ファイナンシャルプランナー(以下、FP)は、いったいどんな仕事に従事しているのか。そう問われて、即答できない方は多いかもしれません。FP資格の取得を目指すなら、その後の仕事内容や社会的に担う役割などをイメージしておきましょう。そうすれば資格勉強へのモチベーションが高まり、やる気を維持しながら資格試験に挑めるはずです。

今回は保険業界を経てFP資格を取得し、現在は独立系FPとして活躍されている小川洋平さんにお話を伺いました。現在の業務内容やFPの担う役割についてなど、FP資格を取得した後のイメージを膨らませながらご覧ください。

Q:現在FPとして、どのような業務に従事されていますか?

起業家が仕事もプライベートもやりたいことを実現できるよう、ライフプランと経営の側面からお金に関するサポートを行っています。例えば確定拠出年金制度の導入支援や活用を中心に、会計や労務管理の会社としての体制整備、または税金や社会保険料に関して提案するなど。経営者の将来の資金づくり等の支援が主な仕事です。

Q:FPという仕事の果たす、社会的役割について教えてください

老後や年金のことなど、将来への不安を多くの方が持っています。また、単身世帯や高齢夫婦だけの世帯の増加など、家族環境や生き方も多様化してきました。十人十色のライフプランがあり、お金の問題や課題も人それぞれ異なります。当然ながら人それぞれ適したマネープランも違っているので、その人に合ったマネープランを提案することがとても重要になってきているのです。

そんな顧客のライフプランに合ったマネープランについて、幅広い知識の中からベストな方法を考えること。将来に向けたお金の不安解消はもちろん、やりたいことを実現させるために重要な役割を担っていると思っています。

この役割を果たすには、顧客の抱える問題解決や理想実現のために最適な方法を考え、提案することで実行に移すまで支援すること。また、顧客の不安を解消したり、やりたいことを実現したりするためのサポートのほか、セミナーでも公的年金制度の事実を伝えています。いたずらに不安がらず、まずは自分が将来いくら公的年金を受け取ることができるのか、自身が望む人生設計を実現しながら将来に備えるために何をしていくべきかが大切です。こうしたことを顧客と一緒に考え、働き方やキャリア形成、資産形成、年金制度の繰り下げの活用等、あらゆる方法からその人にとっての最適解を見つけるサポートを行っています。

Q:社会的役割を果たすうえでの働き方、またFPとして苦労されている点を教えてください

自分の信念・信条に基づいて行動することができるよう、組織に属さずフリーのFPとして活動しています。組織に属していると、自分の想いに反することをしなければならないことがあります。また、顧客にとって「ベスト」ではなく「ベター」な提案をしなければならない場面も少なくありません。そのため、常に自分が思う顧客にとってのベストを追求できる環境で相談業務を行っています。

クライアントにとってお金のことは身近で大切ですが、難しい課題でもあるため、何か機会がなければあまり考えたいとは思わないでしょう。では、どうすればそれを自分事として捉えてもらえるようにお話できるのか。また、FPとしてクライアントのどんな場面で力になれるのか、しっかり相手に伝えるのにどんな言葉が適切なのかという点は苦労しました。

また、ライフプランを考える際には表面的な聞き取りではなく、顧客に質問を投げかけながらその人の価値観を理解し、顧客が本当に望む姿に近い将来設計を考えることが重要です。そのために、顧客に対しどのような質問を投げかけるか、将来をよりイメージしてもらえるような言葉の投げかけなど、お金の知識だけでなく面談の際のスキルも簡単ではありません。

そして、相手がお金の問題を抱えている場合、単に数字だけを見て解決できないことも多くあります。例えば精神的な問題を解決しないと、根本的な解決には至らないケースもあるのです。ですから最近はお金の知識、税理士や社会保険労務士といった専門家との連携だけでなく、心理カウンセラーやメンタルコーチとの連携も重要であると考えています。

Q:社会的役割を果たしたと実感できたとき、どんな喜びを得られますか?

たとえ報酬が発生していなかったとしても、大きな喜びを得ることができます。顧客から受け取る感謝の言葉や、自身の成長の実感など。これらは、とても大きなものです。私は保険の営業職として働いていたことがありますが、そこで高額な手数料を受け取れる契約に至った以上の価値があると思っています。

Q:FPという仕事に対して、日々どんな点に誇りを感じていますか?

顧客の人生や、企業の経営に大きな影響を与えるという点です。人生の転機、あるいは経営の分かれ道においては、どちらもお金の不安や問題がつきものでしょう。お金のことが不安だったものの、ある程度の見通しを立てて背中を押すことができる。あるいは、現状のままでは実現できない将来設計を実現することができるようになるなど、人生や経営の重要な局面で役に立てるということは大きな誇りです。

Q:FPの仕事はワークライフバランスを取りやすいですか?

会社員として勤めていなければ、自分で時間も収入もコントロールすることができます。そのため、ワークライフバランスは取りやすい仕事ではないでしょうか。例えば会社員ならば、決められた時間は基本的には会社へ出勤しなければなりません。しかし私は顧客とのアポイントや急ぎの仕事でなければ、例えば天気の良い日中には趣味の自転車に乗り、夜や早朝に仕事することもできます。仕事に追われないために、仕事を詰め込まなくても十分な収益を得られるビジネスモデルをつくることが重要と考えているのです。

Q:FPという仕事について、待遇や社会的地位など将来的な期待について教えてください

例えば社会保険労務士も、今から50年以上前に資格が生まれたときには、まだ世の中に浸透していませんでした。しかし今や、経営者ならば誰もが知っている存在ではないでしょうか。FPもまだ認知度は低いですが、同じようにFPとして活動する人が増えれば認知度は高まるはず。保険・金融関連の資格としてだけでなく、一つの職業として認知されると考えています。

アメリカでは、子供たちが将来なりたい職業にCEPがランクインしています。これと同様に日本でも10年後、あるいは20年後にそんな存在になっていたいと考えています。自分のビジネスを成功させることで、それを実現していきたいですね。

Q:FPとして日々を充実させるため、心掛けていることや工夫があれば教えてください

自分自身がやりたいことを実現し、それぞれの人生を楽しむこと。そのために、例えば美味しいものを食べたりお酒を飲んだり、趣味を楽しんだりするためのマネープランを立てています。また、自身が実践している上手に毎月の支出を抑える方法、保険・投資商品や確定拠出年金の活用の方法を発信しながら、FPが提供できる価値を伝えているところです。さらに、同じ起業家として好きなことを仕事にしている仲間をつくり、単に顧客として集客するのではなく、交流会やイベント等で楽しみながらビジネスを成長させることを心掛けています。

Q:今後、FPとしてさらに突き詰めていきたいことは?

現在メインにしている起業家のライフプランと経営、確定拠出年金の知識とその運用の知識を深め、さらに相談実績を重ねてコンサルティング力を向上させていきたいと思っています。また、金融や経済の知識もFPのテキストに載っている部分のみでなく、その歴史を掘り下げて本質を理解したいですね。そのうえで、お金というものの本質を多くの方に伝え、FPの枠を破ってお金の本質的なことや自分の国の経済のことを、もっと身近に考えることができるよう知識を積み重ねていきたいと思います。


Q:最後に、どんな人がFPに向いていると思うか教えてください

勉強熱心なことはもちろん、人の家計や企業の経営に踏み込み、顧客がもっとも良い状態になると思う方法を考えることができる。そんな、ある意味でお節介な人が向いていると思います。

資格取得後の姿をイメージして試験合格を目指そう

FPの資格を活かし、主に起業家などのサポートを行っている小川さん。ご自身の知識・経験によって顧客の役に立てること、そして自分自身の成長に喜びを感じて活躍されています。組織に属さずフリーのFPとして活動することで、趣味などワークライフバランスも充実されていることが、お話を伺っていて感じられました。FPの資格を取得後、独立を考えられている方にとっては、一つのロールモデルとなるのではないでしょうか。

どのような資格も、取得して終わりではありません。知識を深め、資格という武器を携えた先には、これまでと違った活躍の場が広がっているはずです。その将来をイメージすれば、資格試験の合格に向けた意欲がますます高まるのではないでしょうか。自分がFPとしてどのように活躍し、成長していきたいのか。改めて考えを深めることで、その実現に向けた一歩である資格試験に挑んでください。

[プロフィール]
小川 洋平
CFP、DCマイスター。保険営業で6年半従事し、猛勉強の末に金融や年金、会計等の知識を身に着ける。その後、2016年に保険商品や金融商品の販売を目的としない、第三者の立場のファイナンシャルプランナーとして開業。iDeCoや資産運用の相談、個人事業主、小規模法人経営者様の企業年金制度の相談、住宅ローンの相談、企業内研修の講師、企業の経営再建等にも携わる。自身の独立の経験と、保険営業時代からの資産運用、会計、年金の知識と経験を活かし小規模事業者の将来の資金創りと経営を支援。現在は独立系FPとして、主に起業家のライフプランや経営のお金のサポートを実施するほか、YouTubeでお金の知識に関する情報配信、企業型確定拠出年金の講師業も行っている。
合同会社clientsbenefit  代表、FP相談ねっと・認定FP、NPO法人日本ファイナンシャルプランナーズ協会CEP認定者。
https://fpsdn.net/fp/yogawa/#prof

<取材・執筆:三河 賢文>