税理士試験に合格するまで道のりは長く険しいですが、正しい方法で学習すれば合格できます。本記事では官報合格済みの税理士が、税理士試験の勉強におすすめの学習ツールをご紹介します。これから税理士試験の勉強を始める、自分の勉強方法が正しいか不安、あるいはもっと効率的な学習方法を探している方は、ぜひ参考にしてください。

税理士試験の特徴

具体的な学習ツールを紹介する前に、これから税理士試験の勉強を始める方向けに税理士試験の特徴を簡単にご解説します。税理士試験は毎年8月に行われる試験で、科目合格制を採用している点が大きな特徴です。会計科目(簿記論・財務諸表論)2科目と、税法科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税)3科目の合計5科目に合格すると、税理士試験に合格します。

なお、各科目の合格ラインは60点です。「上位〇%」というライン設定ではないので絶対評価のように思えますが、毎年の合格率は10%から20%で安定しているため、実質的には相対評価となります。

税理士試験の内容は、電卓を叩いて答えを導く「計算」と、問いに対する答えを文章で書く「理論」に大別されます。ただし、「計算」と「理論」の割合は科目によって異なります。たとえば簿記論は100%計算、事業税は70%計算・30%理論、国税徴収法は100%理論。税法科目は受験する科目を選べますから、数字が得意な方は事業税を、暗記が得意な方は国税徴収法を選択するというのも一つの方法です。

インプット用のおすすめ学習ツール

税理士試験のうち「計算」の勉強方法は、概ね他の資格試験や学校のテスト勉強と同じです。具体的には知識を頭に入れ(インプット)、知識の定着度合いを問題集などで試し(アウトプット)、定着していない知識を再度頭にインプットし・・・というサイクルの繰り返しとなります。

一方で税理士試験の「理論」は、他の資格試験や学校のテスト勉強とは異なり、長い文章の丸暗記が必要な点に特徴があります。特に税法理論は、試験で誰もが暗記している条文が出題された場合、一つのフレーズを落としたり税法用語の使い方が正しくなかったりすると大きな減点につながります。他の受験生に差をつけられてしまうため、重要な理論(いわゆる「Aランク理論」)は丸暗記が必須です。

以上を踏まえて、インプット用のおすすめ学習ツールをご紹介しましょう。なお、理論用のツールは【理論】、理論・計算に共通のツールは【共通】と記載しています。

予備校のテキスト【共通】

TACや大原といった予備校の税理士試験対策講座を受講している方は、まずその予備校のテキスト(特に基本テキスト)に書かれている内容を確実にインプットしましょう。大切なのは「一度読んでおしまい」ではなく、何度も何度も繰り返し読むこと。大手予備校のテキストに書いてある内容は多くの受験生が一度は読んでいます。他の受験生に差をつけたいのであれば、他の受験生より一回でも多くテキストを読むようにしてください。

予備校に通わず独学で勉強される方は、市販のテキストを購入する手もあります。しかし「産業能率大学の通信講座」を使えば、大手予備校(TAC)のテキストを安価に購入することが可能です。費用面で予備校への通学を諦めている方はぜひご検討ください。

・参考:産業能率大学総合研究所ホームページ

ICレコーダー【理論】

理論暗記の方法は人それぞれですが、私はICレコーダーに理論テキストの内容を吹き込み、それを繰り返し聞くことで理論をインプットしていました。この方法のメリットは、ICレコーダーに吹き込むときにも理論暗記ができる点です。漫然と理論を読むだけだとなかなか記憶は定着しませんでしたが、ICレコーダーに吹き込むようになってからは、理論暗記の定着度が明らかに上がったことを記憶しています。おそらく、一字一句間違わないよう集中して吹き込むことにより、より記憶が定着しやすくなったのではないでしょうか。

ICレコーダーを使った暗記の欠点は、理論暗記のたびに自分の声を聴かなければならないこと。自分の声を聴くのが苦痛な方は、市販の暗記CDを購入されるとよいでしょう。

・参考:Cyber Book Storeホームページ

紙の単語帳、スマホアプリ【共通】

紙の単語帳(無印良品のものがおすすめです)でもスマホアプリの単語帳(今は配信停止中ですが「i暗記」というアプリがおすすめです)でも構いませんので、何か単語帳を作ることをおすすめします。ICレコーダーへの吹き込みと同じく、「自分で作る」という行為自体がインプットにつながる上、作った単語帳を通勤時間や休憩時間に繰り返し見ることで記憶を定着させることが可能です。

Twitter【共通】

勉強しなければならないのについ、スマホでTwitterを見てしまうという方は多いでしょう。実際、私もそうでした。Twitterを開いたときは、その時点で学習している内容をつぶやくようにする。そうすれば知識の整理になる上、あとから見返すことも可能です。専用のハッシュタグを使ってつぶやくと便利ですので、ついTwitterを開きがちな方は試してみてはいかがでしょうか。

アウトプット用のおすすめ学習ツール

効率的なインプットを行うことは非常に大切ですが、インプットだけで税理士試験に合格することはできません。インプットとアウトプットはいわば車の両輪であり、インプットとアウトプットを繰り返すことが重量になります。そこで、アウトプット用のおすすめ学習ツールもご紹介しましょう。

予備校の問題集【計算】

予備校の問題集もテキストと同じく、大切なのは「一度解いておしまい」ではなく何度も繰り返し解くこと。各問の難易度が記載されている問題集もありますが、私の場合はその難易度にかかわらず、一度解いた問題を「A:簡単に解けた、B:少し悩んで解けた、C:解けなかった」の三つに区分。そしてAは月に一度解く、Bは二週間に一度解く、Cは理解できるまでテキストを読み理解したらBに上げるという勉強法をとっていました。

この勉強法は、すでに解いたことのある問題を繰り返し解くので、地味ですし面白味に欠けるかもしれません。しかし、複数の問題集を同時並行的に一度だけ解くという勉強法よりも、確実に知識が定着すると考えています。

公開模試【共通】

公開模試はアウトプットの王様です。私は自分の通う予備校以外に行くことは基本的にありませんでしたが、公開模試の時期は例外でした。公開模試で出題された論点が本番の試験で出た場合、その模試を受験していない人はかなり不利になります。そのため、少なくとも受験者数の多いTACと大原の公開模試は両方受けることを強くおすすめします。

公開模試を受けた後は点数と合格可能性の判定が返ってきますが、大切なのは点数や判定ではありません。時間配分はどうだったか(最後まで解ききれたか)、理論暗記の正確性はどうか(どこに採点者の×がついているか)、ケアレスミスをしていないかを振り返ることが大切です。模試の問題は受験のプロが作った良質な問題であるため、「解きっぱなし」にするのは非常にもったいないでしょう。何度も何度も、100点が取れるようになるまで繰り返し解くことで、確実に力がついてきます。ちなみに私は、公開模試でB判定以上を取ったことがありません。それでも模試の振り返りを行い、何度も解きなおすことで本番に合格する実力をつけることができました。

家族や友人を使った理論暗記【理論】

地味で辛い理論暗記に一人で取り組んでいると、気が滅入りそうになるときもあります。そういったときは、家族や友人を使った理論暗記をしてみてはいかがでしょうか。具体的には、覚えた理論のページを開いたテキストを相手に渡し、頭から理論を暗唱するという方法です。一文字でも間違えたら指摘してもらうようにすれば、ご自身の理論暗記の精度を確認できますし、家族や友人と一緒に行うことで辛い理論暗記が少しは楽しくなると思います。

まとめ

インプットの学習ツールは予備校のテキストを中心に据え、理論はICレコーダー、計算・理論共通では単語帳を使うことをおすすめしました。Twitterが好きな方は、Twitterも便利に使うとよりインプットの効率があがることでしょう。これに対してアウトプットの学習ツールは、予備校の問題集と公開模試を何度も繰り返すことがおすすめです。理論暗記に煮詰まってきたら、家族や友人を使った理論暗記にぜひトライしてみてください。