【公務員試験】受かる自己PRのしかた

「自分と言う商品の説明する」

自己PRについてこのように教わった者も多い。自己紹介はありのままの自分を説明すれば良いが、自己PRは長所の説明である、と教わったかもしれない。だが、私に言わせれば、自己紹介も自己PRも方向性は同じである。

例えば、自己紹介でありのままの自分を伝えようと、「私は好き嫌いが激しく、好きな人とは笑顔で話しますが、嫌いな人は家に帰ってその人の画像の顔を全て黒で塗りつぶしています。」「私は犯罪者に憧れを持っています。世界を股にかける逃亡犯になってみたいです。」と言ったとする(これらは過去に実際に面接練習であった回答である)。どう考えても周りはドン引きだ。ありのままの自分を伝えても、その結果、周りから距離を置かれてしまったら、それは自己紹介として失敗である。

また、自己PRも単に長所を言えば良いと言うものではない。私は中学生の頃に面接で大失敗をした経験がある。高校受験の時に自己PRで歌が得意なことを面接官に伝えようとした。当時、カラオケ大会で入賞していたので、この長所を存分にPRしようと「無法松の一生」を大音声で歌ったのだ。自分ではかなり上手く歌えたつもりであったが結果は不合格。ここは滑り止めに受けた学校であり、学力試験はほぼ満点であったので、この面接が原因であることは明らかであった。

いくら得意なことがあったとしても、相手が求めていなければ「空気が読めない」と言うマイナス評価をされて終わりである。

自分起点でなく、相手の求める人物像をイメージ

上記の失敗例はどちらも「自分」を起点に回答していることが原因である。人間は誰もが(当たり前であるが)「自分」の視点で生きている。よって、意識しなければ客観視することができず、本能のままに行動してしまう。

自分の悪いところも全て受け入れて欲しいと思うのが人間の願望ではあるが、残念ながら悪いところを受け入れてくれる人は皆無である。家族や夫婦の場合は腐れ縁があり、受け入れなければギクシャクして生活に支障が生じるため、義理で目を瞑っているフリをしている。故に、調子に乗ると、思わぬちゃぶ台返しを喰らう。まして他人には、絶対に悪いところを見せてはならない。

自己紹介も自己PRも目的は、相手からの評価・好感度を高めるところにある。よって、「相手がどんな人を求めているのか」が何よりも重要である。もっと言えば、そこに当てはまれば採用されるし、当てはまらなければ不採用と言う、面接の根本的なポイントなのだが、何故か受験生は「自己分析」はやっても「面接官の分析」はしない。自己満足と言う点では自己分析はとても有効だが、合格と言う観点から考えると、「面接官分析」の方が遥かに大切である。例えば恋愛で、恋を実らせるために自己分析に明け暮れても何も始まらない。大切なのは相手である。相手のことを第一に考えてみよう。

面接官「自己PRのほとんどは嘘だから」

では、相手の求める人物像を装って、良いことだけを並べれば良いかと言うと、それも間違いだ。何故ならば、ほとんどの受験生は真実を隠蔽し嘘をついて自分を繕うからである。例えば、「私はコミュニケーション能力があります」と言っていた人に本当にコミュニケーション能力が備わっている可能性は極めて低い。本当にコミュニケーション能力がある人は「私はコミュニケーション能力があります」などと言う野暮な発言はしない。「私は頭がいいです」と自分で言っている人は、それを文言通りに評価してもらえると思っている時点で恐らく相当頭が悪いだろう。

これは中途半端に「抽象化癖」がついている人がやってしまう失敗である。学生の頃、国語の授業で「抽象化」と言う作業をやらされた。複雑怪奇の雑多現象をわかりやすく一言でまとめる技術は重宝される。だが、何でもかんでも抽象的にまとめる必要はない。まとめ発言をしている本人は「私は国語能力があるから抽象化ができるんです」と言わんばかりのドヤ顔であるが、周囲の人は「そんなことは誰もがわかってることだから、敢えて言わないのだが・・・この人の国語運用能力はかなり低いなぁ」と、見下している。 受験生は、「言えばそれが評価される。だから、たくさんPRを言わないと」と抽象的なPRを連発してしまうが、寧ろ逆に「抽象的にしか言えない=嘘をついている」と判断されることが多い。何でもかんでも言えば良い、と言う短絡的な思考は改め、どうすれば面接官が納得して高評価をするかを戦略的に練ってみたい。

面接官に発見させる種をまく

言われただけで信用するほど、人はお人好しではない。こちらから言うよりも何か裏付ける要素があり、面接官側から「ああ、この人はコミュニケーション能力があるなあ」「この人は行動力があるなあ」と自発的に思わせることが最も効果的だ。

しかし、このスキルは本当に能力がないとできないため(だからこそ信憑性がある)、面接講座などでは実践しやすいように少しお茶を濁し、「コミュニケーション能力があることを実証できるエピソードを語ろう」と提案するが、もしもそのエピソードの伝え方が辿々しければ逆効果となる。

実は話の内容よりも、説明の仕方やちょっとした機転を利かせられるかの方が決め手であり、どれだけ重厚な自己PRの話を準備しておいても、上手く話せなければ評価されない。準備も必要だが、本番での回答の仕方が最も重要なのである。コンディションを万全に整えて臨みたい。

では、具体的にどのような返し方が自己PRにつながるのか。それは、「どんな状況でも慌てることなく、落ち着いて余裕を持って対応できる態度」である。逆に早口になったり、顔が引き攣ってしまったら、何を言ってもPRにはならない。どんな状況でも爽やかに楽しむ心を忘れないこと。その時に武器となるのがユーモアだ。特に危機に陥った時にユーモアで返せる能力は、場の雰囲気を重視する現代においては極めて重宝される。例えば、メインの面接官がおじさんの場合、適宜親父ギャグを盛り込むと一気に距離が縮まる場合がある。

「頑張って先輩のレベルに侵入します。しんにゅう社員なので」 若い面接官は目を丸くし、一瞬時空が止まりそうになるが、おじさんの面接官がププッと笑い出す。これに忖度して他の面接官も愛想笑いをして場が和むのである。当然、メイン面接官は他の若手面接官が忖度して笑っているとは気付かず、「この受験生は場を和ませる力がある」と高評価を付ける。まさにこの上ない自己PRだ。但し、親父ギャグはおじさん以外には苦虫を潰した表情しか招かないため、使い過ぎると脂っぽい印象を持たれてしまう。あくまでおじさん面接官をターゲットにして、適切に盛り込んで欲しい。