お子さんが産まれると、学資保険に興味を持つ方は多いでしょう。学資保険とはどういうものなのか、ここで詳しく解説します。学資保険に入った方が良いのかを考えるためのポイント等も取り上げましたので、参考にご覧ください。
目次
学資保険とはどういうもの?
学資保険とは、お子さんが将来大学や専門学校へ進学のため等に必要なお金を貯めながら、同時に契約者である両親に万が一のことがあった場合でも進学資金を確保できる、貯蓄と保障がセットになった保険商品です。お子さんが大学や専門学校に進学する際には、大きなお金が必要になります。学費や授業料で、総額数百万円~数千万円にもおよぶ金額が求められることもあるでしょう。これらの資金を自分たちで準備したいと思えば、早い段階から積立を検討することは大変重要です。
それだけ大きなお金が掛かる進学資金ですから、もし家計を支える両親に万が一のことが起きて収入の柱を失えば、進学資金の準備が難しくなるという場合もあります。そうした際、学資保険は保険料として毎月(契約内容によって異なる)お金を積み立てながら、何かあっても(なくても)契約当初に定められた学資を準備することが可能です。
以前はお子さんが18歳になる頃、その積立金が2倍近くになった時代もありました。その名残からか、「子どもが産まれたら学資保険」と考える方は少なくありません。しかし、昨今では低金利の影響により、お子さんが産まれたときに契約して18歳まで積立しても、支払う保険料の総額より数%増える程度です。商品によっては支払った保険料より受け取る学資の方が少ない場合もあり、以前と比較して魅力が大幅に低減しています。
お子さんの進学に必要なお金は?
学資保険は、お子さんの進学資金を準備する手段の一つです。そのため、そもそもお子さんの進学にいくら必要になるのかは、事前に知っておく必要があります。
<1年あたりでかかる教育費の平均値>
幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | |
公立 | 223,647円 | 321,281円 | 488,397円 | 457,380円 | 537,857円 |
私立 | 527,916円 | 1,598,691円 | 1,406,433円 | 969,911円 | 868,447円 |
(大学入学金:公立:394,225円、私立:256,069円)
※参考データ
子供の学習費調査 2018年度 学校種別の学習費
国公私立大学授業料推移 2015年度データを利用
これらの費用には学費だけでなく、課外活動の費用や習い事の費用等も含まれています。また、アパートを借りる等賃貸は含まれていないため、自宅外から通学する場合はそれら費用も見込んでおかなくてはいけません。仮に私立大学の平均的な授業料で自宅外から4年間通学し、家賃を月5万円とした場合は以下のような金額になります。
・入学金256,069円+授業料(868,447円×4年)+家賃(5万円×12ヵ月×4年)=6,129,857円
学費は学部により異なります。一般的に文系より理系の方が高額になりがちで、医歯学部や薬学部の進学になると、数千万円にもなる大きな費用が掛かることがあるでしょう。いずれにしても、数百万円~1,000万円以上の金額が必要になるのが教育費です。
また、お子さんが成長するにつれて塾や習い事、クラブ活動費等で教育費が増えていくことが一般的です。そのため家計に余裕が無くなり、貯め難くなることもあります。できるだけ早いうちから、無理のない金額で進学資金のための資産形成を検討することが重要です。
学資保険選びで押さえておきたいポイント
学資保険を選ぶ前に知っておきたい言葉に、「返戻率」というものがあります。学資保険を選ぶに当たっては、最低でも複数社の返戻率を比較しておきたいものです。返戻率とは、受け取る学資金の総額を支払う保険料の総額で割った金額のこと。以下のように計算されます。
・受け取る学資の総額÷支払う保険料の総額×100%=返戻率(%)
これは返戻率が高いほど、支払う保険料に対し受け取れる学資が大きいことを意味します。例えば、大学4年間で総額400万円を受け取ることができ、支払う保険料が390万円の学資保険の場合は以下となります。
・400万円÷390万円=1.02564…≒102.56%
なお、この返戻率が100%を下回っていると、支払った保険料に対し受け取れる学資金の方が少ないということです。そのため、返戻率ができるだけ高いものを選ぶ方が望ましく、下回っている場合もあるため注意してください。
ただし、単に返戻率のみでなく、返戻率は低くとも「保障」の機能に差がある場合もあります。それらの違いも加味し、十分に比較して選ぶと良いでしょう。
学資保険以外に貯める方法は?
以前、学資保険は進学資金を準備する王道と言える手段でした。しかし現状ではその魅力が薄れ、代わってさまざまな方法が存在します。学資保険だけでなく、いくつかの方法から自分に合ったものを選びましょう。ここでは、具体的にいくつか代表的なものをご紹介します。
投資信託を活用した方法
投資信託では毎月一定額ずつ、自動的に積立投資できる買い方が選べます。これにより、学資保険よりも効率よく進学資金を積み立てることが可能です。ただし投資であるため、学資保険のように将来の受取額が確定しているものではありません。場合によっては、損失が発生する可能性もある点に注意してください。積み立てる期間、ご自身のリスクの許容度に合った商品選び、組み合わせることが重要です。
また、この投資信託を利用した資産形成の手法として、近年注目されているつみたてNISAや変額保険等があります。つみたてNISAは、運用益に掛かる税金が最長で20年間非課税になるという制度です。商品が長期の資産形成に適していると認められたものの中から選ぶことができるため、初心者でも選びやすいでしょう。税制が有利なので、できるだけ利用を検討したい制度です。
そして変額保険は、保障と投資による資産形成がセットになったような商品です。生命保険会社がラインナップした特別勘定(投資信託と同様の保険会社の商品という)を自分で選んで運用し、その運用の成果が満期金に反映されて受け取ることができます。
定期積金による積立
定期積金は普通預金口座から自動的に毎月一定額を定期預金口座に移し、積立することができる金融商品です。預金のため原則として元本保証であり、元本の変動がなく、中途解約しても損をすることはありません。ただし近年の超低金利時代では、利息もあまり期待できないでしょう。そのため、普通預金口座から分離して、別口座でお金を準備する手段として適しています。
自分に合った商品の選び方は?
昨今の金利の情勢から学資保険の魅力が以前よりも薄れ、つみたてNISAや変額保険等、投資を利用した資産形成の手法が広まってきました。しかし、つみたてNISAや変額保険を始めた方には、よく以下のような形でハイリスクな運用を行っている方が見られます。
・何の商品を選んで良いかよくわからず、人気ランキングの上位の商品を選んだ
・営業の方から勧められた商品を選んで、そのリスク、そしてリスクとの付き合い方を理解していない
また、反対に「子どもが産まれたら学資保険」と、他の選択肢を知らないまま学資保険を選んでいる方も。中には返戻率が100%を下回る元本割れする学資保険を、知らずに契約されている方もいらっしゃいます。
「よくわからないまま」
「人気、話題だから」
進学資金に限らずに言えることですが、このような理由で資産形成の手法を選ぶと失敗してしまいがちです。いずれの方法もいずれ必要になる資金を準備し、将来設計を実現する手段の一つ。自分に合った方法は、それぞれの状況や知識、性格、ライフプランによって異なります。選択の結果、将来的に大きな差がつく場合もあるので注意しましょう。そのため、複数の手法を知り、それぞれの特徴を比較しながらどれが自分に合っているのか、どう組み合わせれば良いかを考えることが重要です。
ファイナンシャルプランナーの資格勉強でお金の知識を身につける
こうした知識はライフプランを軸に、保険や金融等の知識を総合的に学ぶことができる、ファイナンシャルプランナー資格の勉強をしてみることでよく理解できます。また、公的年金や健康保険の制度、老後の資産形成、住宅ローンのこと等、これからの人生で必要なお金やお金との付き合い方などを学ぶにも適した資格です。
ファイナンシャルプランナーの資格には国家資格の1級~3級と、FP協会が認定するAFP(国家資格2級に相当)、CFP(国家資格1級に相当)があります。まずは入門編となる3級の知識があるだけでも、豊かな人生を送るために役に立つ場面は多いでしょう。学資保険や進学資金について学ぶことをきっかけに、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
[筆者プロフィール]
小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催し、大手金融機関からの委託でも行っている。
・日本FP協会認定 CFP?
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・合同会社clientsbenefit 代表
・FP相談ねっと認定FP
・スタディグループ中越代表