相続・事業承継-相続財産
2016年5月学科第55問

ピックアップ過去問解説

問題

 相続財産に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。


1.相続または遺贈によって取得した財産のうち、被相続人に帰属する一身専属権は、相続税の課税財産とならない。

2.被相続人に対して支給されるべきであった退職金を相続人が受け取った場合、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続税の課税財産となる。

3.被相続人からの贈与で贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産のうち、その控除額に相当する金額は、相続が開始する前3年以内の贈与であっても相続財産に加算する必要はない。

4.相続時精算課税制度の適用を受けて取得した贈与財産は、相続開始時の相続税評価額で相続財産に加算される


解答・解説

解答:4

相続・事業承継から、遺言に関する問題です。

相続税を計算する場合、相続した財産だけを対象に単純に計算するわけではありません。相続や遺贈で受取った本来の相続財産に、「加える財産」と「加えない財産」があります。それらの調整を行ったうえで、課税遺産総額を求めます。

相続税の課税財産は、本来の相続財産とみなし相続財産の2つの考え方がありますが、特にみなし相続財産についての理解が重要です。みなし相続財産とは、相続の手続きにおいては被相続人の財産ではないが、相続財産として相続税の課税対象となる財産のことです。

例えば、死亡保険金などは、被相続人が生前から持っていた財産ではありません。民法上は亡くなった人の財産(遺産)ではなく、契約上受取人に指定された人の固有の財産とされます。しかし、相続税法上は、相続財産とみなして相続税が課税されるので「みなし相続財産」といいます。具体的には、生命保険金等、死亡退職金、生命保険契約に関する権利等があります。

他に、一定の贈与財産についても課税対象の相続財産に加えます。贈与の加算には、「相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産」と「相続時精算課税制度による贈与財産」があります。

これを踏まえて、選択肢を見ていきましょう。


1)適切

一身専属権とは、特定の人に対してのみ生じる権利で他の人に移転できない権利(義務)のことです。通常、相続では、被相続人の一切の権利義務を相続人が承継しますが、一身専属権は相続人に移転できないので、相続税の課税財産とはなりません。

2)適切

死亡後3年以内に支給が確定した退職金等を受取った場合、みなし相続財産となります。死亡退職金で注意が必要なのは、「死亡後に確定した」という部分です。死亡前に確定していた退職金の場合、たとえ受け取り時点が死亡後であっても、死亡前の被相続人の財産となるので、本来の相続財産になります。

3)適切

原則として、相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続税の課税価格に加算されます。ただし、「贈与税の配偶者控除(特定贈与財産)」や「住宅取得資金の贈与税の非課税制度の適用を受けた部分」は生前贈与の加算に含まれません。

4)不適切

相続時精算課税の適用を受けると、贈与された財産は相続税の課税価格に加算されます。このとき加算される価格は「贈与時」の価格で加算します。したがって、「相続開始時の」とある問題文は不適切です。


この問題は「不適切」なものを選ぶ問題なので、選択肢4が正解となります。


※正解と解説は、試験実施日の基準で記述しています。その後の法令改正等には対応していませんのでご注意ください。


学習するには

「6-3 相続と相続税」 相続財産


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