日本経済新聞社が発表した「40代からの学び直し 専門家が選んだ役立つ資格は」で1位を獲得した中小企業診断士。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより、事業の見直しや再構築が必要となっている中小企業が増えています。中小企業診断士は経営の専門家として、需要が高まっているのです。

ここで中小企業診断士とはどんな資格なのか、またどんな役割を求められるのかについて見ていきましょう。

AIが代替できない、需要の高い職業! 中小企業診断士とは

中小企業診断士とは、企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う経営の専門家です。中小企業支援法に基づいた国家資格という位置づけで、有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない名称独占資格となります。

日本経済新聞社と日経HRが2016年に行った「ビジネスパーソンが新たに取得したい資格ランキング」では、中小企業診断士が1位を獲得しました。また、同じく日本経済新聞社が2022年1月に発表した「40代からの学び直し 専門家が選んだ役立つ資格は」でも、中小企業診断士が1位になっています。

さらに株式会社野村総合研究所が2015年に発表した調査結果では、中小企業診断士は人工知能やロボット等による代替可能性が低い 100 種の職業に選出されています。背景には、企業によって異なる課題等に対応する必要がある非定型的な業務であること、そして経営者との親密なコミュニケーションが求められる業務であることが挙げられるでしょう。

※参考
日本経済新聞「中小企業診断士トップに」
日本経済新聞「40代からの学び直し 専門家が選んだ役立つ資格は」
野村総合研究所「日本の労働人口の49%が~ 601人工知能やロボット等で代替可能に」

昇格につながる?経営全体がわかる管理職になるために

組織の中でリーダーシップを発揮するために、長年管理職として同じチームを率いているケースは多いかと思います。

自分が担当している業務の知識やスキルは磨かれていくものの、他の部署や業務に関する知識が不足することがあります。このため、会社全体のビジネスモデルや経営戦略に対する理解が不十分になり、経営に近い立場としての視点を欠いた判断をしてしまう可能性があります。

例えば、営業職で長年働いていた人が、経営層になった場合、自分が販売していた製品やサービスの市場動向や競合情報については詳しく知っているものの、会社の財務や人事、マーケティング戦略などについての知識が不十分な場合があります。

このような場合、経営に関する横断的な知識を身につけるのに役立つのが中小企業診断士です。中小企業診断士は、試験合格のために経営戦略、人事、マーケティング、会計、販売、生産、法律など経営に関する知識を幅広く学習します。

学習を通して経営に関する体系的な知識が身につくので、経営の診断・改善について、自身の経験や断片的な情報のみに基づいて行うよりも質の高いアウトプットができるようになります。

管理職になると、経営者からアドバイスを求められたり、提案をする機会が増えます。その際、自分の専門分野だけの話をしても、経営全体の視点を欠いた話になってしまい、経営者を納得させることができない場合があるかと思います。

中小企業診断士は学習を通して、企業の現状を経営の視点から客観的に分析し、問題点や改善点を提示できるようになります。例えば「営業メンバーを増員する」という起案を行う場合、単に営業の管理職の立場で話すのではなく、今の企業の状況で営業部門に人を増やすことが経営的に適切なのかどうかという大きな視点で話すことができます。

経営者からすれば、近い視点で話ができる管理職にはより経営に近いポジションを任せたいと考えるでしょう。さらに企業の経営課題の解決に貢献することができれば、評価を得て年収アップや昇格に繋がる可能性があります。

経営課題の相談相手としての需要

新型コロナウイルスの感染症拡大により、中小企業を取り巻く外部環境は大きく変化しています。不確実性が高く、予測が難しい外部環境の変化に対してしなやかに対応するには、自らの事業を常に見直して新事業の開発や事業の再構築を進めていくことが必要です。

しかし、中小企業が経営について相談できる先は多くありません。中小企業の身近な相談相手には、メインバンクや顧問税理士・会計士が挙げられるでしょう。しかし財務相談には対応しているものの、「企業の強みを生かした成長戦略」や「マーケティング策」などについては、なかなか相談できないという声を経営者から聞きます。

例えば中小企業等が行う新分野展開や業態転換等、事業再構築に利用できる「事業再構築補助金」があります。この補助金は中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた「認定経営革新等支援機関」とともに事業計画を策定することが必要です。そして中小企業診断士は、この認定経営革新等支援機関として登録している士業の一つとなっています。

一方で、私も補助金申請を支援したお客様から「初めて中小企業診断士という存在と、事業計画の相談ができる相手であることを知った」という反応をいただいたことがありました。まだ中小企業診断士が「何をしてくれる専門家なのか」という点で、認知度が低いことが課題であると感じます。

大都市と比較し、地域によっては中小企業診断士の数が少ないこともあるでしょう。金融機関や自治体によっては、中小企業診断士を経営改善のアドバイザーとして派遣する制度を設けているところもあります。

※参考
中小企業庁「中小企業・小規模事業者と支援機関」
日本経済新聞「首都圏自治体、飲食や観光業者支援 経済本格再開へ準備」

起業・創業を増やすサポーターとしての役割

中小企業診断士の役割として期待されている分野が起業・創業の支援です。2020年版小規模企業白書では、副業として起業を希望する、あるいは準備する人は増加傾向であるとのこと。副業として起業を希望する人は、2012年の67.7万人から2017年には78.1万人に増えているという調査結果を公表しています。副業解禁の流れも受けて、「自分で事業を起こしてみたい」というニーズは高まっているのでしょう。

しかし多くの場合、「起業したい」と思っても、周りに起業について相談できる相手は少ないでしょう。また、経営について学ぶ機会も少なく、何から始めればよいかわからないという声もよく聞きます。

起業に利用できる補助金や融資制度については、そもそも「起業に使える補助金や融資制度がある」ということを知らない方は多いのではないでしょうか。知っていても、申請のために1人で事業計画を書き上げるのは至難の業です。

そこで、事業計画策定から財務支援(融資・補助金支援)まで幅広く支援できる、中小企業診断士が起業の支援の場で求められています。地方自治体が運営する起業支援施設では、経営相談窓口の相談員として中小企業診断士が配備されることが少なくありません。「副業から始めたい」という人から「IPOも目指した事業に育てたい」という人まで、幅広い起業相談に応じています。

また、起業について身近にとらえてもらう機会を設けるため、起業検討者向けのセミナー講師としても中小企業診断士の出番があります。特に女性を対象とした起業セミナーでは、女性の中小企業診断士が講師になることが多いでしょう。しかし、女性の診断士は男性と比べて人数が少なく、各地のセミナーへ引っ張りだこになっている女性診断士もいます。

※参考:中小企業庁「令和元年度(2019年度)の小規模事業者の動向」

中小企業診断士が求められる場面は多いものの、認知度向上が課題

このように中小企業診断士が求められる場は、今後さらに増えると言えるでしょう。しかし、経営について誰に相談すれば良いか分からないという中小企業経営者からの声も、いまだに少なくありません。そのため、「経営の相談は国家資格者である中小企業診断士へ」という認知を高めることも、これから必要と思われます。

また、中小企業診断士の有資格者のうち47.3%(※)は、コンサルティング関係ではない民間企業等に勤務する「企業内診断士」です。コンサルティング会社や独立して中小企業のコンサルティングを行っている中小企業診断士は有資格者のうち約半数と、中小企業診断士の全員が中小企業支援に携わっているわけではないという実態があります。

川村 悟「企業内診断士の実態調査-現状と活躍の可能性について-」平成30年3月より

近年は副業・兼業解禁に伴い、コンサルティング関係ではない民間企業等に勤務する企業内診断士でも、中小企業支援に携わる方が増えています。多様化する中小企業の支援ニーズに対応するためには、中小企業診断士がもっと支援の現場に携わることが求められるでしょう。

国や地方自治体の中小企業支援施策と中小企業を繋ぐ役割として、あるいは中小企業の経営の伴走者として、中小企業診断士が活躍できる機会は今後さらに増えそうです。

今後も期待が高まる、中小企業診断士オンライン講座を無料で試してみませんか?

経営全体がわかる管理職として、また経営課題の相談相手や企業・創業のサポーターとして今後もニーズが高まる中小企業診断士。

しかし新たに挑戦するには、「時間がない、金銭的にも厳しい」という方も多いかと思います。スタディングなら、仕事が忙しい方も手軽に始められる、続けられる仕組みがぎゅっと凝縮されています。

スマホでいつでもどこでもすぐに、中小企業診断士講座のお試しが可能です!

今後のさらなるキャリアアップ、スキルアップを目指して中小企業診断士講座を無料体験してみませんか?