解答:5
1 妥当でない。
判例は、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」としながら、「個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法2条1項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。」と判示しています(京都府学連事件。最大判昭44・12・24)。
2 妥当でない。
判例は、「歴史的または社会的な意義が認められるような場合には、事件当事者の実名を明らかにすることは許されないとはいえない」と判示しています(ノンフィクション「逆転」事件。最判平6・2・8)、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえません。
判例 ノンフィクション「逆転」事件。最判平6・2・8
ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。
3 妥当でない。
判例は、「個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有する。」と判示しています(指紋押捺拒否事件。最判平7・12・15)。
4 妥当でない。
判例は、本肢のような場合、特段の事情がない限り不法行為が成立すると判示しているわけではありません(少年犯罪推知報道事件。最判平15・3・14)。精神的苦痛の賠償を求めることができる。
判例 少年犯罪推知報道事件。最判平15・3・14
<事実の概要>
当時18歳のAは、殺人により起訴さた刑事被告人である。その裁判の途中で出版社Xが仮名を用いて、Aの法廷での様子などを雑誌に掲載したため、Aは少年法で禁止する推知報道にあたるとして、損害賠償請求をした。
<判旨>
本件記事が被上告人の名誉を毀損し、プライバシーを侵害する内容を含むものとしても、本件記事の掲載によって上告人に不法行為が成立するか否かは、被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無等を審理し、個別具体的に判断すべきものである。
5 妥当である。
判例は、「住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かについて検討するに、住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。」と判示しています(住基ネット訴訟。最判平20・3・6)。