相続・事業承継-遺言
2016年9月学科第55問

ピックアップ過去問解説

問題

 民法上の遺言に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。


1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者による遺言書の全文、日付および氏名の自書ならびに押印が必要である

2.公正証書によって遺言をするには証人2人以上の立会いが必要であり、推定相続人は、その証人になることができる

3.遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回することができる

4.遺言による相続分の指定または遺贈によって、相続人の遺留分が侵害された場合であっても、その遺言が無効となるわけではない


解答・解説

解答:2

相続・事業承継から、遺言に関する問題です。

この問題はFP試験でよく出題される問題ですので、遺言の基本的な要件やルールをしっかり押さえておきましょう。

遺言とは、被相続人の財産をどのように分割したいかという、最終的な意思表示です。遺言には、この意思を法律的に保護し実現させるためにいくつかの要件があります。試験対策としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの要件をしっかり覚えておく必要があります。

・自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者自身が全ての文章と日付を自筆し、署名、押印をすることによって成立します。したがって、ワープロやパソコンでの作成は無効です。あくまでも自筆であることが条件です。書式等に不備があれば遺言自体が無効になってしまいます。

・公正証書遺言

公正証書遺言を作成するには、公証人のほか、証人が2人以上必要です。この証人には、未成年者や推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族はなることができません。

・秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の存在自体は明確にし、内容は秘密にできる遺言です。署名だけは自分で行う必要がありますが、本文等はパソコンで作成することも可能です。秘密証書遺言では、遺言者が遺言に署名、押印をして封筒に入れ、遺言に押印した印章で封印します。さらに、公証人が証人2人以上の立会いのもと、提出日と遺言を書いた筆者の氏名および住所等、申述内容を封書に記載し遺言者および証人とともに署名、押印することによって成立します。

 遺言の撤回は自由です。また、日付が後の遺言がそれより前に作成された遺言に抵触するときは、その抵触する部分については後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなされます。

これを踏まえて、選択肢を見ていきましょう。


1)適切

自筆証書遺言は、文章、日付、署名の全てを遺言者自身が自書し、押印することで成立します。いずれか一つでも不備があれば遺言自体が無効になってしまうので、実際に作成する場合は弁護士や司法書士などの専門家に確認してもらうとよいでしょう。

2)不適切

公正証書遺言の証人に、推定相続人はなることができません。証人の資格がない人を証人にした場合、遺言が無効になるので注意が必要です。
公正証書遺言は、公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの恐れがなく、内容が無効になることもありません。また、相続開始後、家庭裁判所での検認手続が不要で、速やかに執行に着手できます。

3)適切

上記でも触れた通り、遺言の撤回は自由です。したがって、後で気が変わったら新しい遺言を作成することが可能です。
日付が後の遺言がそれより前に作成された遺言に抵触するときは、その抵触する部分については後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなされます。
自筆証書遺言を撤回する場合は、その遺言を破棄してしまえば遺言自体がなくなります。公正証書遺言の場合は原本を破棄できないので、新しく遺言書を作成して撤回する必要があります。

4)適切

遺言による財産の分割や指定方法が、相続人の遺留分を侵害していたとしても遺言自体は無効になりません。
相続人が遺留分減殺請求権を行使した場合、侵害された遺留分について無効になります。もし相続人が遺留分減殺請求権を行使しなければこの効力は生じません。


この問題は「不適切」なものを選ぶ問題なので、選択肢2が正解となります。


※正解と解説は、試験実施日の基準で記述しています。その後の法令改正等には対応していませんのでご注意ください。


学習するには

「6-2 遺産分割・遺言」 遺言


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