はじめに

さて、勉強を始める前のあなた。
合格まで、いったい何時間勉強すればよいのでしょう?
個人差はありますが、よく聞かれる数字は「500時間~1000時間」です。
ただし、ロースクールの学生や公務員試験で専門科目の勉強をしているのであれば、特に大がかりな準備をする必要がありません。
一方、初めて勉強する方にしてみれば「目安の時間で終わるのか?」という不安の方が大きいことでしょう。
今回は行政書士試験科目を他資格でガッツリ学んだ方は考慮に入れません。
初めて法律を勉強する方、あるいはそれに近い方をイメージして、検討します。
なお今回はあくまで、資格試験全般の試験問題に精通している「ただの資格好き」の立場からの分析です。
ですから、指導講師の方とは、また別の見解になるでしょう。
「自分が受験生ならどうするかな?」という受験生視点を強調しています。

行政書士の試験科目

行政書士の科目や配点については別ページに詳細があります。
今回は「具体的にどんなペースで学習していくのか」という視点で、より細かく見てみましょう。
と、その前に、最終的にどれぐらいの知識があると良いのでしょうか?
もちろん「多ければ多いほどいい」というのは間違いありません。
しかし、受験生としては「少なければ少ないほどいい」というのがホンネですよね。
資格試験の世界でよく言われる目安が「1科目1000肢」です。
つまり、「1科目あたり、選択肢1000本ぐらい勉強すれば、その科目についての知識が充実しているはずだ」という仮説です。
この仮説には筆者も同意します。
1000本の選択肢(≒1000個の知識)があれば、多くの資格試験で、その科目については得意科目となっていることでしょう。
では、行政書士試験は基礎法学、憲法、民法、行政法、商法・会社法、政治経済社会、情報通信・個人情報保護、文章理解だから「8000肢見なくてはいけないのか?」というと、そうではありません。
やるべきことを、絞り込んでみましょう。
別ページでは「メリハリをつける」という表現をしています。
配点からメリハリをつけるというのは、まさにその通りですが、さらに突っ込みます。

1000個の知識が要らない科目とその理由

☆文章理解。
サンプルや資料でご確認いただければわかりますが、特段の知識がいるものではありません。
センター試験をはじめとする、選択式の現代文が得意だった方の中には「軽く目を通すだけでも大丈夫」という人もいます。
(逆に、「まったく点が安定しない」という方は現代文のテクニックだけ頭に入れて、使ってみる練習は必要になります)
つまりこの文章理解、1000個分の知識なんていりません。
☆政治・経済・社会
政治・経済・社会というと、範囲がなさそうに聞こえるかもしれませんが、きちんとあります。
この科目、中学や高校で公民分野を学んだ経験があるという方は、学習時間を大幅に短縮できる可能性があります。
その場合、1000個分の知識を追加で習得する事は不要です。
☆基礎法学
平成29には法思想、平成28には裁判員制度、そして平成27には戦後の日本の法変動が出題されています。
範囲があるんだか、ないんだか…。
非常に的が絞りにくい印象です。
こういった科目は、性質上、知識を増やせば増やすほど正比例で得点が伸びつづけていくというものではありません。
また、出題数も少ないので、ひとことで言ってしまえば、コストパフォーマンスがあまりよろしくない科目です。
つまり、深入りは禁物です。
力をいれて1000個分の知識を学ぶのは「時間がもったいない」と言えます。

この科目、知識1000個分

まずは民法と行政法。
記述式試験の対策も含めて配点が高い科目です。
記述式については、とにかく知識の量がモノを言います。
完璧に書けなかったとしても、部分点がもらえる可能性もあります。
そう考えると、どうしたって、民法と行政法については「1000個分の知識」が欲しい科目です。
また、出題の安定している憲法や商法も、きちんと学んでおきたいところです。

まとめ~具体的に計算してみる~

筆者のような一般的な能力ですと、どう頑張っても、一時間で吸収できるのは10個分の知識だと考えています。
過去問題集の書籍は、見開きで「5肢とその解説」となっていることが多いので、その構成でいうと計4ページ分です。
初見の内容を理解するための講義を聞いて、さらに頭に入れる時間を考慮すると、1時間でこのペースなら順調と言ってよいでしょう。
あなたの想像している学習ペースと比べてみて、いかがですか?
今回は筆者の仮定で計算させてください。
まず、憲法・民法・行政法・商法の4科目で4000個の知識を入れるために必要な時間は?
4000個÷10個=400時間
最小限でも400時間は必要です。
ここに、文章理解や政治・経済・社会は個人差を考慮しながらプラスされます。
まとめますと「高校までの勉強が比較的得意であれば、500時間弱で行ける可能性がある」というのが今回の調査における筆者の印象です。
なお、資格試験の学習そのものが初めてである場合、時間は多めに見積もっていた方が安全です。