はじめに

まず、今回は独学を「市販書籍中心での学習」と定義します。

さて、「独学での合格が不可能か?」と言えば、可能です。

そもそもの話になってしまいますが、独学が不可能な試験はこの世に存在しないはずです。

司法試験だって、東大理Ⅲから医師国家試験への合格だって、過去、独学者はたくさんいたことでしょう。

すると、独学が可能か否かというのは次の視点に集約されます。

「独学でも予備校を利用した場合と変わらない水準の学習が可能か?」

「独学でも同程度の時間あるいはそれより早く合格できるか?」

結論から言うと、税理士試験全科目合格については、極めて厳しいと判断しています。

なぜでしょう?

簿記論と財務諸表論

まず、予備校やスクールを利用せずとも「一般的に独学が可能な資格ですよ」と言い切るためには、何と言っても市販書籍の充実度をチェックしたいところです。

あなたも、とくにスクールを利用しなかった試験や、過去、進学の際に、「この科目については予備校や塾が不要」と判断したものはありませんか?

その際、学校の教科書も含め、きっとお手元に使いやすい問題集があったり、いつでも相談できる学校の先生がいたりしなかったでしょうか。

そして、さらに言えば得意な科目、あるいは好きな科目ではありませんでしたか?

すなわち、一人で自信を持って進められる学習内容というのは、追加でお金をたくさん払わなくても、現在のあなたの学力も含め、学習できる環境が整っているものと言えます。

そこで、税理士試験なのですが、科目ごとに分析してみます。

例えば、簿記論や財務諸表論の基礎的な内容については独学が可能だと考えています。

簿記の学習については昨今、ハードルがどんどん下がってきています。

長く簿記学習を続けてこられた方でしたら、上記科目のベーシックな論点については、市販されている過去問題集で十分対応できる可能性があると考えています。

ただ、これらの科目でも税理士試験ならではの注意をしておきたいのが、試験委員制度です。

大型の国家資格ではあることですが、試験委員の先生が変わったりすると、その先生の好みが出題に反省され、そこを押さえている人と押さえていない人では大きな得点差が生じます。

そういう意味で、細かな試験委員対策まで自身で対応する、すなわち試験委員の先生の論文まで調査することに抵抗がなければ、直前期も乗り越えることは可能です。

その他税法科目の学習

これについては、かなり厳しいと言わざるをえません。

もちろん、大学で税法を先行していたり、職場でふんだん税法に触れていたりするというような特殊な事情があれば別ですが、少しハードルが高いように感じます。

市販の書籍に目を通していただければわかりますが、非常に解説が硬派です。

よく言えば硬派ですが、悪く言えば、初学者がとっつきにくいような日本語がふんだんに使われている印象です。

何もこれは意地悪をしているわけではありません。

一般的な市販の過去問題集は、「単独で独学者が使うことを想定して編集されたものでない」というのが理由でしょう。

つまり、スクールが出版するものであれば、「基本的にはスクールに通っている受講生向けの過去問題集」であるということです。

ある程度授業が進んでくると、講師の先生が「この問題集のこのあたりまでできるようになっているから、余裕のある人は買って解いてみて」というように手取り足取りつまずかないように導いてくれます。

あるいは講義を聞いて基本的な税法の仕組みがわかっていれば他社の問題集も買って知識を積み上げていくことが可能です。

そういう意味で、「本がたくさん出ているから、かたっぱしから買って、とにかくやればオッケー」というのはひとつの事実ではありますが、あまり一般的な戦略とは言えなさそうです。

また、マイナーな税法科目ほど、書籍の冊数が少なくなります。

5科目合格のための「最後の1科目」に使われやすい科目については、もう受験生全員がしのぎを削っている状況です。

それこそ、直前期にこれをたまたま見たとか、予想問題が当たったとか、そういう差で合否が決まることも珍しくありません。

まとめ

時間さえかければ、いくら市販書籍が充実していなかろうが、書籍が学者の書いた難しい本しかなかろうが、合格ラインに到達するのは可能です。

ただ、冒頭に挙げたように、時間や費用を考慮するとどうしても、現状、税理士試験では独学を推奨しにくい環境になっています。

過去、受験生の多くが予備校に通った歴史の結果でしょうか。

まだまだ、独学者にやさしい試験とは言い難いものがあります。

今後、そのような環境が改善していくことももちろん十分に考えられます。

しかし、現時点では試験の特性上も厳しいと考えます。

念のため、大型書店へ行って、過去問題集をめくってみてください。 それを読むことに「まったく」抵抗がなければ、独学に向けた工夫の余地はもちろん残されています。