特別企画【未来を考える第2弾】公務員試験 開拓か便乗か

公務員試験を受験するに当たり自分や社会の未来について考える受験生も多いかと思いますが、
今回はスタディング公務員講座の主任講師を務めていただいている
「永田 英晃 講師」に未来についてどのように考えているのかを語っていただきました!

世の中は螺旋階段のように動く!」に続く第2段となっておりますので、
是非お読みいただき、ご自身の未来について考えてみてください!

はじめに

インターネットで世界が繋がり、スマートフォンで各自が手軽にアクセスできる現代において、一つ一つの変化のスピードは桁違いに速くなっている。

10年前では何時間もかかっていたことが、今では数秒でできてしまう。

物事は常に進んでいるため、旧態依然とした仕組みを維持しているだけでは実質的後退を意味する。

故に、絶えず未来を見据え行動する必要があり、そのような人物が求められているが、これには大きく分けて2つのアプローチ方法がある。

全く何も無いところから新しいアイデアを植える「開拓」と、
新しいアイデアに素早く目を付け、それを組み合わせて活用する「便乗」である。

未来志向という点では同じであるが、「開拓」と「便乗」は要求される能力やその市場における需要供給バランスなどが全く異なる

自分がどちらで勝負すべきかを見極めておきたいところだ。

「便乗」と「開拓」の違い

手軽なアプローチ「便乗」

まず手軽なのは「便乗」である。

これはデザイン思考などと呼ばれ、新しいアイデア同士もしくは新しいアイデアと既存の枠組みを組み合わせ、新しいものを創ることを指す。

極端に言ってしまえば「みんながスマートフォンに変えているから私もスマートフォンに変えよう」と言ったものも「便乗」に含まれるが、
この場合は、ただ単に新しい技術を使うだけなので「便乗」と言うよりも、その前段階である「導入」と言った方が良いかもしれない。

私が提唱したいのはそのようなただの導入ではなく、導入を経た上で更に新しい仕組みを作り出すアプローチである。

例えば、スマートフォンと教室授業を組み合わせれば「いつでも学べる映像授業」と言う、新しい価値を創出することができる。

何と何を組み合わせて新しい価値を創り出すかは、まるで色と色の組み合わせでデザインしているのと似ているため、これらのアプローチ方法をデザイン思考と言う。

今までにない全く新しいもの自体を創るのが「開拓」

一方で、今までにない全く新しいもの自体を創るのが「開拓」である。

これは既存の枠組みに囚われず、自分の世界観を現出することで、アイデア自体を生み出す方法である。習ったり勉強したりして外側から構築できるものではないため、できる人材がとても限られている。「便乗」のデザイン思考に対し、「開拓」はアート思考とも言われている。世の中にアーティストと呼ばれる人は少なく、一部の天才のみが担っている印象がある。しかし、数が少ないのは「アートでは食べて行けないよ」と早々に蓋をしてしまっていることが原因であり、実は需要の割に挑む人がいないため、競争率が極めて低いブルーオーシャンなのである。

「開拓」は難しい?

実は日本はかつて、この「開拓」の精神に溢れた人が大勢いた。

当時は現在とは比較にならないほど上の世代や職場環境からの強制圧力が強く、その反発として独自の世界観を押し出した。

彼らは「もっと自由を」「もっと多様性を」と唱え、その結果、確かに制度面では強制力が鈍化し、自由闊達なる雰囲気を是とするようになった。

しかし、これまでの開拓精神は体制への反発が原動力だったため、多様性が認められると途端に開拓力も鈍化してしまった。それどころか、周囲からの同調圧力によって、独自の世界観が潰される空気ができてしまったのである。

いつの世も新しい取り組みは若者から提唱されてきた。古い体質に縛られた若者が、その呪縛を解放するために革新をしてきた。だが、今は縛られるものがないため、自ら同調圧力と言う縛りに従っている多くの大学生に「やりたいことを大切にしよう」と言うと、「やりたいことはありません」と言う回答が返ってくる。では、仕事に就かず浮浪するかと思えば、そうではない。周りと同じように就職をする。今の若者の原動力は「これがやりたい!」でも「僕は嫌だ!」でもなく、同調圧力である

さて、同調圧力の中で新しいことをやるためには、その空気を徐々に納得させていく必要がある。画期的なアイデアよりも「賛成した方がいいよね」と言う空気を作ることが優先される。

よって、エビデンス集めが中心となり、新しい取り組みは既に効果のあるものを組み合わせる「便乗」が中心となった

かつて日本は世界をリードして斬新なものを生み出す開拓大国であったが、いつの間にか、他国のものを程良く取り入れる便乗大国に陥ってしまった。

よって、現在、「新しいことを」と言うと、便乗方向に傾きやすい。

結果として、新しいのに「どこかで見たような風景」が溢れることになる。これを打ち破るのが「開拓」であるが、残念ながら現在の同調圧力の下で開拓者は絶滅危惧種となっている。

決して需要が無い訳では無い。寧ろ、時代は「開拓」を求めている。しかし、担う人がいないのだ。

「開拓」にチャレンジ!

新しいことをするのは難しいようだが、実は「便乗」はとても簡単である。

例えば、「春・夏・秋・冬」と、「うどん・そば」を組み合わせ、「春うどん・夏うどん・秋うどん・冬うどん・春そば・夏そば・秋そば・冬そば」を生み出す。

順に掛け合わせているだけなので、誰でもできる。

誰でもできることだが、結果だけ見れば「新しい試み」である。レッドオーシャンであると実感していただけたであろうか。それに対し、食べるものを自分でフレキシブルに選択でき、好きな時間に好きな場所に配達するシステム自体を創るのが「開拓」である。

では、どうすれば「開拓」の精神を養うことができるのか。この能力は温床の中で優しく教育しても全く培われない。圧力に対する反発の精神が独自の世界観を培養するため、 反発精神を養うことが大切である。だが、現在の環境はとても改善され、かつてと比べると快適であるため、なかなか反発心を抱くのは難しい。無理に体制への反発心を高めると、開拓者ではなく危険人物の領域に足を踏み入れてしまいかねない。ここでの提案は体制への反発ではなく、「同調圧力」への反発である。「同調圧力に屈せず、自分がニューノーマルを創ってやるんだ」と言う気持ちを意図的に持つことで、現状の欠陥に気付き、そこに依拠しない自分だけの世界観を築くことができる。最初は周囲になかなか理解をしてもらえないかもしれないが、一度、ニューノーマルを創出できれば、一気に開拓のレジェンドに仲間入りである。ぜひ一攫千金を夢見て「開拓」に果敢にチャレンジしてもらいたい。