意匠の類似 中小企業診断士 経営法務 平成30年 第8問

ピックアップ過去問解説

問題

意匠制度における「意匠の類似」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠は、登録を受けることができない。

イ 類似の意匠について同日に2 以上の意匠登録出願があり、意匠登録出願人間で行われる協議が成立しなかった場合は、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の意匠登録出願人のみが意匠登録を受けることができる。

ウ 意匠権者は、業として登録意匠の実施をする権利を専有するが、これに類似する意匠についてはそれを実施する権利を専有しない。

エ 意匠登録を受けようとする関連意匠にのみ類似する意匠についても関連意匠として意匠登録を受けることができる。


解答・解説

解答:ア

 経営法務から、意匠法における意匠の類似について問われています。基本的な知識を問われており、確実に正解したい問題です。

 まずは、意匠制度について「類似」の観点から整理してみましょう。

 意匠制度は物品の形態を意匠として保護する制度です。保護を受けるためには、登録を受けたい意匠を示して意匠登録出願を行う必要があります。このとき図面等には1つの意匠のみを示しますが、仮に意匠権の効力がこの1つの意匠にしか及ばないとすると他者の模倣を防ぐことは難しくなります。そこで意匠法では意匠権の効力を類似の範囲にまで拡大しています。

 意匠権の効力を類似の範囲にまで及ぼすことから、新規性と先願主義に影響が出ます。新規性を喪失した意匠(「意匠A」とする)は登録を受けることができません。しかし、新規性を喪失した意匠と類似する意匠(「意匠B」とする)を登録できるとすると、結局新規性を喪失した意匠が類似の範囲として保護されてしまいます(意匠Aは新規性を喪失しているにも関わらず、登録意匠Bの類似範囲として意匠権の効力が及ぶことになります)。そこで新規性を喪失した意匠と類似する意匠も意匠登録を受けられないとしています。

 また、先願主義についても類似の範囲まで考える必要があります。先願の意匠と後願の意匠が類似する場合に、後願の意匠が登録できるとすると後願の意匠権の効力範囲に先願の意匠が含まれてしまうためです。そしてこの先願主義の例外にあたるのが関連意匠の制度です。関連意匠の制度では、先願である本意匠と類似する後願の関連意匠について、先願主義の規定の適用がありません。

 以上を踏まえた上で、選択肢を順番に見ていきましょう。

 選択肢アは、新規性についての記述です。出願前に頒布された刊行物に記載された意匠は新規性を喪失しています。そして、新規性を喪失した意匠と類似する意匠も登録を受けられません。したがって、選択肢アは適切です。

 選択肢イは、同日出願の取り扱いについての記述です。先願主義の原則は上述の通りですが、場合によっては出願日が同じであり先願・後願の区別ができないことがあります。このとき意匠法では、出願人の協議によりどちらが意匠登録を受けるかを決めるとしています。ここで協議が整わなかったり、そもそも協議ができなかった場合には、誰も意匠登録を受けることはできません。なお、商標法では選択肢にあるようなくじ引きが実施されます。したがって、選択肢イは不適切です。

 選択肢ウは、意匠権の効力についての記述です。上述の通り、意匠法では意匠権の効力を類似の範囲にまで拡大しています。したがって、意匠権者は登録意匠に類似する意匠についても業として実施する権利を専有します。したがって、選択肢ウは不適切です。

 選択肢エは、関連意匠についての記述です。上述の通り、関連意匠制度は先願主義の例外として、先願である本意匠と類似する関連意匠の登録を認めるというものです。関連意匠にのみ類似する意匠は本意匠には類似しないため、先願主義の例外とする必要はなく、関連意匠として意匠登録を受けることはできません。したがって、選択肢エは不適切です。

 以上より、選択肢アが正解です。

 意匠法に関してはあまり論点が多くないため、類似の問題が過去問で繰り返し出題されています。過去問で問われている知識を押さえ、それをもとに肉付けしていくとよいでしょう。


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経営法務

 6-2 意匠権と商標権 - 意匠の要件、意匠権の効力と活用方法、意匠権の特徴

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