はじめに

「11科目の中から5科目を選択する」というのは税理士試験の大きな特徴です。

サイト内の別記事でも、選択の目安は提示されています。

それはそれで、ベーシックな見解でごもっともだと感じました。

さて、まずはあなたに質問です。

税理士試験を早く終わらせたいですか?

それとも

時間がかかっても、合格者の中で一番のキャリアに立ちたいですか?

なぜ、簿記論や財務諸表論から学ぶのか?

簿記論や財務諸表論から合格しなくてはいけないというルールはありませんし、事実、マイナー税法から合格していった先生を筆者も存じています。

ただ、学習効率上、一般的には簿記論から入るのがやりやすいというのが現実です。

例えば、簿記検定の学習経験があった場合、簿記論の内容は非常にスムーズに入っていけることでしょう。

そして、財務諸表論は簿記論の仕組みを説明したものです。

言い換えれば「簿記論でこういう計算をするのはなぜなのか?」を学ぶのが財務諸表論と言ってよいでしょう。

ですから、簿記論→財務諸表論の科目選択プロセスが上手くいくケースが多いのです。

また、実際のところ簿記の仕組みがわかっていないと税法の理解ができません。

例えば法人税でも、「減価償却」という言葉がわかっているのが前提で、さらに会計と税法との違いを細かく見ていきます。

そういう意味で、「簿記論からスタートすべし!」という先人たちの経験則はまさに会計と税法の理論的な関連から言っても、理にかなったもので、筆者も自身を持って太鼓判を押せます。

メインの税法を何にするのか?

簿記論と、財務諸表論に無事合格したとしましょう。

メインの税法は何を選びましょうか?

税法の科目のうち、最もボリュームが多いのは法人税と所得税。

どちらか一つは選ばなくてはいけないので、ここは大きな分かれ目です。

サイト内のページでも600hとの目安が提示されています。

では、法人税なのか、所得税なのか?

筆者の結論としては「身近なのは所得税だから学びやすい」ただし、「キャリアプランによっては法人税でなくてはダメなケースがある」というものです。

まず、所得税についてですが、個人に関する話も出てきます。また、社会人の方でしたら所得税について「全く気にしたことがない」という方は少ないのではないでしょうか?

その意味で、「入りやすさ」についてだけ見れば所得税に軍配が上がるといえます。

では、法人税を取得した方がいいケースとはなんでしょう?

求人から分析します。

大手と言われる税理士法人では、確かに合格している科目内容が問われるケースがあるようです。

筆者が調査したタイミングではbig4と言われる税理士法人のうちのひとつが、科目合格者については「法人税の科目合格必須」としていたケースがありました。(参考サイト:indeed)

しかし、求人のレベルで明確に科目を指定していたのはこのケースを含めて非常にまれではあります。

科目合格を指定するとしても3科目以上の合格というように科目数を指定するケースの方が圧倒的に目立ちました。

ただし、おなじ合格者が面接来たときに、合格科目によって優劣をつけることがないわけではありません。

そういう意味で、就職先に大手事務所を検討している方は「法人税」のほうが安全だと考えます。

とは言え、なかには法人税と所得税の両方に合格する人もいるので、そこは相手を気にしだすときりがなくなるかもしれません。

結局のところ、税理士業務を仕事にするにあたって、「法人税しかわかりません」とか「所得税しかわかりません」という状況は基本的にはあってはならない事です。

特に独立することを検討しておられる場合、法人税、所得税、相続税あたりはみんな最低限勉強しているとお考えになられて間違いないでしょう。 ですから「法人税なのか、所得税なのか、それとも両方受けるのか」という選択は実務で使うか否かではなく、シンプルにあなたの使える時間と今後のキャリアとの相談と言ってよいでしょう。

科目免除の可能性を考慮する

いまのところ、「5科目勉強」するという前提でお話をしていますが、簿記→財務→税法というのが必ずしもベストとは限らないという点に注意しましょう。

別ページにも、科目免除に関する記事があります。

「科目免除」=「大学院に進学したうえでの科目免除」という形でお話を進めさせてください。

科目免除になったら、会計系の修士課程卒業で会計科目のうち1科目免除、税法系の修士課程の卒業で、税法が2科目免除になります。

つまり、修士課程をふたつクリアすれば、簿記論か財務諸表論のうち1科目、税法のうち好きなものから1科目取るだけで税理士資格を取得できます。

確かに、科目免除が嫌われるケースもあります。

上述した大手税理士法人なんかでは「科目免除者応相談」扱いのところもあるので、大手で経験を積みたいとお考えの方には軽々しく進められるものではありません。 しかし、税理士として開業することが目的、あるいは資格を取得することそのものが目的なのであれば、費用と相談してみる余地は十分にあると考えます。

まとめ

結論として、簿記からスタートするのがベストです。

しかしその先は、あなたが使える時間との兼ね合いも考慮し、科目免除も考慮しながら進めたいところです。

とは言え、会計1科目を学ぶことはどうしたって避けられません。

まずは簿記論をスタートし、1年で合格する。そこから先のことはそのあと考えても遅くはないと考えますが、あなたはどう思われますか?