問題
債券投資におけるリスクの一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 債券投資において、発行体の信用度、償還までの期間および利回りが同じであれば、表面利率(クーポンレート)が低い債券ほど、金利の変動による債券価格の変動は小さい。
- 公募により発行されて不特定多数の投資者に保有され、発行額が大きい債券は、流動性が高いとされる。
- 債券の発行体の財務状況の悪化や経営不振などにより、償還や利払い等の不履行の可能性が高まると、当該債券の市場価格は下落する。
- 債券の信用格付では、通常、BB格(相当)以下の債券は「投機的格付」、BBB格(相当)以上の債券は「投資適格」とされるが、この信用格付が引き上げられた場合に当該債券の利回りは低下する。
解答・解説
解答:1
債券投資のテーマから、債券のリスクに関する問題です。
債券投資のテーマでは、債券の基本的な仕組みとリスクに関して出題されることが多いです。特に、リスクと債券価格の関係はしっかり覚えておきましょう。
よく出題されるリスクとしては、「信用リスク」があります。信用リスクとは、発行体の経営状況の悪化や倒産などにより、債券の利息や元本の支払いが滞ったり、支払われないというリスクです。デフォルトの可能性が高いほど「信用リスクが高い」といいます。信用リスクが高い債券では、債券価格が下落し、利回りは高くなります。逆に、信用リスクが低い債券では、債券価格が上昇するので、利回りは低くなります。
この信用リスクを測る基準として「格付け」があります。格付けとは、元本と利息が返済される確実性のレベルをアルファベットで表わしたものです。格付けを行う格付け会社によって、判断結果に違いが生じることもあります。しかし、アルファベットの意味するところは同じです。
まず、信用リスクが一番低いとされているものをAAA(トリプルエー)といいます。つぎいでAA(ダブルエー)、A(シングルエー)となり、BBB(トリプルビー)と続きます。一般的に、BBB以上は投資適格といわれ、安全性が高い債券といえます。一方、BB(ダブルビー)以下は投資不適格といわれ、投機的債券といえます。
これを踏まえて、選択肢を見ていきましょう。
1)不適切
債券の発行体の信用度、償還までの期間および利回りが同じ場合は、表面利率の大小で価格が変化します。低クーポン債券は、高クーポン債券に比べて、金利変動に対する価格変動が大きくなります。
債券の価格は市場金利が上昇すると下落し、市場金利が低下すると上昇します。これは、債券のクーポンが一定のため、相対的な魅力が変化するからです。
例えば、市場金利が1%で、債券Aはクーポンが2%、債券Bはクーポンが5%だったとします。その後市場金利が2%になったときには、債券Aの魅力はほとんどなくなるのに対して、債券Bはまだ3%の差があるため魅力があります。このように、低クーポン債のほうが、金利変動の影響が大きいため、債券Aは債券Bにくらべて、より大きく価格変動することになります。
2)適切
流動性が高いというのは、容易に換金(売買)できるということです。公募で不特定多数に発行され、かつ発行額が大きい債券は流通量が多くなるため、その後の流動性は高くなると言えます。
3)適切
利払いや元本の支払いが滞ることをデフォルトといい、信用リスクのことをデフォルトリスクともいいます。
デフォルトの可能性が高いほど「信用リスクが高い」といいます。信用リスクが高い債券では、債券価格が下落し、(クーポンは変化しないので)利回りは高くなります。逆に、信用リスクが低い債券では、債券価格が上昇するので、利回りは低くなります。
4)適切
一般的に、BBB以上は投資適格といわれ、安全性が高い債券といえます。一方、BB(ダブルビー)以下は投資不適格といわれ、投機的債券といえます。
格付けが引き上げられるということは、信用リスクが低下(信用がアップ)するので、債券価格が上昇します。債券価格が上昇しても、額面に対するクーポンは変化しないので、結果として利回りが低下します。ローリスク・ローリターンと考えればよいでしょう。
この問題は「不適切」なものを選ぶ問題なので、選択肢1が正解となります。
学習するには
「3-3 債券投資」 債券のリスクと格付