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司法書士とはどんな仕事?
司法書士は、身近な「くらしの法律家」として、地域社会に貢献していくことができる法律専門職の国家資格です。
不動産・商業登記の手続、供託の手続き、裁判所などへ提出する書類の作成、多重債務問題への対応、高齢者・知的障害者の財産の管理や後見人事務などの幅広い業務を通して、依頼者の権利・財産を守る役割を果たしています。
【司法書士の主な業務】
不動産登記
不動産の売買や、相続などで所有者が変更になったときや、住宅ローンを返済し、抵当権を抹消するときには、登記手続きが必要となります。
このようなときには、司法書士の出番です。司法書士は、依頼者に代わってこれらの法律手続きを行い法的なサポートをすることができます。
大切な土地や建物などに関する様々な登記を依頼者に代わって行うことで、権利関係のトラブルを未然に防ぎ、依頼者の権利を保護していくのです。
商業登記
会社の登記も司法書士の仕事のひとつです。
例えば、会社を設立するとき、役員を変更するとき、会社の本店を移転するとき、会社を解散するときも登記が必要になります。
また、一般社団法人や、NPO法人などの法人が設立、変更、移転、解散を行うときの手続きを代理することもできます。
成年後見業務
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が不十分になってしまった方の財産や権利を守り、安心して暮らしていけるようにするための制度です。
既に判断能力が不十分となってしまった方を対象とする「法定後見」と、将来の認知症に備えて後見人を定める「任意後見」の2つがあります。司法書士は、保護を必要とされる方々に対し、これらの制度を通じて、様々なサポートを行っています。
裁判業務
裁判所に提出する訴状や答弁書などの書類を作成し、アドバイスを行うことで本人訴訟のサポートを行います。
また、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所における民事紛争(請求金額が140万円以下)については、代理人となり、法定で弁論することができます。
供託業務
供託とは供託所を通じてお金を納める制度です。司法書士は、供託所に提出する書類の作成や手続きの代理を行うことができます。例えば、地代や家賃などのトラブルで、不払いの責任を免れるための供託したいときが挙げられます。
司法書士にはどうすればなれるのか
司法書士になるには、司法書士試験に合格する方法が一般的なルートです。
合格後、司法書士として登録するには、事務所を設立しようとする地域を管轄する法務局、または地方法務局の管轄区域内にある司法書士会を通じて、日本司法書士会連合会の名簿に登録し、所定の研修を受ける必要があります。
なお、資格試験の合格だけが、司法書士になる唯一の方法ではありません。実は、裁判所や検察局に一定期間勤めた経験があれば、司法書士の資格が与えられます。
しかし、これには最低でも裁判所や検察局で10年以上のキャリアを積むことが条件であり、その上法務大臣の認定も受ける必要があるため、一般的には資格試験合格の道を目指す方法が選ばれています。
司法書士資格試験精度について
司法書士試験は、法務省が実施する国家試験です。受験資格はありませんので、年齢、学歴、国籍等に関係なく、誰でも受験することができます。また、受験回数にも制限はなく、合格するまで何度でもチャレンジが可能です。
司法書士試験には、筆記試験と口述試験があります。最終合格を勝ち取るためには、筆記試験合格を経て口述試験に合格することが必要です。
試験は年1回行われ、例年、筆記試験は毎年7月の第1日曜日(もしくは第2日曜日)、口述試験は10月上旬~10月中旬に行われています。
筆記試験
筆記試験は、午前の部と午後の部から構成されており、すべて一日で行われます。
出題形式は、5つの選択肢から1つの正答を選択する択一式(マークシート)、登記申請書類を作成する記述式があります。
口述試験
形式は口述(面接)式の試験になります。2名の試験官からの問いに対し、口頭で回答をします。
司法書士の資格取得の難易度は?
合格率・合格基準は?
合格率は平成21年度から下記のような推移になっております。
合格基準について
筆記試験に合格するためには、午前の部多肢択一式、午後の部多肢択一式、記述式にそれぞれ設けられた基準点をクリアし、総得点で合格点をクリアすることが必要です。この基準点、合格点は毎年固定された絶対点ではなく、毎年受験生の成績により変動する相対点です。なお、午前と午後の択一式の基準点をクリアできなければ、記述式まで採点されません。受験すれば、誰でも択一式から記述式まですべて採点してもらえるのではなく、一定の基準に達した受験生だけが、記述式まで採点されるという形式です。
※参考:司法書士試験 過去5年の基準点と合格点の推移
近年の司法書士試験の受験者数は15,000~16,000人前後です。これに対し、合格率は約3%。この数字だけみると非常に難しい試験ですが、この試験は適正に最後まであきらめずに勉強すれば合格できます。近年の司法書士試験のデータを分析すると、15,000~16,000人前後の受験者のうち、午前または午後の択一式いずれかをクリアしているのは3,000~4,000人前後で、両方の択一式をクリアできているのは、毎年2,200人前後です。 さらに記述式にも基準点があり、これをクリアできる人は、毎年1,100~1,200人程度です。そして、この1,100~1,200人の中から上位600~700人前後が合格者となるのです。
つまり、勝負は2,200人前後の中で決まる試験なのです。 択一式の基準点をクリアできない場合は、基礎知識が不十分であったり、過去問練習が絶対的に不足していたりと、適切な勉強ができていないケースがほとんどです。しかし、基礎知識+過去問練習の勉強を適切に行い継続すれば、それだけで2,200人前後の中に入ることができます。
あとは、記述式で基準点を下回らないように訓練し、択一式で基準点よりも7~8問程度多く得点できるように訓練すれば合格点を確保できる可能性が高まるといえるでしょう。
なお、口述試験については、ほとんどの方が合格しているため、筆記試験の合格者が事実上の最終合格者となります。
司法書士になるにはどんな勉強をすればいいのか?
勉強内容は
筆記試験合格に必要するには、各基準点をクリアし、試験全体の約8割5分の合格点確保しなればなりません。基準点をクリアすることを考えると、どの科目も捨て科目にできないため、科目ごとの適切な対策が必要です。
合格のカギは主要4科目の攻略!
司法書士試験で出題される11科目のなかでも、民法、不動産登記法、商法・会社法、商
業登記法は出題が多い科目です。これらの科目が主要4科目と呼ばれています。
これら科目の試験全体に占める配点の割合は82%(53問)にも及びます。
また、民法や商法・会社法といった実体法の理解は、不動産登記法や商業登記法などの
手続法を学ぶうえでも大切です。
そのため、主要4科目をしっかり理解することが、司法書士試験攻略のカギといえます。
その他の科目はコンパクトに!
試験全体での主要4科目のウエイトが高いため、それらの科目を重点的に学ぶこと
が必要ですが、合格点を確保するためには、その他の科目を捨て科目できないところ
が、司法書士試験の難しいところでもあります。
民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法は、深入りしすぎに過
去問を通じて基本的な知識を効率的におさえていくのが攻略のポイントです。
記述式は雛形のマスターから
筆記試験の午後の部では、事例をもとに登記申請書を作成する記述式問題が出題されます。限られた試験の時間のなかで、複雑な法律関係から適切な申請を判断しなければならないため、実務的な事務処理能力が求められるといえます。
対策のポイントは、はじめから本試験レベルの問題に取り組むのではなく、段階的に学んでいくことです。ますは、申請書の雛形をしっかり理解し、各論点を学べる基本的な問題で基礎力を養いましょう。 さらに過去問に取り組むことで、本試験が好む出題パターンの理解を深めながら実戦的な思考力を養うことができます。
必要な学習時間は?
司法書士試験の合格に必要な学習時間は、約2,000~3,000時間ともいわれています。
受験生それぞれの経験やスキルのほか、学習方法などによっても必要とする時間が異なるためと考えられます。
もっとも、ただ漫然と学習時間を積み重ねただけでは合格することは難しく、ポイントをよくおさえた学習が必要になります。
学習時間についてはあくまでも目安に留め、やるべきことをしっかり学べているかという視点が大切です。
ただ、独学ではじめからポイントを抑えた勉強をすることはかなりハードルが高いと言えるため、効率よく学習することを考えれば、資格学校などの講座、教材を利用することがお勧めです。 また、司法書士試験の受験生にとっては試験の学習以外に学習時間の確保も課題となるでしょう。まとまった学習時間を確保しにくい忙しい社会人や学生の方は、スキマ時間を活用するなど、時間の使い方を工夫することも大切といえます。
費用はどれくらいかかるの?
司法書士試験を独学で勉強するにあたり、テキスト・過去問題集をそろえる必要があります。試験で出題される11科目分揃えるとなると、テキスト費用だけでも2~3万円程度かかります。各科目の過去問まで揃えると、さらに3~4万円程度必要となるでしょう。
独学で勉強をはじめたのはいいものの、「内容が難解でテキストを何度読んでも理解できない」「モチベーションが続かない」などの理由で挫折するケースもあるようです。
一方、通信教育を利用する場合は、通学型では、30~50万円前後の費用が必要になります。通信型では、DVDやオンライン型があり、10~50万円程度まで価格は様々です。特に、忙しくて資格学校に通う時間がないという方は、通信型の教材をうまく、活用しているようです。
司法書士になるとできることは?
司法書士の資格の活かし方としては、主に独立開業があります。独立して自分の事務所を開き、一国一城の主として、自分のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができます。また、司法書士には定年もありませんので、働こうと思うなら何歳まででも働けます。もちろん、仕事の責任はすべて自分が負うことになりますが、自分が受けた仕事を、自分の裁量で、しかも依頼者のために全力で取り組み、それに見合う報酬を手に入れられれば、やりがいにあふれていることでしょう。
代表的な業務としては、不動産や会社に関する登記手続、成年後見業務、裁判所などへ提出する書類の作成があります。このほかにも、身近な法律のトラブルを解決すべく、日常生活における法律相談など多岐にわたります。また、近年では、簡易裁判所での訴訟代理などの業務も増え、活躍の場をさらに拡大しています。
なお、独立開業以外に司法書士事務所に勤務して司法書士として働くケースや、一般企業の法務部でその知識を生かして活躍するケースもあり、司法書士資格の活かし方は様々です。
みんなはどうやって勉強しているのか
司法書士試験の受験生は、現在のところ、スクール(通学)や通信教育で勉強していくのが一般的です。その他には独学で勉強する人もいます。
最も一般的なのはスクール(資格学校)に通学しながら勉強する方法です。スクールのメリットは、教室講義を直接受けられることや、法令の改正情報を入手しやすいことにあります。一方、デメリットは、決められた講義時間に合わせる必要があり、受講料が比較的高額になることといえます。
通信教育のメリットは、スクールと同様に、改正情報を入手しやすいことに加え、通学に比べて受講料が安く抑えられることも挙げられます。ただし、紙のテキスト・教材で自ら学習を行うことがメインとなり、講義を受けられず、学習内容の詳細まで学習するのが難しいことがデメリットといえます。
独学のメリットは、最も費用が安いことといえます。ただし、改正情報を含め、自ら教材をそろえる必要があり、手間や時間がかかることがデメリットとなります。
なお、最近シェアを広げているオンライン講座では、上記学習方法のメリットをバランス良く享受することができます。スマートフォン・PC・タブレットでいつでも場所を問わずに勉強でき、スクールと同様に改正情報を入手しやすいというメリットがあります。さらにスクールや通信教育に比べ、受講料が安い場合も多く、費用負担の面でも魅力があります。ただし、教室での講義は受けられませんし、紙のテキスト・教材が別料金となる場合もあります。
司法書士試験の学習は、長期間となる傾向にあります。上記のメリット・デメリットを参考に、学習期間トータルでの費用と学習の質とのバランスを考慮した上で、あなたに最も合った勉強方法を選ぶことが大切です。