国家資格の一つであり、税務等のスペシャリストである税理士。その資格試験は難関ですが、取得後は独立を目指すこともできる資格です。そのため、税理士資格の取得を目指す方は数多くいます。そんな税理士試験に合格を果たすには、効率的かつ計画的に勉強を進めることが重要でしょう。

今回は正社員としては働きながら税理士試験に合格し、現在は税理士として独立され豊富な経験を持つ安藤正三さんに、税理士試験の勉強方法についてインタビューしました。実際にどんな勉強法で合格を果たしたのか、これから勉強を進めるうえでとても貴重な情報になるでしょう。具体的な勉強法も伺いましたので、自分に合いそうだという方は試してみると良いかもしれません。これから税理士試験の合格を目指す、あるいは勉強中で行き詰まりを感じている方などは、ぜひ参考にご覧ください。

――税理士資格の取得を目指した時期と、目指そうと考えたキッカケは何だったのでしょうか?

税理士資格の取得を目指した時期は2008年に起きたリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻による、リーマンショックの最中でした。リーマンショックによって、名だたる大企業が大きな影響を受けているのを目の当たりにしたんです。それで、「これからは手に職をつけないと生きていけないかもしれない」と思ったことがキッカケで、税理士資格の取得を目指そうと考えました。

私の場合、いきなり税理士試験の勉強を始めたわけではありません。資格取得を目指すに当たって、まず始めたのが簿記3級の勉強です。そして簿記2級に合格してから、本格的に税理士試験の合格を目指すようになりました。

――受験された科目と、それを選んだ理由を教えてください

複数ある税法科目の中から、私は所得税法と消費税法、国税徴収法、相続税法を受験しました。所得税法を受験科目に選んだのは、身の回りの税金に興味があったため。また、消費税法を受験したのは実務で役立つと聞いたためです。そして国税徴収法は、民法の知識が多少あったことから受験しました。相続税法も実務で役立つと聞いたため受験しましたが、合格することはできませんでした。

資格試験の勉強を始めてから合格までの流れとしては、まず会計科目(簿記論・財務諸表論)に合格した後で税法科目を受験しました。税法科目は所得税法、国税徴収法、消費税法の順に合格しています。このとき税法科目の最初に所得税法を選んだのは、税法科目の中でもっとも大変なのが、所得税法または法人税法の合格だと考えたためです。

――合格まで要した期間と、1日当たり割いていた勉強時間について教えてください

私は正社員として働きながら税理士試験の勉強を進め、受験しています。その中で、税理士資格の取得までは合計5年の期間を要しました。同じように働きながら税理士試験を受験する人が合格までにかかる期間は、おおよそ3年から7年程度と聞いたことがあります。そのため、恐らく平均的な期間で合格したのではないでしょうか。

働かず税理士試験の受験に専念している人、あるいはアルバイトなどフルタイムではなく働きながら税理士試験を受験している人ならは、勉強に費やす時間は自然と多く取りやすくなるでしょう。その分だけ、もう少し短い期間で合格できるのではないかと思います。

私は9月から12月まで、土日のどちらか一日を勉強にあてるだけで、平日はほとんど勉強しませんでした。ちなみに勉強する日は、朝9時頃から夕方まで勉強していたイメージです。1月から5月までは平日の1~2時間と土日両方を勉強に割いて、祝日は遊んでいましたね。そして5月以降の直前期は、平日2~3時間と土日祝日を勉強に割いていました。

時間確保の工夫として、通勤や昼休みといったスキマ時間の活用を心がけました。スキマ時間に理論暗記をしたり、自作の単語帳の問題を解いたりしていたんです。2月から5月の期間は仕事の繁忙期だったため、平日夜になかなか勉強する時間を確保できない点を困難に感じました。この時期は「夜にできないのなら、朝に勉強するしかない」と思って、いつもより1時間早起きして会社近くのカフェで勉強してから出勤していましたね。

――どのような方法で勉強しましたか?その方法を選んだ理由やメリットと合わせて教えてください

私は自宅だと集中できないタイプです。予備校に通っていたので、勉強する際にはその自習室にこもりました。携帯電話を予備校のロッカーに預けてしまえば、気が散る要素を排除できるので勉強に集中できます。予備校に通っていない方は、近所の図書館でも同じ効果を得ることができるのではないでしょうか。それでも気が散るという方は、スマホの電源をできるだけ切っておくと良いと思います。

理論暗記をする際はICレコーダーに理論を吹き込んで、それを繰り返し聞くことをおすすめします。レコーダーに吹き込む作業は手間に思えるかもしれません。しかし、一言一句間違えないよう丁寧に吹き込んだとき、理論の記憶定着率が良かったと感じています。

また、計算の勉強は問題集を解くことの他に、私は自作の単語帳も使っていました。スマホの単語帳もありますが、スマホだとついネットニュースなどを見てしまいます。そのため、ちゃんと勉強に集中できるよう、私は紙の単語帳を使っていたんです。理論をICレコーダーに吹き込む作業と同様、単語帳を作る作業は手間かもしれません。しかし、その手間をかけただけの効果はあったと思っています。

――資格勉強で困ったこと、悩んだことはありましたか?

やはり勉強を進める中で、思うように成績が伸びていかないときは「このままで本当に受かるのだろうか」「今の勉強方法は間違っているのではないか」という不安や悩みを抱えることもしばしばありました。そういった不安や悩みを抱えたときは、予備校の先生に相談するようにしていましたね。相談した結果、もちろんすべて問題解決には至るとは限りません。しかし、それでも誰かに話を聞いてもらうだけで、少しすっきりしたことを記憶しています。資格試験の勉強は孤独になりがちですが、周囲に何かあったとき相談したり、悩みを聞いてもらえたりする人がいると良いかもしれません。

また、勉強方法について今振り返ってみると、直前期の前から計画的に勉強しておけばよかったと思います。毎年、計画的に勉強ができず、直前期になって私生活を犠牲にしながら勉強していました。私生活を犠牲にしながらの勉強は、周りにも迷惑になってしまいます。さらに、自分自身もかなりしんどい思いをすることになりますので、やはり勉強には計画性が大切ですね。

―――これから税理士資格の受験を目指す方に、アドバイスなどお願いします!

私は税理士試験の勉強に5年間を要しました。この期間は人それぞれ異なりますが、基本的に税理士試験は合格までの道のりが長丁場です。もしかしたら、途中で挫折しそうになる方がいるかもしれません。しかし、1科目ずつコツコツと積み上げていけば、最後には必ず合格できるはずです。税理士試験は努力した人が報われるものだと思うので、最後まで諦めずに頑張ってください。