甲株式会社(以下「甲社」という。)では、営業部門を会社分割の手続を利用して分社化することとしているが、その中で、従業員A~Dの所属について、以下の対応を検討している。これら従業員のうち、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」第2条第1項に基づく通知が必要となる者の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。
なお、分社化により新たに設立される会社を乙株式会社(以下「乙社」という。)とする。
従業員A:
入社以来、営業部門に従事している者であるため、会社分割に際しても、乙社所属とする。
従業員B:
総務部門に従事する者であるが、乙社での総務担当者がおらず、従業員Bは過去に営業部門に関連する総務業務も担当していたことがあるため、会社分割に際しては、乙社所属とする。
従業員C:
経理部門に従事し、営業部門に関連する経理も若干担当していたことはあるものの、会社分割に際しては、甲社所属とする。
従業員D:
一昨年の人事移動で、営業部門に異動となり、その後約2年間その業務に従事していたが、適性の問題もあることから、会社分割に際しては甲社所属とし、異動前の部署に戻す。
[解答群]
ア A、B、C
イ A、B、D
ウ A、C、D
エ B、C、D
解答:イ
経営法務から、会社分割における労働者の承継に関する問題です。
ケース問題で一見難易度が高いですが、会社分割における労働者の保護について基本を押さえていれば、正解できる問題です。
まずは、会社分割における労働者の保護について、簡単に復習しておきましょう。
会社分割を行う場合は、労働者に与える影響が大きいため、労働契約承継法によって労働者が保護されています。
まず、会社分割を理由に、労働者を解雇することはできません。さらに、労働者が元の会社に残るか、分割する事業と一緒に承継するかという問題があります。
分割する事業に従事する労働者は、原則として事業と一緒に承継されます。
承継について労働者本人の同意は必要ありません。分割する事業に従事する労働者が、事業と一緒に承継されない場合は、労働者は異議を申し立てることができます。異議申し立てがあった場合は、労働者は事業と一緒に承継されます。
このように、分割する事業に従事する労働者には、承継を保障する必要があることから、個別の労働者に対して、会社の分割契約に関する通知が必要となります。
また、分割する事業に従事していない労働者を承継する場合も、承継について労働者本人の同意が必要になります。この場合も、個別の労働者に対して、会社の分割契約に関する通知が必要となります。
分割する事業に従事していない労働者を承継しない場合は、従業員には何の不利益もないので、通知の必要はありません。
ここまでを押さえた上で、それぞれの従業員について見てみましょう。
従業員Aは、乙社に承継される事業に従事し、会社分割後も乙社に所属します。従って、会社の分割契約に関する通知が必要となります。
従業員Bは、乙社に承継される事業に従事していませんが、会社分割後は乙社の所属となります。従って、通知が必要となります。
従業員Cは、乙社に承継される事業に従事しておらず、会社分割後も甲社の所属となります。そのため、Cには会社分割に伴う特段の不利益はありません。よって、通知は必要ありません。
従業員Dは、乙社に承継される事業に従事していますが、会社分割後は甲社の所属となります。従って、会社の分割契約に関する通知が必要となります。
以上より、通知が必要なのは従業員A、B、Dとなるため、イが正解となります。
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