賃貸不動産経営管理士とは、賃貸住宅管理に関する
高い知識・技能・倫理観をもって適切な不動産管理を行う専門家。
令和3年に国家資格となり、注目されている資格の1つです。
「宅地建物取引士(宅建士)とダブルで持つことでキャリアが広がる」
「不動産業界以外の人にもおすすめできる資格」
そう語るのは、一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会の結城淳さん。
今回は結城さんに賃貸不動産経営管理士を取得するメリットや
他資格とのダブルライセンスについて、詳しくお話を伺いました。
――最近注目を集めている賃貸不動産経営管理士ですが、「宅建士との違いがわからない」という声も少なくないようです。
まず宅建士と賃貸不動産経営管理士では、活躍するフィールドが異なります。宅建士とは宅地建物取引業法に定められた資格で、主な業務は不動産の売買や仲介。物件を探し、入居者を募集して契約するまでが主な仕事です。お客様が入居する前段階までを担当します。
対して賃貸不動産経営管理士は、お客様が入居してから退去するまでの期間、賃貸不動産を適切に管理するのが仕事です。共用部分や設備機器の維持・管理をしたり、入居者間のトラブルに対応したり。オーナー様の資産を有効に活用し、賃借人の安全を確保するための大切な役割を担っています。
また、賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業を行う事業者の営業所に設置が義務づけられた業務管理者の要件の1つにもなっています。
――業務管理者の話が出ましたが、宅建士でも一定の条件を満たせば業務管理者になることができます。あえて2つの資格を取る意味はあるのでしょうか?
おっしゃる通り、2年以上の管理業務経験を持つ宅地建物取引士は、指定講習を受講すれば業務管理者の要件を満たすことができます。ただそれは、あくまでも制度上の話。すでにお話ししたように、それぞれの資格が担う業務領域はまったく異なります。
賃貸住宅の数が増え続けている現代において、不動産管理の重要性は高まるばかり。宅建士と賃貸不動産経営管理士のダブルライセンス(複数資格)があれば、物件の売買・仲介から管理まで、不動産に関するトータルな知識をもとにお客様に提案できるのです。これは実務をするうえで大きな強みになります。
――ダブルで取得すれば、名実ともに賃貸不動産のプロフェッショナルになれるといったところでしょうか。
その通りです。業務管理者の要件に宅建士が追加されたのはある種の経過措置といえます。法案の検討段階では賃貸不動産経営管理士が5万人しかおらず、この人数で全国の賃貸管理業を担うには不安がありました。そこで一時的に宅建士を要件に加えることで、法律の施行後も管理業が滞らないようにしたと聞いております。
ただ現在は、業務管理者の要件を満たす方が10万人を超えており、経過措置を解消して本来の姿に戻すべきという話も出ています。実際、指定講習を実施している一部団体では近い将来に講習を廃止すると公表しています。今後は管理業を担う人材が必ず通る道として、賃貸不動産経営管理士の存在が大きくなっていくでしょう。
――賃貸不動産経営管理士と宅建士のダブルライセンスは、具体的にどんなメリットがありますか?
扱う業務の幅が広がるのはもちろんですが、不動産会社にお勤めの方からは「名刺に2つの資格が並ぶと、お客様からの評判が良い」といった話も聞きます。肩書きだけで、不動産のプロということがよく伝わると。お客様だけでなくオーナー様からも、売買だけではなく管理まで担える専門家として厚く信頼していただけるようです。
2つの資格を取得することで、自分のキャリアの選択肢を広げることもできます。複数取得が昇格の条件になっている企業もあるといいますし、これから不動産業界に転職を考えている人、または業界内での転職を考えている人にとっても、これらの資格は大きな武器になります。
――資格がない人と、複数資格を持っている人とでは、将来の働き方も大きく変わっていきますね。
そうですね。やはり有資格者は即戦力として採用できますし、社内でキャリアアップしていくためにも資格は必須だと思います。資格を取得することが、ひいては年収アップにもつながるといえるのではないでしょうか。
――さまざまな不動産系資格の中で、最初に取る資格として賃貸不動産経営管理士はおすすめできますか?
はい。ここ数年間の賃貸不動産経営管理士の合格率は30%前後で、宅建士と比べて約2倍です。不動産業界に勤める人が最初に勉強する資格として最適でしょう。ここ5年ほどで合格率が下がったという声もありますが、それは賃貸不動産経営管理士が民間資格だった頃と比べてのこと。国家資格となった今は「誰でも簡単に取得できますよ」とはいきませんから。
いずれにせよ、賃貸不動産経営管理士は合格率でみれば宅建士ほど難しくないかもしれませんが、取れば一目置かれる資格であることは間違いありません。こちらに合格してから宅建士を目指す人も増えてきました。
――試験には法律問題も多く出題されるのでしょうか?
もちろん法律の知識も問われますが、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(通称:賃貸住宅管理業法)自体は全5章と、非常にコンパクトな内容です。私たちに身近な事例が出題されることも多いので、不動産の知識がない初学者でも抵抗なく取り組めると思います。
例えば、賃貸住宅で生活するなかで「隣の部屋の音がうるさい」「共用部分が掃除されていない」などの悩みがあったとします。そのときには管理会社がすぐに対応したでしょうし、退去の際にも立ち会ってくれたでしょう。このように、不動産の知識はなくとも、不動産管理に関する実例をすでに体験している場合も多いのです。
――不動産業界にお勤めの方以外だと、どんな人が賃貸不動産経営管理士を目指すのでしょうか?
ここ最近は不動産のオーナー様が受験するケースが増えてきました。自身で物件を管理し、賃貸経営を行っている方です。こうした方は普段の仕事で使う知識が基礎としてあるので、資格勉強もしやすいと思います。
もちろん、管理会社に委託しているオーナー様にとっても、資格の勉強は大いに役立ちます。例えば、物件の定期清掃を半年に1回もしない業者がいたときには、賃貸不動産経営管理士の知識を持って「賃貸住宅の維持保全を行う義務を果たしてください」と要求できるからです。
――オーナー様だけでなく、不動産を譲り受けたご家族が資格を取る場合も多いそうですね。
そうですね。親から不動産を相続したことがきっかけで勉強を始める方も少なくありません。お子様が資格を持っていれば、安心して賃貸経営を事業承継できると考えるオーナー様もいらっしゃいます。ご家族の皆様にとっても、非常に有益な資格だと感じます。
このほか、金融関係の方の受験も増えています。オーナー様が賃貸経営を始める際は、銀行員が財務諸表や事業計画を見ながら融資を決めるのが一般的です。そこに賃貸経営の専門知識がプラスされると、オーナー様の立場に寄り添ってさらに踏み込んだ融資判断ができるといった声も多くいただいています。
――学生の方が取得するメリットについても教えてください。
不動産業界を目指す学生なら、持っていて損はない資格です。エントリーシートに資格が並び就職が有利に運ぶのはもちろんのこと、資格の勉強をすることで業界研究がはかどるといった話を聞きます。会社の志望動機も明確になりますし、学生時代に力を入れてきたこととして資格勉強をアピールすることもできます。
当協議会のホームページには学生合格者の声も載っていますので、そちらもぜひご覧いただければと思います。
――賃貸不動産経営管理士の勉強が内定につながったと実感している方が増えているのですね。
そうですね。どうしても不動産といえば宅建士が行う売買や仲介の業務に目が向きがちです。まだまだ管理業界のことをよく知らない学生の方も少なくない印象ですが、不動産管理はとても安定した需要がある業界なんです。オーナー様を支え、入居者の安心安全を守る仕事としてのやりがいもあります。人とのコミュニケーションで成り立つ仕事なので、将来AIに取って代わられづらい仕事ともいわれています。
仕事としては、オーナー様に対して物件の空室を埋めるための提案をするなど、クリエイティブさが求められる反面、入居者の管理や建物のメンテナンスといった裏方としての役割も多い印象です。縁の下の力持ちとして活躍したい学生にもおすすめできる業界だと思います。
――最後に、賃貸不動産経営管理士の受験を検討している方に向けて、一言お願いします。
不動産に興味ある人、宅建士に合格していて賃貸不動産経営管理士も気になる人など、さまざまな理由で興味を持っていただいているかと思います。少しでも悩んでいるなら、まずは挑戦してほしいですね。
今まさに10月の宅建士試験に向けて勉強中の方は、翌月に実施される賃貸不動産経営管理士試験も続けて受けてみてください。試験範囲が被っている部分も多くあり、宅建士の試験が終わって1カ月間勉強しただけで合格した方もいらっしゃいます。
資格の勉強は、自分の知見を広げるきっかけになります。ぜひとも複数の資格取得を頭に入れながら、勉強に取り組んでほしいと思います。試験の申し込みは(2024年度は)8月1日から。皆様のチャレンジをお待ちしています。
ライター:今泉知穂
編集:浜田有希子
写真:竹内志行
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