学生時代のテストや受験なら、周りの人たちも一斉に勉強を始めます。そのため、その雰囲気が「勉強しなければ!」という動機付けに繋がったのではないでしょうか。自然と自身も勉強モードになり、集中して試験本番を迎えられたはずです。

しかし社会人とれば仕事もあり、日々の忙しさに埋れて勉強時間を上手く確保できないことも少なくありません。少しずつ資格試験への意識が薄れてしまい、受験の目的が曖昧になって勉強に熱が入らなくなる。これでは自分に自信が持てず、試験本番では周囲の人たちができる人に見えてしまい、余計なプレッシャーでボロボロになってしまうかもしれません。せっかく勉強を積み重ねてきたのに、いざ資格試験の本番を迎えてプレッシャーに負けてしまう。緊張から頭の中が真っ白になり、解けるはずの問題に苦戦して失敗したという声はよく聞きます。

貴重な時間を費やして取り組む資格試験ですから、万全のコンディションで合格を勝ち取りましょう。資格試験に合格(=目標達成)と考えた場合、どのようにしてクリアしていけば良いのか。ここではコーチングの観点から、セルフコントロールを踏まえたポイントを詳しく解説します。

資格試験に向けて「セルフコーチング」を活用しよう

プレッシャーに負けず本番に強くなるために、おすすめなのが「セルフコーチング」という方法です。これはコミュニケーション技法の「コーチング」を自分一人で完結し、なりたい自分に近づけていくことができるスキルのこと。コーチングはコーチからの質問に答えることによって、自分の意識していることの外にある気づきから問題解決に繋がる考え方を引き出します。これに対してセルフコーチングは、自らに問いかけることで自分の中にある答えを引き出すものです。

セルフコーチングを使って、これからチャレンジする資格試験へのイメージを膨らませていきましょう。注意点としては、ネガティブではなくポジティブな未来をイメージすること。例えば自分に問いかけながら、試験に合格して喜んでいる自分を想像してみてください。資格試験でプレッシャーに負けないためには、以下のような質問が効果的です。

  • 資格を手に入れた後、どのような活動をするか?
  • その活動は、自分にとってどんな意味があるか?
  • 資格を手に入れた未来のあなたが今の自分に声をかけるならどんな言葉をかけるか?
  • この試験に合格することは、自分のこれからの人生にどのような意味があるのか?

実際のところ、自分の頭の中だけで思考を進めるには限界があります。たとえ思考の広がりを考えて答えを出そうとしても、考えれば考えるほど同じような方向性になっていくでしょう。自分自身で答えが見つけられず、友人に相談した際に何気ない一言をもらい、「そういう考えがあったか」と気づきを得た経験はないでしょうか。これは友人の考えをプラスすることにより、思考の壁を超えた答えが見えた状態。セルフコーチングでは、これに近い状態を作り出すことができます。

目標達成に向けたPDCAサイクルの弱点

ポジティブなイメージが湧いて心にワクワク感が出てくれば、セルフコーチングが上手く効いてきている証拠。その次は、目標と計画を立てていきます。目標達成に役立つものとして、「PDCAサイクル」を聞いたことのある方は多いでしょう。ではこのPDCAサイクルについて、しっかりと習ったり勉強したりして理解できているでしょうか。


PDCAサイクルは以下4つの項目で構成され、これらの頭文字を繋げて“PDCA”サイクルと呼ばれています。

  • P(Plan:計画)
  • D(Do:実行)
  • C(Check:検証)
  • A(Action:改善)

ビジネスの世界では馴染みのある言葉でも、自分のものとして活用できている人は決して多くありません。このPDCAの難点は日常の習慣として身についていないこと、そして項目が4つに及ぶため一連の流れが難しくなってしまうことでしょう。そこで難易度を下げて、ここではコーチングでも共通するPとDの2つに目を向けたポイントをお伝えします。

本番をプレッシャーに感じない自分を作るセルフコーチング3つのアクション

1)目標を設定する

・合格後に自分がどんな表情をしているかリアルに想像する

本番に弱い人の特徴として、ネガティブなことをよく想像してしまう点が挙げられます。ネガティブなイメージが考え方の土台になってしまうと、どうしてもマイナス寄りの思考が膨らんでしまうでしょう。そこで、合格した自分自身の表情をイメージすることは、ポジティブな感情を引き出すのに効果的です。

ポイントは、できる限り鮮やかにイメージすること。最初は難しいかもしれませんが、繰り返しイメージすることで詳細部分が鮮明になっていきます。

そして表情をイメージできたら、次は合格後の感情もイメージしましょう。きっと、心に湧き上がるのは「嬉しい」だけではないはず。「やった!」「苦労が報われた!」「安心した」など、色んな感情がイメージできてくるのではないでしょうか。こうしたポジティブな感情を、思いつく限り呼び出してみてください。

・モチベーションを高める

合格後のポジティブなイメージができれば、自然とモチベーションが高まっていくでしょう。もともと、モチベーションは行動することにより生まれるもの。しかしこのように、セルフコーチングからでもモチベーションを上げていくことは可能です。

試験勉強で壁に当たったときは、合格に向かうモチベーションが強いほど大きな困難でも乗り越えていけます。セルフコーチングで出てきたワクワク感があれば、これが今やるべきことに対する原動力に繋がり、楽しみながら成長できるはずです。

・合格した先をイメージする

資格試験の本番だけでなく、さらに合格した先にどんなやりたいことがあるのかイメージします。何かしら資格試験を受けようと決めれば、意識は自然とその試験に集中してしまうもの。すると、いつの間にか試験を受けること自体が目的にすり替わってしまうことがあります。

本来であれば資格試験に合格し、その資格を使ってキャリアアップや転職、あるいは自己成長することが目的ではないでしょうか。目標設定で達成後の自分の姿を細部まで鮮明にイメージすれば、目的をすり替えず、しっかり合格に向けてモチベーションを繋げられます。

このイメージがどれだけ詳細に描けているかは、モチベーションの強さを決める大切なポイント。イメージの仕方を例えるならば、映画のワンシーンのように生きた情景を想像してみましょう。例えばFP試験の合格なら、FPとしての独立を考えるのも良いかもしれません。自分が生まれ育った町で開業し、地元の知り合いや親戚たちから尊敬の眼差しを受けている。あるいは多くの友人がお祝いに駆けつけてくれたり、FPとして経験を積んで多くのクライアントから感謝されたりするシーンなど。いつ、どこで、誰と、どんな風にして、何を行っているのかをイメージしましょう。きっと、心の底から自然に沸くモチベーションに出会えるはずです。

2)現状を把握する

試験に合格して目標を達成した状態を達成度100%と考えたとき、現状の自分が何%まで到達しているのかを把握しましょう。仮に現状が60%なら、残り40%を埋めるために何が必要なのか。これを考えて実行していきます。このとき、いきなり40%をすべて埋めることは難しいので、スモールステップにすることがポイント。例えば、まずは60%を70%に上げるために必要なことを考えると良いでしょう。

3)行動を設定する

目標がしっかりと定まり現状が把握できたら、いよいよ行動を決めていく流れに入ります。目標達成に必要な行動を、すべて書き出しましょう。

  • 目標達成のためにはどんな行動が必要か?
  • 自分の強みや経験をどのように生かすか?
  • どんな方法なら続けられるか?
  • いつからやるか?

こうした内容から、実現可能な計画を作り込んでいきます。ポイントは難しくなり過ぎないようできるだけリアルに、かつ可能な限りスモールステップに分けていくことです。

さらに自信を深めるための4つの考え方

もっと自信を持って強い自分になるために、意識したい4つの考え方をご紹介します。

1)良き理解者を作る

いわゆるメンターと呼ばれる、安心して相談に乗ってくれる人を作ります。メンターに応援してもらうことで自信に繋げ、会話を通じて自分の頭の中で思考が整理されるはず。このとき、これから挑もうとしている資格試験について理解している人だとさらに良いでしょう。あるいは、尊敬できる先輩に頼むのもおすすめ。もちろんプロからコーチングを受けてモチベーションを上げ、目標達成へのスピードを速めていくことも有効です。

2)目標達成のガソリンとなる飴と鞭を持つ

資格試験へ向けて行動することが苦しいこともあります。そんなときは、自分にとって飴になるご褒美を用意しておきましょう。鞭ばかりでは、誰しも試験前に体力負けしてしまうもの。タイミング良く飴を挟むことで、緩急をつけながら試験に臨んでください。飴のポイントは「心が喜ぶこと」と「体が喜ぶこと」の両方を用意すること。例えば「心が喜ぶこと」は達成感や昇進など、「体が喜ぶこと」は何ページまで勉強したら美味しいものを食べる、息抜きにドライブへ行くといったものです。

心が元気でも、体が疲れていればなかなか勉強が進みません。これとは逆に、体が元気でも心が疲れていると集中できないことが多いでしょう。心と体、両方のガソリンを補充しながら資格試験を戦い抜いてください。

3)合格者の話を聞いてマインドを手に入れる

働きながら資格試験の合格を目指している方の中には、職場の同僚や先輩が同じ試験を受けているケースが多いでしょう。特に現在の仕事に関連した資格なら、会社側から資格取得を推奨していることもあります。この場合、すぐ身近に同じ資格試験の勉強を経験し、合格した人がいるということ。ぜひ、合格者に勉強法について聞いてみましょう。具体的には、以下のようなことを質問してみてください。

  • どれくらいの期間で勉強したか
  • テキストは何を使ったか
  • なぜそのテキストを選んだか
  • テキストをどのように勉強したか
  • 勉強期間で困ったことは何か
  • 試験に向けてどんな対策をしたか
  • 試験当日はどんな対策をしたか など

合格者のマインドを手に入れることができれば、合格の確率がかなり高まります。その結果、「合格者に学んで勉強に取り組んだ」という自信が備わり、プレッシャーに負けず試験本番を迎えられるはず。また、勉強していて分からないことがあっても、聞くことで理解しながら進められます。

4)他者の評価は気にしない

資格試験の合格を目指して勉強していると、周囲の声が気になるかもしれません。例えば同じ資格勉強を行っている他社の方が進んでいるのではないかと感じたり、あるいは「あの人は合格間違いなしと言われている」という評価が聞こえてきたり。こういう余計な情報が入ってきたときの解決法は、とにかく気にしないことに尽きます。

資格試験は自分との戦いです。限られた期間の中で決められた内容を、どれだけ自分のものにできるか。これが勝負の分かれ目となるでしょう。勉強に費やせる時間、あるいは学習進度などは、人によって異なるのが当然のことです。大切なのは、結果として最終的に試験合格という目的を達成させることでしょう。常に昨日の自分を上回ること。これができれば自信を積み上げられ、必ず良い結果が生まれるはずです。

最後に

ここではセルフコーチングを中心に、試験本番で結果を出す、強い自分になるための方法を解説しました。慣れないこと、初めて取り組むことがあれば、最初は難しく感じるかもしれません。しかし継続していけば、次第に効果が上がってくるでしょう。

頭の中で考えてもイメージが広がらないなら、ノートに書き出せばより深い考えに到達できます。ポイントは、未来のなりたい自分を明確にイメージして取り組むことです。モチベーションを高めてプレッシャーに負けない自信を身に付け、資格試験の合格、そしてその先にある未来を勝ち取りましょう。

[著者プロフィール]
片桐大輔
販売業や飲食業にて述べ300人以上のスタッフを育成。その中でコミュニケーションの手法としてコーチングに出会い、コーチングでもっと大勢の成長を手助けしたいとプロコーチを志す。コーチング実績40名、銀座コーチングスクール認定資格を取得中。現在は会社員として勤務しながらコーチ活動を行っている。自身がコーチングによって成長スピードを上げ、人生が変わった経験から、特に20~30代を中心として目標達成をサポート。
https://twitter.com/zaratsu2017