問題
請負又は委任に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」(平成29 年法律第44 号)により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。
ア 委任において、受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
イ 請負人が品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合、注文者は、その引渡しを受けた時から1年以内に当該不適 合を請負人に通知しない限り、注文者が当該不適合を無過失で知らなかった場合でも、当該不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることはできない。
ウ 不可抗力によって委任事務の履行をすることができなくなったときは、受任者は、既にした履行の割合に応じた報酬さえも請求することはできない。
エ 不可抗力によって仕事を完成することができなくなった場合において、仕事内容が可分であり、注文者が既履行部分の給付によって利益を受けるときでも、請負人は、当該利益の割合に応じた報酬さえも請求することはできない。
解答・解説
解答:ア
本問では、請負契約と委任契約について問われています。請負契約や委任契約に関して、やや細かい知識も必要となります。
まず、請負契約と委任契約について、簡単におさらいしておきましょう。
請負契約は、一方が相手方から依頼された仕事を完成させ、相手方がこれに対して報酬を与える契約です。請負契約は、建築工事やシステム開発など、業務を外部業者に外注する場合に良く用いられます。
委任契約は、一方が相手方に法律行為を委託する契約です。例えば、弁護士への訴訟の委任や、不動産売買の委任などが挙げられます。また、会社の取締役も会社との委任関係にあります。
請負契約では、仕事の完成の義務を負うのに対して、委任契約では、仕事の完成についての義務は負いません。
請負契約では、完成した成果物に欠陥その他の契約不適合があった場合、請負人は、売主と同様の契約不適合責任を負うほか、注文者には契約解除権や損害賠償請求権が認められます。
委任契約では、原則として契約不適合責任を負うことはありませんが、業務に関して善管注意義務違反があった場合は、債務不履行責任を負うことになります。
これらを押さえた上で、順番に選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、委任における復受任者を選任に関する記述です。
受任者は、委任者から選任された立場ですので、原則として自ら委任事務を行わなくてはなりません。そのため、受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができないと定められています(民法第644条の2)。
復受任者とは、委任事務を処理するために受任者が選任した者を言います。
よって、アの記述は適切であり、これが正解です。
参考として、残りの選択肢も見ておきましょう。
選択肢イは、請負における契約不適合責任に関する記述です。
請負契約では、完成した成果物に欠陥その他の契約不適合があった場合、請負人は、契約不適合責任を負います。これには、注文者が「その不適合を知った時から1年以内」にその旨を請負人に通知する必要があります。
選択肢イでは、「その引渡しを受けた時から1年以内」に通知と記述されていますので、不適切です。
選択肢ウは、委任における不可抗力による不履行に関する記述です。
天災などの不可抗力によって、受任者の責任によらない理由で委任事務の履行が中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされています。よって、ウの記述は不適切です。
選択肢エは、請負における不可抗力による不履行に関する記述です。
請負契約では、原則として、依頼された仕事を完成させて、これに対して報酬を受け取ります。ただし、不可抗力によって仕事を完成することができなくなった場合、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなされます。このとき、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされています。よって、エの記述は不適切です。
請負契約や委任契約については、過去にも出題されておりますので、出題された事項はしっかり押さえておきましょう。
学習するには
経営法務
6-7 契約とその他の法律知識 契約の種類