、DX推進ガイドラインの中に、「刷新後の IT システムには、新たなデジタル技術が導入され、ビジネスモデルの変化に迅速に追従できるようになっているか」、「IT システムができたかどうかではなく、ビジネスがうまくいったかどうかで評価する仕組みとなっているか」が重要であると示されています。ITシステムが短期間で構築できたかによって評価することが勧められているわけではありません。よって、不適切です。

選択肢オについて、DX推進ガイドラインの中に、「DXを推進するに当たっては、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものの変革が不可欠となる」と示されています。組織・人事の仕組みや企業文化・風土に影響を与えないで済むように進めることを提言しているわけではありません。よって、不適切です。

DX推進ガイドラインについて、本問で出題されたポイントは覚えておきましょう。

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