はじめに

資格の話をすると、必ずと言っていいほど「食えるor食えない」という話が出てきます。
確かに、私も以前は「食える資格」と「食えない資格」に分かれていると思っていました。
しかし、資格や受験の業界に長くいた結果、以前抱いていたそのイメージは今、かなり変わってきています。
そんな経験も踏まえ、今回は行政書士が「食えない」と言われる理由と本当にそうなのかを検討してみます。

行政書士が「食えない」と言われる3つの理由

行政書士が食えないという理由は次の通り
理由その1:合格率が高く、やる人が多い(簡単に始められる)
理由その2:スポットの仕事が多く、継続した契約(顧問契約等が作りづらい)
理由その3:書類作成がメインでわざわざ頼まなくてもよい
どれも、的を射ている気がします。
・理由その1を検証
行政書士試験では、毎年5000人程度の合格者を出します。司法試験の合格者が1500人程度であることを踏まえると、確かに、多く感じます。
・理由その2を検証
「スポットの仕事が多い」というのもうなずけます。
例えば、税理士業ですと、毎月の経理業務を受注し、顧問契約という形で毎月一定の金額が入ってくるようなモデルは作りやすいと言われています。
また、あなたの会社にも、顧問税理士や顧問弁護士はいるかもしれませんが、顧問行政書士はいないのではないでしょうか。
業務の性質上、一回限りの手続きが多いのも事実です。
行政書士の業務である「帰化申請手続き」なんて、何度もする人がいたら逆におかしいですよね。
理由その3を検証
「車庫証明だって自分で取ったよ」という方もいらっしゃるでしょう。
要するに行政書士に頼もうとするのは、「めんどくさいから」で、その気になれば自分で書けてしまう書類も山ほどある、と。
しかし、行政書士でもビジネスを成立させている方はたくさんいらっしゃいます。

実は思っている以上に成立しているのではないか?とも考えられる理由を2つだけ

理由1:求人が少ないのは「仕事がないから」ではないのでは?
求人を出して多くの補助者を使うような事務所は少ないため、「合格しても仕事が無いんだろうな」という印象を抱きがちです。
しかし「行政書士 事務所」で検索するとわらわら事務所が出てきます。個人で経営されていて、人を雇うということはしていないけれども、経営は成立しているのでしょう。
個人経営だと「カツカツなのか」というとそうとは言い切れません。
実際「補助者は使わないけど自分が生活していくだけなら十分豊か」という行政書士の先生を、筆者も複数知っています。
「食える」ということを「取ったら一生安泰」ととらえるのであれば「食えない」とみることもできますが、それは世の中の資格に対する認識が少し希望的すぎるかなと感じます。

理由2:世間で言われている廃業率は、はたして真に受けていいのだろうか?
また、生存率、言い換えれば廃業率の高さを気にされる方もおられます。確かに、新規登録件数と廃業件数を見れば、「食える」と言えるような資格ではなさそうにも見えます。
しかし、ちょっと待ってください。
そもそも、起業した場合の廃業率を考慮したことがあるでしょうか。あくまで、一般論ですが3年以内の廃業率は70%を超えているといわれます。
それを踏まえると、行政書士だけ取り立てて食えないぐらい廃業率が突出しているとは思えません。
また、理由1で挙げたように、個人経営の事務所が多いことも考慮すると、高齢になって退職される方(=廃業)も一定数いるはずです。

まとめ

今回の検証の結論は、「食える可能性は十分にあるけど、起業と同じぐらい事業を継続させるのは大変。食えないイメージがつきすぎているのはちょっと行政書士関係者に失礼かも…」です。
プラス、最後にもう一点だけおつきあいください。
具体的なデータがないので証明が難しいのですが、「準備が不足して廃業するケースが多いのではないか?」という点が背景だと個人的には考えています。
例えば、合格後、そのまま開業セミナー(行政書士としてのお金の稼ぎ方セミナー)に申し込むという方もいるようです。
もし、開業者がそれに「おんぶにだっこ」だとしたら、個人的には「うーん、残念」となってしまいます。
なぜなら、「行政書士として開業し、廃業しない」すなわち「食っていく」ためには「市場ニーズを汲んで営業をする。そして必要な知識を取り込みながら突っ走る」というのは一生続くことではないでしょうか?
その時点で、出だしから徹頭徹尾、人に教わって何とかしようというのは、事業主のスタンスとしていかがなものでしょう?
そういう意味で、性格的な向き・不向き等も十分に考慮し、取得を検討すれば、決してあなたの役に立たない(生活の糧にならない)資格ではありません。
自身のバイタリティやPDCAサイクルの作り方などに自信のある方でしたら、行政書士という資格が、独立のきっかけづくりになる可能性も十分にあるでしょう。