コロナ禍に入ってから、社会情勢はまさに一変しました。売上が大きくダウンする企業もあれば、逆にコロナ禍の恩恵を受けて成長を加速させる企業もあります。まさに一寸先が見えない、混沌とした時代といえるでしょう。そんな中で自身のキャリアを考えたとき、「どんな資格を取れば今後の仕事に活かせるのだろう?」と迷っている方は多いはず。そこで、アフターコロナ・ウィズコロナ時代に需要が高まる職種と、これから必要性が増す資格についてご紹介します。

コロナ禍による機械化の加速で、IT技術者の雇用がさらに拡大

コロナ禍でも大きなダメージを受けず、むしろそれを追い風として今後も成長が見込まれる業界といえば、やはり代表的なのは「IT業界」でしょう。IT専門の調査会社であるIDC Japan株式会社が発表した「国内ITサービス市場予測」によると、2020年に国内ITサービス市場はコロナ禍の影響で前年比2.8%減(5兆6,834円)になったものの、2021年以降はプラス成長に回帰し、2025年には6兆4,048億円になる見通しとのことです。

また、世界経済フォーラム(World economic forum)が発表した「The Future of Jobs Report 2020」によれば、機械化の加速によって今後8,700万人の雇用が削減されることが予想されるとのこと。しかし一方、新たにIT技術を必要とする職種で9,500万人の雇用が生まれるとしています。さらに同レポートは今後需要の拡大が予想される職種として、次のような職種を上げています。

1データアナリスト、データサイエンティスト
2AI・機械学習のスペシャリスト
3ビッグデータのスペシャリスト
4デジタルマーケティング・戦略のスペシャリスト
5プロセス自動化技術のスペシャリスト
6ビジネス開発の専門家
7DXのスペシャリスト
8情報セキュリティアナリスト
9ソフトウェアおよびアプリケーションの開発者
10IoTのスペシャリスト
11プロジェクトマネージャー
12ビジネスサービスと行政のマネージャー
13データベースとネットワークの専門家
14ロボットエンジニア
15戦略アドバイザー
16経営・組織に関するアナリスト
17フィンテックエンジニア
18機械および機械修理技術者
19組織開発スペシャリスト
20危機管理スペシャリスト

ご覧の通り、ほとんどの職種がIT関連であることがわかるでしょう。逆に衰退することが予測される職種としては、事務系の職種や会計士、生産現場の作業労働者などが挙げられます。実際、東京都内では1名の事務職募集に対して、50名以上の応募者が集まることも珍しくありません。事務職のポストは、いまや非常に狭き門となっています。

コロナ禍の影響によって機械化・自動化は加速する傾向にあり、IT技術者の需要は留まるところを知りません。このような世の中の流れを踏まえて、5年・10年先を見据えた職種選択が必要になってきます。

※出典
IDC Japan株式会社「国内ITサービス市場予測を発表」
世界経済フォーラム(World economic forum)「The Future of Jobs Report 2020」レポート

なお、IT技術者以外にも、今後必要性が増すと予想される職種があります。コロナ禍で在宅勤務が増加したこともあり、いま大きく伸びているのがインターネット関連の職種です。例えばインターネット広告のマーケッターやクリエイター、オンラインイベントのプロディーサーといった職種が新たに注目されつつあります。

アフターコロナ・ウィズコロナ時代、必要性が増す資格

アフターコロナ・ウィズコロナ時代には、どのような資格で需要が高まるのでしょうか。ここでは未経験から受験でき、個人レベルの勉強で取得可能な資格に限定してご紹介します。

IT関連の資格

IT関連の企業に就職・転職を考えていなら、できれば応募する前に「基本情報技術者」の国家資格を取得しておくと良いでしょう。「応用情報技術者」も合わせて取得できれば理想的ですが、こちらは基本的に業務経験のある人を対象としています。そのため未経験だと、勉強しただけでは理解しづらい内容があるかもしれません。未経験者は基本情報技術者の資格があるだけでも、企業に対して十分アピールできます。IT系ベンチャー企業には「資格は特に必要なし。本人の能力次第」とするケースもありますが、持っていて損はない資格と言えるでしょう。もし「基本情報技術者試験は難くい」というなら、せめて基本的なIT用語の理解を証明する「ITパスポート」だけでも取得しておくことをおすすめします。

・ITパスポート

ITに関する基礎的知識を証明する国家資格です。ストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ系(IT技術)の3分野があり、それぞれについてごく基礎的な知識を問われます。IT系の国家資格は難易度に応じてスキルレベル1(易しい)からスキルレベル4(難しい)までありますが、ITパスポートのスキルレベルは1です。

・基本情報技術者

IT技術者としての適性・能力を証明する国家資格で、ITパスポートのスキルレベルは2です。エンジニアとしてのキャリアを始めるのに、まず取得しておきたい基本的な資格となります。

・応用情報技術者

基本情報技術者試験の上位に位置する高度IT人材を目指す人のための資格で、スキルレベルは3です。記述式の問題があり、設問の範囲も基本情報技術者試験に比べて広範囲となっています。

ビジネス関連の資格

アフターコロナ・ウィズコロナ時代に取っておきたいビジネス関連の資格として、注目されているのが「簿記」です。簿記は企業活動を適切かつ正確に情報公開するとともに、経営管理能力を身につけるための資格。そのため企業・職種にかかわらず、誰にとっても必要不可欠なビジネススキルといえるでしょう。また、多くの企業がグローバル化に向かって進んでいる昨今、「TOEICテスト」を受けて自己ベストを更新するのも良いでしょう。なお、就職・転職のおける武器とまではいきませんが、社会人の常識という意味合いで取得しておきたいのが「マクロソフト・オフィス・スペシャリスト」です。

・簿記

日商簿記検定では企業の経営活動を記録・計算・整理し、企業の経営成績と財政状態を明らかにする技能の習得度を測ります。簿記3級を取得することで、就職・転職に有利に働くケースもあり、企業や経済についての知識も深めることが可能です。経理関係の職種は現在人材が充足していない状況にあり、簿記2級を取得して、未経験30代で会計事務所や税理士事務所に就職する人もいます。

・TOEICテスト

日常生活やグローバルビジネスにおける活きた英語力を測定する、世界共通のテストです。TOEICを社員の英語力を評価する際の指標に使っている企業は多く、一般企業でもTOEIC500~600点以上を入社の条件にしているところも少なくありません。職種によっては700点~800点台が求められる場合もあります。

・マクロソフト・オフィス・スペシャリスト(MOS)

パソコンスキルを証明する資格です。今や企業のほとんどが仕事でパソコンを使用します。MOSの資格を持っていることで、「この人は基本的なパソコン操作ができる」と認めてもらうことが可能です。

「MOSの資格を取って事務職に」と考える人もいますが、特に都市部では事務職の人気がとても高く、MOSの資格だけでは就職・転職しづらいのが現実でしょう。そのため、あくまで就職・転職に役立つ資格のひとつとして考えてください。

専門性の高い資格

専門性が高く、未経験かつ独学で取得できる資格に「行政書士」や「宅建士」があります。どちらも、アフターコロナ・ウィズコロナ時代に淘汰される可能性の少ない職種です。また、「保育士」もコロナ禍に関係なく子育てしながら働く女性が増えているなど、今後も需要が見込めるでしょう。

・行政書士

行政や権利義務関係の書類作成を行うプロが行政書士です。資格取得後に独立する人も多く、努力すれば一定のクライアントを確保することができます。「行政書士の仕事は将来AIに置き換わる」と言われることもありますが、コンサルティング的な仕事は必ず残るでしょう。キャリアを積みながら、そうした業務に方向をシフトしけば問題ないはずです。

・宅建士(宅地建物取引士)

不動産売買や賃貸の仲介の仕事に欠かせない資格です。宅建士のニーズはコロナ禍にかかわらず高く、不動産業界に就職・転職したり独立・開業したりする人もいます。

・保育士

保育士は保育の専門学校を出ているか、実務経験がないと受けられないと思っている人がいるかもしれません。しかし、実際は保育と関係ない大学・短大・専門学校の学部を卒業した人でも、通信教育などでコツコツと勉強すれば資格を取得できます。

まとめ

アフターコロナ・ウィズコロナ時代に、どんな資格の必要性が増すのかご紹介しました。最近は自宅で過ごす時間が増えたこともあり、資格取得へ積極的に取り組む人が増えています。ご自身の仕事のスキルアップを図る、あるいはキャリアチェンジを目指すうえで、資格取得は有効な手段といえるでしょう。

ただし、資格はあくまで一定レベルの知識・技術を有するという証明書のようなもの。新たな仕事へと導いてくれるパスポートではありません。資格取得後、それを仕事に活かせるかどうかは自分次第です。その点を十分に考えたうえで、本当に自分にとって役立つ資格を選んで挑戦してください。