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はじめに
行政書士の受験者が減少の傾向にあります。
このページをご覧の方の中には、ご存じの方もいるかもしれませんね。 事実、直近の結果は下記のとおり。
「受験者が減っている」と聞いてどんなイメージを持たれますか?
一般的には、「人気がないの?」「価値がないの?」というネガティブなイメージを持たれることが多いようです。
受験を検討されている方にとっては重要な問題かもしれません。
そこで、昨今の受験者の減少が、行政書士の価値低下の反映なのかを調査してみることにしました。
そもそも資格試験における受験者数は、資格の価値を反映しているのか?
まず、「受験者数が増えている=将来性がある」と言い切ってしまっていいのか、他資格とも比較しながら検討しましょう。
例えば、ビジネス会計検定3級という試験があります。
この資格は受験者がこのように変動しています。
2007年7月:2,541人→2018年3月:3,438人。
実に、35%増です。
もちろんこの資格の内容も存じています。活用方法も幅広く、非常に興味深いものです。
では、受験者数の減少している行政書士が「ビジネス会計検定と比べて価値がないか?」と言われれば、「そんなことないんじゃないかなあ…」と思われる方も多い事でしょう。
つまり、受験者数の増減が、そのまま将来性や現在の価値を反映するとの判断は早計だということです。
なお、伸びている資格については、ブーム以外にも実施団体の努力も見過ごせません。
PR活動に力を入れる資格は、受験者数の減少が止まったり、伸びたりすることがあります。
では、行政書士は受験者のための努力をしていないのでしょうか?
そうではありません。
確かに、各界の有名人をホームページに登場させたり、キャッチ―なイラストを多用したマーケティング活動をおこなったりしているわけではありません。
では、行政書士が受験生および合格者のためにどんな改善したのでしょうか?
ずばり「試験内容そのものの改善」です。
少しさかのぼった話になります。
2006年に、「行政法と民法での記述式の導入」と、加えて「大胆な科目の変更」が行われました。
それ以前は、理科や国語等、教養試験の要素を含み、「法律の試験なの?」と言いたくなるようなものでしたが、その時から、法律を中心に学べるように舵が切られました。
「法律をまなびたい」、「法律を仕事にしたい」と考える学習者にとって、これ以上のサービスは無いと言えるかもしれません。
実は受験生は減っていない?
基本的に、資格について目にする情報は、直近10年分、あるいは5年分という受験生が多い事でしょう。
そうすると、受験者数や合格率の傾向を見誤ってしまうことがあります。
行政書士試験について、さらにさかのぼってみましょう。
この頃は40,000人前後の申し込みに対し、35,000人前後が受験するという傾向が見られます。
すなわち、行政書士の申込者数・受験者数としてはこちらの方が正常値で、10万人近い人数がむしろバブルのような状況だったとは考えられないでしょうか?
ご記憶のある方もいらっしゃるでしょうが、2000年ごろ、行政書士を主人公にしたテレビドラマが放送されました。
また、2004年には法科大学院制度が創設されました。
「法科大学院卒業者は半数近くが司法試験に合格できる」と喧伝され、空前の法律学習ブームが起こった時期です。
司法試験を受験する学生が、「行政書士もついでに受験する」という状況も見られました。
すると、行政書士試験に関して言えば、昨今の受験者数の減少は「価値の低下」という危機的なものというよりは、「正常な数値に戻りつつある」だけと見ることもできます。
5年や10年という短いスパンで見れば、資格にも流行り廃りがあるものです。
あくまで「流行」にすぎません。
まとめ
行政書士試験は、直近だけを見れば、確かに受験者数は減少していると言えます。
しかし、それは現在の価値や将来の価値を正確に反映したものとは言い難いものです。
あくまで流行のひとつだと私自身は考えています。
直近10年の人数の減少は、「一時的なブームの収束」と言い換えることもできます。
服装やメイクのような他人の空気感に流されて、せっかくの学習機会や意欲を捨ててしまうのは、とてももったいないことだと私は考えます。あなたはどう思われますか?
(参考サイト)
一般財団法人 行政書士試験研究センター
ビジネス会計検定
司法書士の会員数問題と今そこにある危機 – 九大コレクション – 九州大学
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1833529/shichinohe_1833529.pdf