資格取得に向けて勉強したいけれど、なかなか時間を確保できない。あるいは時間帯に勉強が捗るのかが分からないなど、勉強時間について悩まれている方は多いでしょう。資格取得に向けた勉強では、一定以上の時間を確保する必要があります。しかし、仕事などの合間を見つけて勉強しなくてはならない場合、どうしてもまとまった時間が取りづらいことが多いはず。そうなれば、日常生活の中でいかにうまく時間をやりくりし、勉強を進めるかが重要になります。

では果たして、資格の勉強が捗るのはどのような時間・場所なのでしょうか。ここでは、効率よく勉強を進めるうえでおすすめの時間帯と場所について解説します。今まさに資格の勉強を始めようとしている、もしくは勉強を始めたばかりの人は、ぜひ参考にしてください。

集中力が続く時間の長さはどのくらい?

効果的に勉強を進めるには、人間の一般的な集中力の傾向を知ることが大切です。神奈川工科大学は人が集中しているときは動作が少なくなることに着目し、スマートフォンの加速度センサーを活用して集中力を計測する実験を行いました。その結果、5分間までは集中度合いが比較的高い割合で持続するものの、6分後にはほぼ全く集中できていないことが分かったとのこと。さらに持続的に計測していく中で、15分以上経過すると集中した状態を維持できるようになったという結果を得ています。この検証結果から、次のことが言えるでしょう。

  • 人の集中力が持続する時間はきわめて短く、長くても5分まで
  • 10分程度など中途半端な時間ではかえって集中しづらい
  • 時間が取れるときは15分以上確保したほうが集中できる

勉強を始めた直後は集中できるものの、しばらくすると注意散漫になってしまう。しかし、しばらく勉強を続けているうちに集中力が高まったという経験は、多くの人が持っているはずです。そこで、小間切れの時間を活用して勉強するなら5分以内、しっかりと勉強時間を確保するなら15分以上という目安をもとに、集中しやすいおすすめの時間帯と場所、勉強方法について考えていきましょう。

資格の勉強が捗る!集中しやすいおすすめ時間帯・場所

資格の勉強が捗る、具体的な時間帯や場所についてご紹介します。ここでは日常生活でよくあるシーン別に、集中しやすい5つの時間と場所を挙げました。生活スタイルに応じてすぐ取り入れられるものもあるはずですので、ぜひ実践に役立ててください。

1)早朝・起床後

早朝の時間帯は集中しやすく、勉強が捗るといわれています。人の脳内では睡眠中に記憶が整理され、目覚めたときにはリフレッシュされた状態になっているからです。ふだんよりも20〜30分ほど早く起床し、資格の勉強時間に充てることで集中しやすい状態を確保できるでしょう。出勤や通学までの時間は限られていますので、制限された時間の中でやるべきことを終わらせようとする意識が働き、勉強が捗りやすくなります。

早朝の時間帯は、アウトプットを重視した勉強方法がおすすめです。無理に新しいことを覚えようとしたり、参考書を先へ読み進めたりする必要はありません。前日に覚えたことの確認をするつもりで問題演習に専念してください。一例として、次のような勉強が捗るでしょう。

<早朝の時間帯に捗る勉強の例>

  • 前日に覚えた用語を書き出して確認する
  • 前日に勉強した単元の練習問題を解く
  • 過去問を解いて理解度を確かめる

注意しておきたいポイントが、20分なら20分と時間を決めて取り組むことです。短時間で集中的に勉強することによって、効率よく記憶を定着させることができます。分からない問題が出てきたらいったん後回しにして、自分が決めた時間内にできるだけ多くのアウトプットを実践することが大切です。

2)通勤・通学中

通勤や通学で移動している間も、積み上げていくとかなりの時間になります。そのため、移動中を勉強に充てるのは有効な時間の使い方です。電車で移動する人の場合は参考書を精読したり、動画教材で学んだりする方法がおすすめ。車を運転する場合はオーディオブックやリスニング教材など、耳で聞いて学習できる教材を選ぶといいでしょう。

通勤・通学にかかる時間は毎日ほぼ一定のため、「次の乗り換えまで」「目的地に到着するまで」といった区切りをつけやすいのが特徴。所要時間にもよりますが、5分程度で終えられるピンポイントの暗記に充てるか、15〜20分程度で読み終わる分量の精読に充てるのがおすすめです。

<通勤・通学中に捗る勉強の例>

  • 単語カードやスマートフォンアプリを活用した暗記
  • 一問一答問題や正誤問題の演習
  • 「参考集を1セクション読み進める」など知識のインプット

効率よく勉強するためのポイントとして、あらかじめ進めるペースを決めておくことが挙げられます。通勤・通学時間内で無理なく消化できる量を確認しておき、毎日同じペースで着実に進めていくことが重要です。参考書の総ページ数と1日に進められるページ数を確認しておくことで、全体としてどれだけの勉強期間を要するか把握しやすくなる効果もあります。

3)入浴中

入浴中は心身ともにリラックスしているため、雑念が湧きにくく記憶力や集中力が高まる傾向があります。また、1人の空間を確保できるので、静かな環境で勉強するのに実は適しているのです。苦手意識のある分野の暗記や専門用語の多い単元の精読は、入浴しながらじっくりと進めましょう。参考書を透明なビニール袋に入れて濡れないようにしたり、紙に書き出したメモをクリアファイルに入れて壁に貼ったりすれば、入浴の時間を勉強に充てることはそれほど難しくありません。

ただしお風呂では、持ち込んだ参考書以外を参照することやペンで書き込むことが難しいでしょう。そのため、目の前の情報に集中せざるを得ない状況を作りやすいはずです。体を洗っているときには両手がふさがってしまいますので、暗記事項を替え歌にして歌ったり、覚えたことを反復して確認したりする時間に充てると有効活用することができます。

<入浴中に捗る勉強の例>

  • 似ていて区別がつきにくい用語を壁に貼って暗記
  • 難しいと感じて飛ばした単元・分野の参考書を読む
  • 暗記事項をまとめた替え歌を作って繰り返し歌う

あまり長い時間をかけてしまうと、集中力が下がりやすくなるため注意が必要です。ふだんから長風呂になりやすい人は、タイマーをセットしておくなどして勉強に充てる時間を決めておきましょう。

4)トイレ

トイレにかかる時間はそれほど長くないので、わざわざ問題集などを持ち込んで勉強するのは面倒に感じる人も多いはずです。しかしトイレには特有の条件があり、それは「毎日必ず、しかも繰り返し出入りする」という点。狭い空間で壁面が目の前にあることを利用して、重要な事項や覚えるべき事柄を貼っておくと、あまり負担を感じることなく記憶に残すことができます。

トイレの壁面に貼るものとして、長い文章や複雑な数式などは向いていません。熟読しなくても自然と視界に入ってくるものを選ぶことが大切です。図表にまとめられた情報やイラストを用いた解説、用語の一覧など、ふだんから繰り返し目に留まることで視覚的に記憶しやすいものが適しています。

<トイレで捗る勉強の例>

  • 参考書の要点のまとめページをコピーして壁に貼る
  • イラスト付きの解説や図表を壁に貼る
  • 覚えるべき用語を書き出した紙を壁に貼る

日頃から繰り返し目にしているうちに、いつの間にか記憶に定着していることを実感する場合があります。このとき注意しておきたいのが、壁面に貼られた情報を随時更新していくこと。すでに覚えたものは取り外し、次に覚えるべき内容へと定期的に貼り替えましょう。付箋を活用すると情報の更新がしやすく、効率よく暗記を進められるはずです。

5)就寝前

就寝前は、その日にインプットした知識を総復習する時間に充てましょう。移動中や入浴中、トイレなどで小間切れに覚えた知識を、就寝前にまとめて確認しておきます。すでに頭に入っているものとまだ覚え切れていないものを選別するつもりで、インプットの完了具合を確認していきましょう。覚えられていなかった知識は、できるだけその場で頭に入れてしまうように心がけてください。

就寝前にまとめてインプットの確認をすることで、以前目にしたことのある情報に繰り返し触れる効果も期待できます。反復して目にしたことや見聞きした情報ほど記憶に残りやすくなるため、「覚えたはずだったのに忘れてしまった」といった事態を防ぐことが可能です。日中に覚えたことがしっかりと記憶に残っていれば達成感を得られますので、勉強のモチベーションを維持する上でも役立つでしょう。

<就寝前に捗る勉強の例>

  • 通勤中に読んだ参考書を見直す
  • 風呂場やトイレで覚えたことを復習する
  • 日中に視聴した動画や音声教材を1.5倍速で再生する

注意点として、ベッドに入ってからもスマートフォンを見ながら勉強を続けるのはあまりおすすめしません。集中しにくく効率的でないうえ、良質な睡眠を妨げる原因にもなりやすいからです。覚えたことの確認は、翌朝に集中してアウトプットしたほうがはるかに捗ります。メリハリをつけて勉強を進めることを意識しましょう。

まとめ

資格の勉強に取り組むうえハードルとなりやすいのが、いかにまとまった時間を確保して勉強に充てるかという点です。仕事や学校生活で忙しい中、勉強時間を確保するのは現実的に難しいと感じる人も多いことでしょう。

しかし、ここでご紹介した時間の使い方であれば、日常生活の中で時間を見つけて勉強を進められるはず。起床後や移動中をはじめ、入浴中やトイレの時間、就寝前の時間を合わせれば、毎日1〜2時間の勉強時間を確保できるでしょう。工夫しだいで効率的に勉強を進めることは十分可能といえます。

一方、時間帯ごとにどのような勉強方法を実践するかによって、勉強の捗り具合が大きく左右されるのも事実です。ここで取り上げた例を参考に、時間帯に応じてやるべきことや使用する教材を決めておきましょう。効果的な勉強方法を生活の一部に組み込み、習慣化していくことが大切です。

▶参考:センサデータからの人間の行動推定

[著者プロフィール]
Ash.
キャリア・ビジネス・教育関連の記事を年間200本以上執筆するフリーランスWebライター。3児の父。