問題
労働者災害補償保険の給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 労働者が業務上の負傷または疾病の療養により労働することができないために賃金を受けられない場合、賃金を受けない日の第1日目から休業補償給付が支給される。
- 労働者が業務上の負傷または疾病により、労災指定病院で療養補償給付として受ける療養の給付については、労働者の一部負担金はない。
- 労働者の業務上の負傷または疾病が治癒し、身体等に一定の障害が残った場合に、その障害の程度が労働者災害補償保険法で規定する障害等級に該当するときは、障害補償給付が支給される。
- 労働者が業務上の災害により死亡したときに支払われる遺族補償年金の年金額は、受給権者本人および受給権者と生計を同じくしている受給資格者の人数により異なる。
解答・解説
解答:1
社会保険から、労働者災害補償保険(労災保険)に関する問題です。
労災保険とは、仕事中の事故(業務災害)や通勤途上の事故(通勤災害)による、病気やケガ、障害、死亡について補償する制度です。
労働保険で最も重要なことは次の3つです。
- 保険料は全額事業主負担であること。
- パートタイマー・アルバイトから日雇労働者や外国人労働者まですべての労働者が対象であること。
- 労災保険は窓口での自己負担がありません。(※通勤災害の場合、初回だけ200円の自己負担があります。)
主な給付の内容は以下の通りです。
保険給付の種類
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支 給 事 由
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療養(補償)給付
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療養の給付
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業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関等で療養する場合 通勤災害のみ初回200円の自己負担あり
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療養の費用の支給
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業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養する場合
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休業(補償)給付
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業務災害又は通勤災害による傷病に係る療養のため労働することができず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合。4日目から支給される。(3日間は待期期間)
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障害(補償)給付
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障害(補償)年金
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業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合
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障害(補償)一時金
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業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合
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遺族(補償)給付
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遺族(補償)年金
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業務災害又は通勤災害により死亡した場合(法律上死亡とみなされる場合、死亡と推定される場合を含む。)
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遺族(補償)一時金
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1. 遺族(補償)年金を受け取る遺族がいない場合
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2. 遺族(補償)年金の受給者が失権し、他に遺族(補償)年金を受けることができる遺族がない場合で、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき
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※この他にも支給項目があります。
ここまでを押さえた上で、順番に選択肢を見ていきましょう。
1)不適切
労災保険の休業(補償)給付には待期期間が3日設定されています。したがって、休業4日目からの支給になります。
なお、最初の3日間の休業分については、業務災害の場合、事業主が労働基準法に定める休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行います。
2)適切
労災保険の療養給付では、通勤災害を除き、労働者の自己負担はありません。これは健康保険との大きな違いです。
3)適切
業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合は障害(補償)年金が支給されます。
業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合は障害(補償)一時金が支給されます。
※「治ったとき」とは、傷病の症状が安定し、医学上それ以上医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいいます。
4)適切
遺族(補償)年金の支給額は、受給権者本人および受給権者と生計を同じくしている受給資格者の人数によって年金額が異なります。(※遺族特別支給金の場合は一律金額です)
なお、受給権者には順位が定められています。
この問題は「不適切」なものを選ぶ問題なので、選択肢1が正解となります。
※正解と解説は、試験実施日の基準で記述しています。その後の法令改正等には対応していませんのでご注意ください。
学習するには 「1‐4 社会保険(労働保険)」 労災保険