解答:5
1 妥当でない。
胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなされます(721条)。ただし、判例は、胎児が生きて生まれることを停止条件として、権利能力があるものとみなされるとの見解(停止条件説)をとり、胎児の母は、胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができないとしています(阪神電鉄事件。大判昭7・10・6)。
2 妥当でない。
失踪宣告を受けると、不在者は、死亡したものとみなされます(31条)。これは、失踪宣告を受けた者の従来の住所を中心とする法律関係について死亡した場合と同様の扱いをするということであり、失踪宣告によって不在者が権利能力を喪失するわけではありません。また、失踪宣告が取り消された場合、失踪の宣告後その取消し前に「行為の当事者とともに善意でした行為」の効力に影響を及ぼしません(32条1項、大判昭13・2・7)。
3 妥当でない。
後見人は、正当な事由があるときは、「家庭裁判所の許可」を得て、その任務を辞することができます(844条)。成年被後見人の許諾を得ても、その任務を辞することはできません。
4 妥当でない。
成年被後見人の法律行為の取消しは、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、成年後見人も成年被後見人もすることができます(9条、120条1項)。後見開始の審判が取り消される必要はありません。
5 妥当である。
後見開始の審判を受けるまでは、成年被後見人ではないので、制限行為能力を理由として法律行為を取り消すことはできません。意思能力のない者のした行為は無効ですが、その無効を主張する者が、意思能力の不存在を立証しなければなりません(大判明38・5・11)。