ア ある経営資源が数多くの企業に保有されていても、外部環境の機会を適切にとらえ脅威を無力化するものであれば、この経営資源は一時的な競争優位の源泉となる。
イ 経営陣のチームワークや従業員同士の人間関係などの組織属性が経済価値を生み、希少性があり、かつ他の企業による模倣が困難な場合、この組織属性は企業の一時的な競争優位の源泉となる。
ウ 組織内のオペレーションを他の企業に比べて効率的に行うことができる技術やノウハウが、業界内で希少である場合、模倣困難性を伴わなくても企業の一時的な競争優位の源泉となる。
エ 他の企業が獲得できない経営資源が経済価値を持ち、業界内で希少である場合、その経営資源を活かす組織の方針や体制が整っていなくても、持続的な競争優位の源泉となる。
解答:ウ
【VRIOフレームワークの4つの問いかけ】
VRIOフレームワークの4つの条件は、「VRIOフレームワークの4つの問いかけ」ともいわれます。VRIOフレームワークでは、Value、Rarity、Inimitability、Organizationの順番が重要です。なぜなら、以下の図のようにVからOの順番は、企業にとっての「強み」から「持続的競争優位性」に至る条件付けとなっているからです。
●経営資源に価値があるか(Value)?
「VRIOフレームワークの4つの問いかけ」では、最初に「経営資源に価値があるか(Value)?」と問いかけます。「Yes」と答えられないと、「競争劣位にある」となります。「Yes」であっても競争均衡にしか過ぎません。これは「経済価値に関する問い」といい、外部経営環境変化からもたらされる機会や脅威に対し、企業の経営資源は適応できるか問うものです。機会や脅威は一般的に、マクロ経済環境である技術、人口動態、文化、経済、国際関係、規制や政治等の変化からもたらされると考えられています。更にミクロ経済環境である業界における競争状況、商流におけるリスク、代替品や新規参入者によりもたらされる環境変化を含むものです。
●その経営資源は希少であるか(Rarity)?
次に、「その経営資源は希少であるか(Rarity)?」の問いかけに、「Yes」であるときに一時的な競争優位性があるとされます。希少な経営資源とは、その経営資源が常に不足している状態が続いていることとされます。この稀少な経営資源は例えば、ユニークな接客対応や業務工程など社内マニュアル化されたものも該当します。しかし、マニュアルのように形式知化されている経営資源は比較的容易に模倣することが可能です。模倣されると競争優位性を維持することが困難になります。
●その経営資源は模倣が困難か(Inimitability)?
従って、持続的競争優位性は「その経営資源は模倣が困難か(Inimitability)?」の問いかけに、「Yes」と答えられることが必要となります。日本の中小企業メーカーの職人技に典型的ですが、技能は容易に真似できませんし、暗黙知は本人がその優位性を意識していないこともあり、容易には共有できません。従って、そのような技術者を活かした経営をしている中小企業は持続的競争優位性を有しているといえます。
●その経営資源は組織的に管理されているか(Organization)?
しかし、職人技や暗黙知が組織的に共有されなければどうなるでしょうか。それらを有する技術者が退職してしまえば企業は競争優位性を失ってしまいます。そこで次の問いかけである「その経営資源は組織的に管理されているか(Organization)?」に「Yes」と答えられることが重要になります。このときに、「経営資源は持続的競争優位性を最大化している」ことになります。
では、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アですが、経営資源に希少性や模倣困難性を伴っていません。外部環境の機会を適切にとらえ脅威を無力化するのは、競争均衡の源泉となります。したがって不適切な記述です。
選択肢イですが、希少性、模倣困難性を有する場合、経営資源は持続的優位の源泉となります。したがって、不適切な記述です。
選択肢ウですが模倣困難性はないが、希少性のある経営資源を有する場合は、一時的な競争優位の源泉となるため、適切な記述です。
選択肢エですが経営資源に希少性があるものの、模倣困難性を有しないため、一時的な競争優位の源泉となります。したがって不適切な記述です。
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