中小企業診断士 企業経営理論
令和元年 第10問-社内ベンチャー

ピックアップ過去問解説

問題

 社内ベンチャーに関する記述として、最も適切なものはどれか。


ア 社内ベンチャーは、新規事業に関する「学習装置」としての機能は果たせないが、新規事業の推進と運営に必要な情報的資源を獲得して蓄積し、新規事業に挑戦する心理的エネルギーを生み出す。

イ 社内ベンチャーは、新規事業の推進と運営について、本業や既存事業からの適切な支援を得て、本業や既存事業の思考様式の枠組みの中で事業を推進するための組織である。

ウ 社内ベンチャーは、小さな独立企業のような運営を目的とするが、社内の他部門の支援を得るために自律性よりも社内の意思決定プロセスとの整合性を重視する。

エ 社内ベンチャーは、プロジェクトチームやタスクフォースとして編成されることは少ないが、その運営ではハンズオフ型のベンチャーキャピタルに比べ、親企業の関与の程度は低い。

オ 社内ベンチャーは、本業や既存事業の思考様式にとらわれない発想を生み出し、本業や既存事業と異なった事業への進出や根本的に異質な製品開発を目的として設置されることが多い。



解答・解説

解答:オ

 本問は、社内ベンチャーに関する問題です。社内ベンチャーについて簡単に復習しておきましょう。

社内ベンチャーとは、既存企業の内部にあたかも独立企業のように新規事業を実施する部門や組織を設けることをいいます。新しい事業領域での学習のための装置としても適切な組織です。本業や既存事業とは異なった事業分野への進出や根本的に異質な製品開発を目的として設置されることもあります。

社内ベンチャーの目的には、次のものが挙げられます。

 ●新規事業への進出

 ●チャレンジ精神を持つ人材の育成

 ●社内の既存資産の有効活用など


〈メリット〉 

企業が保有する既存の経営資源を有効に活用できる

リスクを抑えて優位な事業展開がしやすい

〈デメリット〉

事業の開始・展開時に組織的な承認が必要なために時間がかかる

既存事業を脅かすようなビジネスは認められない


 では、選択肢を見ていきましょう。

 選択肢アですが、社内ベンチャーは新規事業に関する「学習装置」の機能を果たすため不適切な記述です。

 選択肢イですが、社内ベンチャーは本業既存事業思考様式の枠組みの中で事業を推進するのではなく、枠組みにとらわれない根本的に異質な製品等の開発に用いられる組織です。従って、不適切な記述です。

 選択肢ウですが、社内ベンチャーは既存の社内意思決定プロセスを経ない自律性が重んじられるため、不適切な記述です。

 選択肢エは、プロジェクトチームタスクフォースから発展して社内ベンチャーとなり、最終的にスピンオフすることもあります。また、ハンズオフ型ベンチャーキャピタルは経営に干渉しないで資金提供をする投資主体です。一方、社内ベンチャーはあくまでも親会社のガバナンス下における自律性の維持であるため、親会社の関与の程度はハンズオフ型ベンチャーキャピタルよりも高くなります。従って、不適切な記述です。

 選択肢オは、本業や既存事業の思考様式にとらわれない発想を生み出し、本業や既存事業と異なった事業への進出や根本的に異質な製品開発を目的として設置されることが多いとされており、適切な記述です。

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