募集株式と募集社債との比較に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 募集株式:必ずしも株券を発行する必要はない。
募集社債:必ず社債券を発行しなければならない。
イ 募集株式:いかなる場合でも、取締役会の決議だけで発行できる。
募集社債:いかなる場合でも、株主総会の特別決議がなければ発行できない。
ウ 募集株式:持分会社は発行できない。
募集社債:持分会社も発行することができる。
エ 募集株式:割当てを受ける者が30人を超えた場合は、株式管理者を置かなければならない。
募集社債:割当てを受ける者の数や社債の金額を問わず、社債管理者を置かなければならない。
解答:ウ
経営法務から、募集株式と募集社債に関する問題です。基本的なことが問われているので、正解したい問題です。
まずは、募集株式と募集社債について簡単に復習しておきましょう。
募集株式とは、新たに発行される株式のことです。募集株式の発行をするためには、公開会社では、原則として取締役会の決議が必要です。ただし、第三者に対して特に有利な条件で株式を割り当てる場合は、株主総会の特別決議が必要になります。
株式譲渡制限会社の場合は、原則として株主総会の特別決議が必要になります。ただし、定款に定めがある場合は、取締役会の決議で発行を行うことができます。また、株式譲渡制限会社の場合は、第三者への有利発行をする場合でも、定款に定めがあれば取締役会の決議で発行できます。
株券については、現在の会社法では株券の発行は義務付けられておらず、任意となっています。株券の発行は、定款に定めることによって可能になります。
次に、社債について見てみましょう。
社債とは、簡単に言えば、不特定多数の人からの借金です。株式が自己資本となるのに対して、社債は負債となります。社債は、取締役会の決議、取締役会不設置会社は取締役の決議によって、発行することができます。
社債は償還期間が長いため、社債の管理を適切に行うために、原則として社債管理者を置くことが必要となっています。ただし、各社債の金額が1 億円以上の場合など、一定の条件を満たす場合は、社債管理者を置く必要はありません。
社債でも、株式における株券と同じような社債券を発行することもできます。ただし、社債券は、発行しなくても構いません。
ここまでを押さえた上で、順番に選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、株券、社債券の発行についてです。
復習で説明したとおり、株券、社債券ともに、必ずしも発行する必要はありません。よって、アの記述は不適切です。
選択肢イは、株式および社債の発行に関する決議についてです。
復習で説明したとおり、募集株式の発行をするためには、公開会社では、原則として取締役会の決議が必要ですが、第三者への有利発行の場合や、株式譲渡制限会社の場合は、原則として株主総会の特別決議が必要になります。また、募集社債を発行するためには、取締役会の決議が必要です。よって、イの記述は不適切です。
選択肢ウは、持分会社での発行についてです。
株式は、株式会社においてのみ発行可能なものであるため、持分会社では発行できません。一方、社債は、持分会社であっても発行可能です。よって、ウの記述は適切であり、これが正解となります。
参考として、残りの選択肢も見ておきましょう。
選択肢エは、管理者の設置についてです。
会社法では、株式について株式管理者という制度は規定されていません。
一方、社債は、原則として社債管理者を設ける必要があります。ただし、各社債の金額が1 億円以上の場合など、一定の条件を満たす場合は、社債管理者を置く必要はありません。よって、エの記述は不適切です。
以上より、ウが正解となります。
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