中小企業診断士とは?

中小企業診断士とは、経営コンサルタントとしての唯一の国家資格です。企業をさまざまな角度から診断し、適切なアドバイスができる人を認定する資格で、最近では、日本版のMBA(経営学修士)とも言われています。マネジメントスキルを身につけてキャリアアップしたい人たちの間で人気の資格です。

中小企業診断士の資格を取得すると、経営全体を幅広く診断し、解決策を立案できる能力が身につきます。厳しい経営環境の中、企業は専門知識だけでなくさまざまな経営課題を解決してくれる人材を求めている傾向です。中小企業診断士は、こういった企業のニーズにマッチするため、多様なビジネスシーンでの活躍が期待されています。

経営コンサルタントとして独立したい方はもちろん、企業の中でキャリアアップしたい人や、よりマネジメント的な仕事にキャリアチェンジしたい人に有効な資格といえるでしょう。

中小企業診断士にはどうすればなれるのか

中小企業診断士になるには、中小企業診断士試験という国家試験に合格する必要があります。中小企業診断士の試験では、通常は、まず選択式試験である1次試験を受験し合格した後、筆記試験である2次試験を受験することになります。1次、2次試験ともに6割以上正解すれば合格となります。筆記試験に合格すると口述試験(面接)がありますが、口述試験は近年ほぼ全員が合格しています。口述試験に合格すると、試験は終了です。あとは、実務補習という実習を終了すれば中小企業診断士として正式に登録できます。

資格試験に合格

中小企業診断士試験は、例年、下記のような日程で実施されています。

第1次試験(選択式:7科目) 例年8月上旬の土・日の2日間*

A.経済学・経済政策

B.財務・会計

C.企業経営理論

D.運営管理

E.経営法務

F.経営情報システム

G.中小企業経営・政策

*2020年度は東京オリンピック開催の影響のため、7月中旬の土曜日・日曜日の2日間で実施予定。

第1次試験は6割以上の正解で合格となり第2次試験に進むことができます。

第2次試験(記述式:4科目) 例年10月下旬の日曜日

中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 が4科目

1組織(人事を含む)

2マーケティング・流通

3生産・技術

4財務・会計

第2次試験も6割以上の正解で合格となり第2次口述試験に進むことができます。

第2次口述試験(面接試験) 例年12月中旬の日曜日

面接です。ほぼ全員が合格します。

面接官の方との面接になります。問題がなければ面接試験合格となり、資格試験をすべて突破したことになります。

実務補修(実習)

中小企業診断士の資格を取得するには、2次試験に合格後に、通常は「実務補習」を受ける必要があります。具体的には、中小企業診断士の資格取得のためには以下の要件が必要です。

中小企業診断士第2次試験に合格後、3年以内に実務補習を15日以上受ける

診断実務に15日以上従事すること。

通常は、中小企業診断協会などが主催している「実務補習」を受ける方がほとんどですので、実務補習について解説します。

実務補習は、中小企業診断士が行う経営コンサルティングの実務の経験を積むために、実際の中小企業を対象に経営コンサルティングのグループワークを行うものです。通常は、5人ぐらいのグループに分かれ、グループの指導員であるベテランの中小企業診断士の指導を元に、経営コンサルティングの実務を行います。

経営コンサルティングの対象となる中小企業は、指導員の方から紹介されます。(指導員の業界の会社であることが多いようです)。5日間で1社の経営コンサルティングを行う形になります。そのため、これを3社行うと、計15日になり、中小企業診断士の登録要件を満たすことができます。

実務補習を行う日程はあらかじめ決められていますので、参加が可能な日程で申し込むことになります。ちなみに、連続して5日ではなく、2週間以内の期間で日程が組まれていることが多いようです。また、試験ではないため通常は実習が終了すれば中小企業診断士として登録できます。

中小企業診断士の資格取得の難易度は

合格率・合格基準は?

合格率

年度によって多少のバラツキはあるものの、全体を通して1次試験、2次試験共に20%前後の合格率で推移しています。 しかし、それぞれは別々の試験であることから、全体で計算してみるとストレートで合格するのは、わずか4%を超える程度という合格率です。合格者数は100人試験を受けた場合に、わずか4人しか合格できないという点を考えると、かなり難易度の高い試験であるといえるでしょう。

1次試験の合格基準について

① 総点数の 60% 以上

② 1科目でも満点の 40% 未満のないこと

1次試験合格のポイントは、必ずしも全科目で 60%以上を取らなくても良いことです。1科目が 50点だったとしても、他の科目で不足分の 10点を補うことができれば合格基準に達します。7科目すべて受験する場合には、合計得点 420点が合格基準です。ただし、全受験科目のうち、1科目でも 40点未満があると不合格になるので注意してください。

2次筆記試験の合格基準について

① 総点数の 60% 以上

② 1科目でも満点の 40% 未満のないこと

2次試験の筆記試験の合格基準は、総点数の60%以上で、かつ1科目でも40%未満のものがないことがポイントです。

勉強内容は

試験科目は経営に関する幅広い知識が必要になるのです。例えば、1次試験では全7科目に合格しなければなりません。

必要な学習時間は?

必要な学習時間

人それぞれ状況が異なるため一概には言えませんが、1,000時間ほどが目安だと言われています。1年間(約50週)でストレート合格を狙う場合、1週間当たり20時間の勉強が必要ということになります。資格の勉強をはじめて最初に大変なのは、この1週間20時間の勉強を習慣化することです。平日2時間、週末5時間というパターンや、週末も含んで毎日3時間など、人によって最適なペースがあると思います。まずはご自身にとって最適なペースを見つけてください。

なお、最初から週20時間を目指して飛ばしすぎてしまうと、途中で息切れして、勉強が継続できなくなるかもしれません。余裕を残す程度からはじめて、習慣化とともに徐々に勉強時間を増やしていくことをお勧めします。

短期間で合格するポイント

中小企業診断士は、短期間で合格する人と、なかなか合格できない人と個人差の大きい試験です。 差が出る理由としては、中小企業診断士が他の資格に比べて非常に試験範囲が広いという点が考えられます。つまり、特定の分野にこだわりすぎて掘り下げすぎてしまうと、勉強時間がいくらあっても終わらないのです。

一方で、60%以上正解すれば合格する試験なので、出題傾向を明確にして試験に出やすい分野を重点的に勉強することが重要になります。また、仕事をしながら学習するためには、通勤の時間など、すきま時間をうまく活用して学習した人が短期間で合格できるといえるでしょう。

費用的問題

勉強のやり方によって、かなり費用が変わります。独学の場合、市販のテキストや問題集、過去問を購入すると、最低でも3万円以上はかかります。入門書や模擬試験などをあわせて5万円程度は見積もっておくと良さそうです。

受験校に通う場合、大手受験校では通年コースで20万円~30万円程度かかるようです。さらに苦手科目向けのオプション講座を受講すると、数万円追加です。 通信教育を利用する場合、大手通信教育の講座では10万円以上が必要です。模擬試験が含まれていない場合は、その分が追加で必要になります。

中小企業診断士になるとできることは?

できるようになること

中小企業診断士を取得すると、様々な場面で活躍することができます。

独立してコンサルタントへ

経営コンサルタントとして独立するには、複数の専門分野を持っていることが一般的です。例えば、「人事関連の知識に詳しい」「営業の改善が得意である」といった強みを持っていると有利に活躍できます。独立するには、中小企業診断士の知識に加えて、ご自身の得意分野や経験を磨いていくと良いでしょう。

コンサルティング会社の方のキャリアアップに

経営コンサルティング会社などに所属しキャリアアップとして資格取得することも良いでしょう。中小企業診断士で学んだ診断・助言能力を活用して経営課題解決をサポートできます。

企業内でコンサルティング能力を活かす

最近では、企業内でもコンサルティング能力があると有利な職種が増えています。

・営業コンサルティング:営業により顧客の課題を解決する

・マーケティング:顧客や競合を分析しマーケティング戦略を策定する

・経営スタッフ:企業内外の経営状態や業界環境を分析し企業戦略を策定する

・IT部門:現代の経営戦略に大きな影響を与えるIT戦略を策定し実行する

こうした職種以外でも、近年、あらゆるビジネスシーンで課題を解決するコンサルティング能力が重要になってきており、中小企業診断士の活躍の場面が広がっています。

独立起業・新規事業開発

コンサルタントとして独立するだけでなく、会社を起業したり、社内起業として新規事業開発をしたりするときにも中小企業診断士のスキルが役立ちます。中小企業診断士の学習は、経営戦略、人事、マーケティング、会計、販売、生産、法律、など経営に関する幅広いテーマです。これらの知識は、事業を立ち上げる際に必須なものであり、起業や新規事業の成功する確率が高まります。

また、中小企業診断士という名称は、中小企業支援法に基づいて資格が制定されたという経緯があるものの、中小企業のみならず経営全般に関する知識・能力を兼ね備えています。したがって、大企業であっても十分に活用の場を広げることができます。

みんなはどうやって勉強しているのか

中小企業診断士試験にチャレンジするにあたり、どんな勉強方法で臨むかは大切な問題です。勉強方法の選択を間違えると、結果的に遠回りしてしまうこともあるでしょう。まずは、現段階でのレベルがどの程度か把握したうえで、自分に合う方法を選ぶことが重要です。

独学のメリット・デメリット

独学で国家試験合格を勝ち取ると言うタスクは、魅力的であり、モチベーションの原動力にもなります。しかし、現実はそう簡単でないことも知る必要があります。

独学のメリット

独学で勉強をはじめれば、必要最小限の出費で済みます。また、誰にも干渉されず、自分の好きなように気楽に勉強できるところも、独学のメリットです。仮に自分ひとりの力だけで合格できたとすれば、「誰の力も借りずに国家資格の合格を勝ち取った」と自慢できるとともに、自分自身への大きな自信につながるでしょう。その意欲が、学習を続けるエンジンになる場合もあります。

独学のデメリット

学習スケジュールや勉強方法などをプロデュースするのは、すべて自分自身です。間違った勉強方法をしていても、誰もアドバイスしてくれる人はいません。参考書選びで失敗すれば、別の一冊を新たに購入する必要があるなど、出費がかさんでしまうケースもあります。遠回りや挫折のリスクもあり、せっかく積み上げた学習も無駄になってしまう恐れも否定できません。

通学のメリット・デメリット

国家試験クラスの難題になると、多くの受験者は通学する方法を選びます。もちろん、この方法にもメリット・デメリットの両面があります。

通学のメリット

資格学校は、数多くの試験合格者を生み出してきた実績があることかあら、どうすれば最短での合格が可能か、そのノウハウを持っています。専門講師による直接指導が受けられる学習環境は、初学者にとって理想的と言えるでしょう。周囲には同じ目標を持つ仲間がいて刺激になり、モチベーションも高められます。分からないことがあても講師に質問できるため、理解も進みやすいでしょう。法改正や試験の合格率、先輩の体験談など、受験者が知りたい情報も比較的得られやすい環境であることも魅力です。

通学のデメリット

入学金や受講料などを収める必要があり、その額は決して小さくありません。また、講師は個人の理解度や学習量に合わせてくれませんので、分からないことをそのままにしていたらどんどん置いていかれます。ただ教えられたことを頭に入れようとする「受け身」の姿勢になりがちなところも、通学の落とし穴と言えるでしょう。

オンラインという独学の方法

働きながら勉強する場合は、特に時間の制約が大きいので独学を選択する人が多いでしょう。そんな時に一つ検討してもらいたいのが、「オンライン学習」です。

オンラインの特徴は下記に比較表で示していますが、特に注目したいのが「市販の書籍による独学のメリット」と「従来の通学・通信講座のメリット」の両方を取り入れている点にあります。

オンライン学習なら、独学の一番のメリットである「時間の自由」が担保されたまま、従来の通学講座等のメリットである、合格のノウハウや専門講師による授業と教材で勉強できます。もちろん、オンラインもまだまだ完璧ではありませんが、ITの進歩によりこれまでオンラインで実現しなかったサービスもどんどん出てきて、より便利になってきています。

自分に合う勉強方法を選ぼう

目標は中小企業診断士試験に合格することであり、勉強方法はその手段に過ぎません。それぞれの勉強方法の特徴を理解したうえで、自分にもっとも合う方法を選ぶことが大切です。

「勉強が苦手」「どんな勉強方法がふさわしいか自分では分からない」という方は、独学は向いていないかもしれません。特にビジネス系や法律系の資格試験は専門性が高く、受験すると決めた以上はそれなりの覚悟を持って挑まないと合格は困難です。タフな精神力も求められます。

誰かがサポートしてくれる学習環境であれば、自分では分からない課題も発見できて、必要な学習時間の設定もしやすくなるかもしれません。「どれくらいの勉強時間が必要か分からない」という方にとってもおすすめです。

資格の取得は、自分への投資と言う要素もあります。いずれの勉強方法を選択するにしても、お金の問題だけを判断材料にせず、さまざまな角度から検討を加えることが大切です。