まず、税率には2種類あり、ひとつは合計税率(表面税率)、もうひとつは法定実効税率です。
合計税率は、法人税、住民税、事業税のそれぞれの税額の合計を課税所得で割ることで計算されます。たとえば、法人税が2,400円、住民税が300円、事業税が1,000円、課税所得が10,000円だったすると、合計税率は37%(=税額合計3,700円÷10,000円)となります。
法定実効税率は、税効果会計の繰延税金資産や繰延税金負債を計算するための税率で、合計税率÷(1+事業税率)という計算式によって求められます。たとえば、事業税率が10%だったとすると、法定実効税率は約34%(=37%÷(1+10%))となります。
※上記の計算が1級の検定試験で問われる可能性はほとんどありません。
損益計算書上の「法人税、住民税及び事業税」は実際の納税額なので、上記の例にもとづくと、3,700円となります。
また、将来減算一時差異が1,000円生じたとすると、法定実効税率34%を用いて繰延税金資産を計算し、次のように仕訳します。
(借)繰延税金資産 340 (貸)法人税等調整額 340
税引前当期純利益は10,000円だったとして、上記の例での損益計算書における法人税等の表示は次のようになります。
法人税、住民税及び事業税 3,700
法人税等調整額 △340 3,360(≒税引前当期純利益10,000円×法定実効税率)
<事業税と税効果会計>
事業税は、納付した期に損金として算入されるという特徴があります。つまり、当期の事業税額は翌期の納付によって損金に算入され、翌期の課税所得を減らします。そこで、税効果会計を適用して、当期の事業税額(未払事業税の額)を将来減算一時差異として処理します。
(事業税は節税効果がある税金といえます。その節税効果を反映した税率が合計税率を(1+10%)で割って計算される法定実効税率です。)
上記の例での将来減算一時差異1,000円はこの当期の事業税額を想定したものです。当期の事業税額1,000円は損益計算書の法人税、住民税及び事業税3,700円に含まれており、また、事業税額1,000円を将来減算一時差異として、法人税等調整額△340円(=1,000円×34%)を計上しています。
なお、上記の例では、前期に事業税は生じなかったものとしています。そして、所得に課される事業税は税引前当期純利益を計算するにあたっての費用ではなく、税引前当期純利益には影響しないため、課税所得と税引前当期純利益はともに10,000円で等しくなっています。
<上記の例の翌期(×2年度)>
翌期の税引前当期純利益も10,000円とすると、翌期の損益計算書は次のようになります。
法人税、住民税及び事業税 3,330(※1)
法人税等調整額 34(※2) 3,364(≒税引前当期純利益10,000円×法定実効税率)
※1 (10,000-1,000(×1年度の事業税の損金算入))×37%
※2 ×2年度の事業税:(10,000-1,000)×10%=900(将来減算一時差異)
(借)繰延税金資産 306 (貸)法人税等調整額 306(=900×34%)
×1年度の一時差異の解消:(借)法人税等調整額 340 (貸)繰延税金資産 340
以上のように、事業税に関する税効果会計は少々難解ですが、事業税は翌期に損金算入されるため将来減算一時差異となることを理解しておけば、1級の検定試験には十分対応できます。