弁理士とはどんな仕事?

弁理士の仕事は、知的財産権を取得したい方のために、出願の書類作成や申請など特許庁への手続きを代理して行うことが主な仕事です。

例えば、特許取得までの弁理士の業務は以下のようになります。

1 出願人と弁理士が、特許権について相談・打ち合わせを行います。

→出願人が発明のアイデアなどを説明し、弁理士が特許を取れる可能性があるかなどの調査を行います。

2 弁理士が出願書類を作成します。

 →打ち合わせの内容に基づいて、特許庁に提出する書類を作成します。

3 出願人が出願書類の内容を確認します。

4 弁理士が特許庁に出願手続きを行います。

5 アイデアが特許庁に認められると特許を取得できます。

このほか、弁理士の仕事には、知的財産のスペシャリストとして以下のような仕事があります。

・知的財産権の取得についての相談

・自社の知的財産権が害されているおそれがあるときの対策

・他社の権利を侵害していないかの相談

 ・特許技術に関するコンサルティング

 ・海外の知的財産権取得やライセンス契約交渉

 ・知的財産権に関する訴訟の訴訟代理人

弁理士の業務範囲については、弁理士法に定められています。特許、実用新案、意匠、商標、国際出願などの出願代理業務や鑑定業務は独占業務です。 

【コラム】知的財産権とは

知的財産権とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などをいいます。

人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などで財産的な価値を持つものを「知的財産」と呼び、法律で規定された権利や法律上保護される利益など、権利として保護されるものを「知的財産権」と呼びます。

「特許権」は、比較的程度の高い新しい技術的アイデアである発明を保護する権利です。例えば、何度でも書きなおせるボールペン「フリクションボール」などは特許権の対象です。

「実用新案権」は、発明ほど高度な技術的アイデアはない製品の形状、構造、組み合わせなどの考案を保護する権利です。例えば、インキ浸透印のようにゴム印自体にインキを含浸させて捺印できるスタンパー、コンピュータのプログラムなどです。

「意匠権」は、物品の形状や模様などのデザインを保護する権利です。例えば、自動者のデザインやマスクのデザインなどは意匠権の対象です。

「商標権」は、商品やサービスの文字やマーク保護する権利です。例えば、会社や商品のロゴマークなどが商標権の対象になります。

弁理士にはどうすればなれるのか

では、弁理士には、どうすればなれるのでしょうか?

弁理士は国家資格ですから、弁理士試験という国家試験に合格する必要があります。

またその上で実務修習をうけ、終了後に弁理士登録をする必要があります。

資格試験に合格

・どんな試験なのか、必要な知識は何か(どんなサイクルで実施されるか)?

 弁理士試験は、①筆記試験と②口述試験により行われ、①-a筆記試験には、①-b短答式と論文式により行われます。

各試験は毎年1回実施されます。原則として、短答式筆記試験に合格すれば、論文式筆記試験を受験でき、論文式筆記試験に合格すれば口述試験を受験できます。

ただし、試験ごとに免除制度があり、多くの受験生が免除制度を利用しています。

受験資格

特にありません(学歴、年齢、国籍当による制限は一切なし)。

受験料

12,000円

①-a短答式筆記試験

短答式筆記試験は、例年5月下旬の第3日曜日に実施されます。

①-b論文式筆記試験

論文式筆記試験は、必須科目が、6月末または7月の第1日曜日、選択科目が7月の第3または第4日曜日に実施されています。

「短答式筆記試験 」と「論文式筆記試験」の免除制度について

また「短答式筆記試験 」と「論文式筆記試験」にはそれぞれ免除制度があります。

・ 短答式筆記試験免除制度 について

この短答式筆記試験には免除制度が認められています。

短答式筆記試験合格者

短答式筆記試験の合格発表の日から2年間、短答式筆記試験の全ての試験科目が免除されます。

工業所有権に関する科目の単位を修得し大学院を修了した方

大学院の課程を修了した日から2年間、工業所有権に関する法令、工業所有権に関する条約の試験科目が免除されます。

注:事前に短答式筆記試験一部科目免除資格認定の申請を行い、工業所有権審議会の認定を受けることが必要です。

特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方

工業所有権に関する法令、工業所有権に関する条約の試験科目が免除されます。

・ 論文式筆記試験免除制度

・所定の科目に関する研究により修士又は博士の学位を有する者、所定の専門職大学院の学位を有する者(※1)

・技術士、一級建築士、第一種又は第二種電気主任技術者、薬剤師、電気通信主任技術者、情報処理安全確保支援士試験合格者、情報処理技術者試験合格者、司法試験合格者、司法書士、行政書士(※2)

・弁理士試験選択科目合格者(※3)

※1 修士・博士もしくは専門職の学位を有している者は予め免除を受けられるか否かの審査を受け、免除資格認定通知書を取得する必要があります。

※2 司法書士、行政書士の場合、登録している必要があり、登録には入会金などがかかります。

※3 選択科目の試験に1度合格すれば、その後の試験においては選択科目が試験免除となります。

②口述試験

口述試験は10月の第2週または第3週の土曜日~月曜日の3日間のうちいずれか指定された日に実施されています。

「 口述試験」の免除制度について

「口述試験についても免除制度があり、条件は下記のとおりになります。

・口述試験免除制度

特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方

実務修習について

弁理士試験の合格した後には、弁理士となるのに必要な実務修習が義務付けられています。

実務修習は、弁理士試験合格発表後の12月~3月の期間に実施されます。

 実務修習終了後に弁理士登録が可能となります。一度実務修習を修了すれな、いつまでに弁理士登録をしなければならないという定めはありません。

弁理士の資格取得の難易度は

合格率・標準学習時間(目安)・勉強内容は?

合格率

合格率は、最終合格率が6%~10%程度で、最近は6%~7%の範囲で推移しています。

短答式筆記試験の合格率は、8%~30%と幅が広く、当該年度の問題の難易度によって大きく異なります。 論文式筆記試験の合格率は、21%~28%で推移しています。

標準学習時間(目安)

弁理士試験の合格までに必要な時間は、大体3,000時間といわれています。

仕事をしながら受験されている方が多いので、一定程度の期間が必要となります。

勉強内容

短答式筆記試験から口述試験までのすべての試験で出題されるのが、特許・実用新案法、意匠法、商標法の主要4科目です。これらの科目が弁理士試験の基礎となる科目となりますので、まずは、この4科目を中心に学習を進めていきましょう。

 そして、短答式筆記試験に合格すれば2年間の試験免除制度があることから、短答式筆記試験の合格を目指すことになります。短答式筆記試験の合格が最大の難関ともいえます。

費用的問題

前述のとおり、弁理士試験では免除制度が採用されていることから、まずは、短答式試験合格を目指すというように1年ごとに計画を立てて勉強を進めていきましょう。仕事をしながら受験されている方も多いため、短答式試験の合格に時間がかかると受験年数が長くなってしまう場合もあります。

そのため、各種スクールに通う場合の受講料も考慮に入れておく必要があります。1年あたり10~20万円かかる場合には、5年では50~100万円かかってしまうケースも珍しくありません。

一方、費用の面から独学という方法を取る人もいますが、試験での頻出事項とそれ以外の事項とのメリハリをつけることが難しいことや、法改正の情報を入手しづらいといったデメリットもあります。特に試験科目の法改正があると、施行日などもばらばらであり、どこまでが当該年度の試験に影響があるか整理するだけでも大変です。

したがって、弁理士試験の学習では、学習期間が比較的長期となることを見据え、受講料と学習の質という両面についてバランスの取れた学習方法を選択する必要があります。

弁理士になるとできることは?

できるようになること

弁理士の就業形態として多いのが特許事務所経営(独立)、特許事務所勤務、会社勤務です。

独立

特許事務所を独立開業した場合、いろいろと需要アップが期待される分野はあります。成功するかどうかは、本人の努力次第といわれています。

特に今後、特許事務所の需要があると期待されている分野として、「国際出願」が挙げられます。

世界のグローバル化にともない、多くの国内企業が海外にも市場を求め始めたからです。クリエイティブな商品開発を行っている業種であれば、世界各国の企業を相手に「特許」などをめぐり競合することになります。海外での特許を取得するため、これまで以上に海外で活動する特許事務所が必要とされるでしょう。

企業内弁理士

弁理士の主な就職先は特許事務所ですが、中にはメーカーなどの企業内で働く人もいます。

企業内弁理士はその企業の利益を第一に優先する立場のため、独立系の特許事務所とは多少事情を異にします。

メーカーなどの企業と契約を結んで働く場合、競合他社の特許・技術に関する情報収集、または新規アイデアの独創性調査などを手がけます。さらに自社製品の出願や、事業成長を見据えた特許戦略の立案など、知財部門に関する幅広い業務責任を担っています。

講師

「知財セミナー」、「著作権セミナー」といったセミナーを担当されている弁理士や、資格スクールでの講師を行う弁理士も多数存在します。ほかの人に物事をわかりやすく伝えるのが得意な人は、講師の道に進むのも良いかもしれません。

みんなはどうやって勉強しているのか

弁理士試験の受験生は、現在のところ、スクール(通学)や通信教育で勉強していくのが一般的です。その他には独学で勉強する人もいます。

最も一般的なのはスクール(資格学校)に通学しながら勉強する方法です。スクールのメリットは、試験頻出の事項や多くの受験生が利用している暗記方法などについての指導が受けられることや、法令の改正情報なども入手しやすいため効率的に学習できます。また、法令の改正情報なども入手しやすいことにあります。一方、デメリットは、決められた講義時間に合わせる必要があり、受講料が比較的高額になることといえます。

通信教育のメリットは、スクールと同様に、効率的に学習できることに加え、通学に比べて受講料が安く抑えられることも挙げられます。ただし、紙のテキスト・教材で自ら学習を行うことがメインとなり、講義を受けられず、学習内容の詳細まで学習するのが難しいことがデメリットといえます。

独学のメリットは、最も費用が安いことといえます。ただし、改正情報を含め、自ら教材をそろえる必要があり、手間や時間がかかることがデメリットとなります。 なお、最近シェアを広げているオンライン講座では、上記学習方法のメリットをバランス良く享受することができます。スマートフォン・PC・タブレットでいつでも場所を問わずに勉強でき、スクールと同様に効率的に学習をすすめられるというメリットがあります。さらにスクールや通信教育に比べ、受講料が安い場合も多く、費用負担の面でも魅力があります。ただし、教室での講義は受けられませんし、紙のテキスト・教材が別料金となる場合もあります。

弁理士試験の勉強は、長期間となる傾向にあります。平成30年度の最終合格者統計でも、受験回数が初回で合格したという方は、11.5%で、1回~5回の方が68.1%、6回~10回が13.8%となっています。一定期間の勉強時間が必要な試験であることを認識したうえで、受講携帯のメリット・デメリットを参考に、学習期間トータルでの費用と学習の質とのバランスを考慮した上で、あなたに最も合った勉強方法を選ぶことが大切です。