弁護士とは、法律系資格の頂点に位置し、裁判における訴訟代理や弁護をはじめ、あらゆる法的トラブルおいて、法律知識を駆使し、依頼人の権利や利益を守る専門職です。

具体的には、「離婚したいけど夫が承諾してくれない」「残業代を払ってくれない会社を相手に返還訴訟を起こしたい」「ネットで誹謗中傷に遭い、ブランドイメージを傷つけられた。名誉を回復したい」など、社会にはさまざまなトラブルや争いごとがあります。法治国家である日本では、法的手続きにのっとり、和解や裁判の場といった場を提供することで、穏便な解決を図ります。争う両者の間に入って解決へと導く務めは、法律のスペシャリストである弁護士だからこそ可能です。

そんな弁護士の収入ですが、2014年に日弁連が全会員を対象に行ったアンケート調査をもとにご紹介します。回答者3,724人のうち、割合としてもっとも多かった収入を多い順に並べます。

1. 2000万円以上3000万円未満・・・494人(13.27%)

2. 1000万円以上1500万円未満・・・490人(13.16%)

3. 3000万円以上5000万円未満・・・422人(11.33%)

4. 500万円以上750万円未満・・・386人(10.37%)

5. 1500万円以上2000万円未満・・・319人(8.6%)

6. 750万円以上1000万円未満・・・291人(7.8%)

7. 200万円以上500万円未満・・・238人(6.4%)

8. 200万円未満・・・221人(5.9%)

9. 5000万円以上7500万円未満・・・187人(5.0%)

10. 1億円以上・・・88人(2.4%)

11. 7500万円以上1億円未満・・・63人(1.7%)

1000万円以上の回答者数の合計は2,063人と回答者全体の55.4%と過半数を超えます。試験制度が変わり合格者数が増え、弁護士人口は大きく増えましたが、それでも高収入が得られる職業の一つであることには変わりがないようです。

目次

弁護士にはどうすればなれるのか

弁護士になるには、法律家としての高い専門性と実務訓練が求められるため、数多くのステップを踏む必要があります。具体的には、弁護士になるまでのステップは、

「司法試験の受験資格を得る」→

「司法試験に合格する」→

「司法研修所にて司法修習を受ける」→

「司法修習生考試に合格する」→

「入会を希望する地域の弁護士会及び日本弁護士連合会の審査を経て、弁護士名簿に登録される」

の6つになります。

これらを全てクリアして、初めて、弁護士資格者の証である「ひまわりのバッジ」を身に付け、弁護士として活動することができます。

これらのステップの中で、特に大きな試練となるのが「司法試験の受験資格を得る」と「司法試験に合格する」です。後のステップは、慢心せず日々の努力を怠らない限り、志願者の多くがパスすることができます。

司法試験とはどんな試験なのか

司法試験とは、法曹三者である裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験です。(司法試験法第1条)。

毎年1回、5月中旬に中一日の休みを挟んだ4日間で実施されます。

試験の出題内容や難易度、合格水準は極めて高く、法律系資格試験のまさに最高峰です。マークシートの短答式試験とA4で4枚から8枚の答案用紙が用意された論文式試験の二つで実施されます。なお、今の司法試験には旧司法試験とは異なり口述試験はありません。ただし、後述するように、司法試験の受験資格を得るための予備試験では口述試験が実施されます。

法律の専門職ですので、確かに、覚えるべきことが多い試験ではありますが、六法全書に掲載されている条文を諳んじられるように暗記するような勉強は求められていません。試験でも、論文式試験や口述試験(予備試験のみ)では、試験中に司法試験委員会から貸与された試験用六法を参照することができます。 覚えるべきことも、内容を理解した上で問題演習を何度も行えば自然と身につく事柄も多く、力ずくで暗記しなければならない無味乾燥な学習では決してありません。法律は人間社会や日常生活に根差した学問であり、多くの方が興味深く学習しています。近年は法学の教科書も分かりやすく書かれており、学習内容が難解で苦痛だと感じる方はあまりいません。

参考:2019年の司法試験(本試験)の実施日程等について

試験公告 2018年11月9日(金)
願書交付 2018年11月9日(金)~12月4日(火)
願書受付 2018年11月20日(火)~12月4日(火)
試験実施 2019年5月15日(水)
 論文式試験 選択科目(3時間)
 論文式試験 公法系科目第1問(2時間)
 論文式試験 公法系科目第2問(2時間)
2019年5月16日(木)
 論文式試験 民事系科目第1問(2時間)
 論文式試験 民事系科目第2問(2時間)
 論文式試験 民事系科目第3問(2時間)
2019年5月18日(土)
 論文式試験 刑事系科目第1問(2時間)
 論文式試験 刑事系科目第2問(2時間)
2019年5月19日(日)
 短答式試験 民法(75分)
 短答式試験 憲法(50分)
 短答式試験 刑法(50分)
試験地 札幌市,仙台市,東京都,名古屋市,大阪市,広島市,福岡市
短答式試験
成績発表
2019年6月6日(木)
合格発表 2019年9月10日(火)

司法試験の受験資格を得るには

司法試験の受験資格が与えられるのは、次の二者に限られます。

1.法科大学院を修了した者

2.司法試験予備試験に合格した者

●法科大学院を修了について

全国にある法科大学院35校(2020年7月時点で募集を継続しているもの)のうちいずれかに入学し、既修者コースは2年、未修者コースは3年の課程を修了することで、受験資格を得るルートです。なお、期間が短い既修者コースに入学するには各法科大学院が実施する既修者試験(法律試験)に合格する必要があります。未修者コースの入試では小論文や面接等の法律試験以外の試験で選抜がなされます。

大学院ですので、原則として、大学卒業者でないと入学できません。なお、法学部3年間(早期卒業)+法科大学院2年の5年で司法試験受験資格を得られる「法曹コース」という新しい制度が2020年度より導入されます。

また、大学院のため、入学金・学費等の金銭的負担がかかります。さらに、単位取得のための時間的負担がかかるため、社会人の方は仕事を辞める必要があります。

しかし、費用と時間が許される方であれば、後述する予備試験の激しい競争を突破せずとも、法科大学院を修了することで、司法試験の受験資格を得ることができます。なお、法科大学院の標準年数での修了率は、全校平均で、既修者コースで75.3%、未修者コースで46.1%です。

●司法試験予備試験について

毎年5月から10月にかけて行われる「司法試験予備試験」を受験し、最終合格することで、法科大学院を修了するのと同様に、司法試験の受験資格を得ることができます。

予備試験は①短答式試験、②論文式試験、③口述式試験の3つのステップで構成されています。それぞれの段階で不合格となった場合、翌年度以降①から全て受け直しとなります。

短答式試験は5月中、論文式試験は7月中、口述式試験は10月中にそれぞれ行われます。日程としては土曜・日曜を中心に行われるので、社会人でも十分受験は可能です。

最終学歴や年齢に関係なく誰でも受験可能ですが、最終合格率が例年3%~4%前後で推移しており、非常に難関の試験とされています。ただし、難関の予備試験を突破した予備試験合格者の司法試験合格率は77.6%(2018年)に達し、法科大学院修了生の司法試験合格率29.1%(2018年)を大きく上回ります。

●2019年の司法試験予備試験の実施日程等について

試験公告 2018年11月19日(月)
願書交付 2019年1月4日(金)~2月1日(金)
願書受付 2019年1月21日(月)~2月1日(金)
短答式試験 試験期日
 2019年5月19日(日)
試験地
 札幌市又はその周辺,仙台市,東京都,名古屋市,大阪府又はその周辺,広島市又はその周辺,福岡市
合格発表
 2019年6月6日(木)
論文式試験 試験期日
 2019年7月14日(日),15日(月・祝)
試験地
 札幌市,東京都,大阪市,福岡市 合格発表
 2019年10月10日(木)
口述試験 試験期日
 2019年10月26日(土),27日(日)
試験地
 東京都又はその周辺
合格発表
 2019年11月7日(木)

●受験資格取得後は5年間司法試験に挑戦できる

法科大学院修了資格は修了した年から、予備試験合格資格は予備試験に合格した翌年から、それぞれ5年間、司法試験を受験することができます(司法試験法第4条)。

上記の受験可能期間は終了すると司法試験の受験資格は無くなりますが、もう一度、法科大学院に入りなおして修了する、予備試験に合格する、ことで新たな受験資格を取得すれば、再度5年間に渡って司法試験を受験することができるようになります。

実際に、法科大学院出身者の方で、受験制限内に司法試験に合格されなかった場合に、翌年から予備試験を受験されて合格し、予備試験合格者として司法試験に再挑戦し合格された方が一定数いらっしゃいます。 もちろん、法科大学院出身者の方が、もう一度法科大学院に入りなおすケースも相当数あります(ただし、自校修了者のみ、あるいは他の法科大学院修了者も含め、再入学を認めない法科大学院もあります)。

司法試験合格後の司法修習について

司法試験合格後は、法律実務を学ぶ司法修習へと進みます。実務スキルとともに高い職業意識や倫理観を約1年間通して学ぶ内容で、法律のプロを養成するための本格的なカリキュラムです。

8か月の分野別実務修習、2か月の選択型実務修習、2か月の集合修習で構成されています。第一線で活躍する弁護士や裁判官の直接指導もあり、受講生たちは裁判現場の雰囲気を感じながら法律実務を学びます。

司法修習のカリキュラムを修了した後に受験するのが、司法修習生考試試験です。修習生には司法試験に続いて2回目に受験する試験のため「二回試験」と呼ばれています。これに合格することで、法曹資格(弁護士・判事・検察官になることできる資格)を取得できます。

法曹資格を得たら、弁護士会に登録後、弁護士としての活動が認められます。まず、入会先地域の弁護士会を経て、日本弁護士連合会(日弁連)に登録請求。その後、各弁護士会および日弁連による資格審査会の議決を経て、登録の可否が判断されます。登録を認められて、晴れて弁護士としての活動をスタートできます。

司法試験の難易度は?

司法試験はどんなことが問われるの?

出題形式

司法試験は短答式と論文式の2つの形式があります。

・短答式試験とは?

短答式試験はマークシート形式で行われます。ここでは「法曹三者」に必要な法律の専門知識や法的論理に基づいて未知の事象を推測する力などが問われています。

・論述式試験とは?

論述式は全て筆記形式で行われ、ここでは専門的な学識だけでなく、法的な分析や構成ができるかどうかなどの論述の観点も評価され、この2つの形式によって「法曹三者」にふさわしいかどうかの判断がくだされます。

論述式試験では、問題文だけで数ページ以上に渡りますので、こちらでは割愛しますが、法務省のホームページでは過去問が無料で閲覧できますので、ご覧下さい。

●出題範囲

短答式試験の出題範囲

憲法・民法・刑法の3科目です。法学部の授業科目のように「刑法総論」「民法・契約法」という分節がされているわけではなく、刑法なら刑法の、民法なら民法の全範囲から出題されます。

論文式試験の出題範囲

公法系(憲法・行政法)、民事系(民法・商法・民事訴訟法)、刑事系(刑法・刑事訴訟法)に、各自で選んだ選択科目(倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際公法・国際私法の8科目の中から1つ)を加えた合計8科目です。各法律の全範囲の中から出題される点は短答式試験と同じです。

●司法試験の配点・試験時間

〇短答式試験の配点

科目 配点 試験時間
憲法 50点満点 50分
民法 75点満点 75分
刑法 50点満点 50分
3科目合計 175点満点 2時間55分

〇短答式試験の突破には、2つのハードルを越える必要があります。

・各科目とも、満点の4割以上を得点すること(最低ライン:憲法20点以上、民法30点以上、刑法20点以上)

・3科目の合計で合格最低点以上を得点すること(2017年は108点で満点の61.7%、2016年は114点で満点の65.1%)

〇論文式試験の配点

・必須科目は、受験生全員が同じ科目の試験を受けます。

・必須科目は、公法系(憲法・行政法)、民事系(民法・商法・民事訴訟法)、刑事系(刑法・刑事訴訟法)で、それぞれ1問100点満点で試験時間は各2時間です。必須科目は科目の間に休憩時間が入ります。

・選択科目は2問出題され合計100点、試験時間は3時間で2問の答案を一気に作成することになっています。

科目 配点 試験時間
公法系第1問(例年、憲法) 100点 2時間
公法系第2問(例年、行政法) 100点 2時間
民事系第1問(例年、民法) 100点 2時間
民事系第2問(例年、商法) 100点 2時間
民事系第3問(例年、民事訴訟法) 100点 2時間
刑事系第1問(例年、刑法) 100点 2時間
刑事系第2問(例年、刑事訴訟法) 100点 2時間
選択科目2問 計100点 3時間
8科目合計 800 17時間

●司法試験の合否判定・合格点・合格者数・合格率

司法試験の合否判定は以下の手順で行われます。

1.短答式試験ですべての科目で最低ライン(満点の40%以上)をクリアしていること

2.短答式試験3科目合計得点でその年の合格最低点をクリアしていること

3.短答式試験合格者(例年発表は6月上旬)のみ論文式試験の答案を採点する

※旧司法試験や予備試験とは異なり、今の司法試験では全員が論文式試験を受験し答案を作成しますが、採点されるのは短答式試験合格者のみとなります。

4.論文式試験ですべての科目の最低ライン(満点の25%点)をクリアしていること

※民事系:300点満点→最低ライン75点、公法系・刑事系:200点満点→最低ライン50点、選択科目:100点満点→最低ライン25点

なお、今の司法試験には、旧司法試験や予備試験のように論文式試験自体の合格点はありません。

5.以下の式で算出した総合得点により、その年の総合合格最低点をクリアしていること

・受験生の総合点は、①短答式試験と②論文式試験の比重を1:8とし,以下の算式で計算します。

・総合点 = 短答式試験の得点 + ( 論文式試験の得点 ×1400/800 )

●司法試験の合格点は毎年異なります。

司法試験は絶対評価でなく相対評価の試験であるため、最低ラインを除き合格最低点は例年変動します。従って、○○点を取れれば合格する、という試験ではなく、受験者の中で相対的に高い点数を取らなければなりません。

●司法試験の合格者数と合格率

合格者数は平成27年度が1,850人、平成28年度が1,583人、平成29年度が1,543人と減少傾向にありますが、受験者数も同じく減少しているので、全体としての合格率は毎年概ね25%前後で大きな変化はありません。

●司法試験合格者・合格率の推移

全体
法科大学院修了+予備合格者
予備合格者のみ
合格者数 合格率 合格者数 合格率
2006年 1,009人 48.25%
2007年 1,851人 40.18%
2008年 2,065人 32.98%
2009年 2,043人 27.64%
2010年 2,074人 25.41%
2011年 2,063人 23.54%
2012年 2,102人 25.06% 58人 68.24%
2013年 2,049人 26.77% 120人 71.86%
2014年 1,810人 22.58% 163人 66.80%
2015年 1,850人 23.08% 186人 61.79%
2016年 1,583人 22.95% 235人 61.52%
2017年 1,543人 25.86% 290人 72.50%
2018年 1,525人 29.11% 336人 77.60%

司法試験のどんなところが難しいのか?

●最大の難関は論文式試験

与えられた選択肢の中から正しいものが選べる短答式と異なり、論文式試験の解答は、罫線のみが引かれた答案用紙に論じるべき内容を自分の頭で考えなければなりません。

もちろん、実際の試験では、試験当日に答案に書く論述のすべてを試験現場で一から考えて書くわけではありません。やはり、多くの受験生が、予め準備できる論述は事前に準備してきます。例えば、答案の書き方といった作法や典型的な事例問題の答案例、基本論点の論証例等、はしっかり準備して覚えてくる受験生も多いと思います。

しかし、司法試験、予備試験の論文式試験では、受験生の応用力を試すために、誰もが知らない未知の論点が必ず出題されます。

したがって、何でも知識として事前に覚えておくという勉強だけでは対処できません。ここが論文式試験の難しいところです。

未知の論点については、知識に頼ることができず、試験の現場で、まさに自分の頭を捻って論じることになります。その際、いかに考え、どう論じるか、について、ある種のスキル、ノウハウの有無が勝敗を分けます。

誤解してほしくないのは、司法試験、予備試験は天才的なひらめきを試す試験ではなく、法律実務家としての素養の有無を試しているわけです。

この実務家の素養、すなわち法的思考スキル、論述ノウハウについては、野球やサッカーといったスポーツと同じようにやはり適切な指導者のやり方を見て、それを真似ることで学んでいただくのが、上達の近道です。

●ズバリ論文式試験の攻略法は?

予備試験の論文式試験では、「約5人に1人」しか通過できない短答式試験に合格した受験生の中で、さらに「5人に1人」に残らなければ合格できません。「5人に1人」と言われると、相当に素晴らしい答案を書かなければ合格できないように思えます。

しかし、実際には、ずば抜けた答案を1科目も書けなくとも、全ての科目で平均を超える答案を書くことができれば、総合得点で合格ラインをクリアできる試験なのです。

実は、論文式試験では「採点に当たってのおおまかな分布の目安」が定められています。上位何パーセントならば何点、次に上位何パーセントならば・・・と受験者全体の中での位置づけと得点の目安が決められています。そして、「採点の目安」では採点の結果、受験生の得点分布が正規分布となるように基準が定められ、最終的には偏差値換算で論文式試験の得点が計算されます。これは答案を採点する考査委員は複数いますが、採点者ごとの「評価のブレ」を最小限とするための一つの工夫で、一つ一つの答案について絶対的な評価で採点するのではなく、「全体の中での出来栄え」すなわち相対評価で採点を行うというものです。

そして、この採点分布をみると、いずれの科目でも受験者全体の中で平均を下回らなければ、そうして得られた各科目の得点の合計点では、論文式試験の合格点をクリアできる計算となります。

そうすると、どの科目でも相対評価で平均を超える答案を書ければよいわけで、極論すれば、他の受験生を圧倒するような上位答案を一通も書けなくとも、全科目で普通の答案を書くことができれば、合格できるわけです。

相対評価の論文式試験では、上位に入るような答案を書くのは至難の業です。得意科目であっても出題が例年より難しい内容で差がつかない問題であったり、得意であるが故に途中で書き過ぎてしまい時間内に最後までに書ききれず点数が伸び悩んだり、と実力が常に発揮できるとは限りません。 むしろ、弱点科目を無くし、どの科目であっても、平均を下回らない出来栄えの答案が書けるようになることが重要です。論文式試験の配点も、司法試験の選択科目を除けば、いずれの科目も配点の重みは同じであり、試験制度自体が、特定の科目を得意としたり優先したりする勉強を求めておらず、いずれの科目もバランスよく学習を行ってくる受験生が合格しやすいように制度設計がなされていると言えます。

司法試験合格までに必要な学習時間は?

受験資格を得るため、法科大学院ルートで行くか、予備試験ルートで行くか、法科大学院の授業も司法試験合格に必要な学習時間に含めて考える人もいれば、含めない人もいます。

ただ、よく聞かれる一般的な学習時間は3,000時間から5,000時間、中には10,000時間というものが多いようです。

司法試験の受験料は?

司法試験の受験料は28,000円です。

ちなみに予備試験の受験料は17,500です。

予備試験について

ここでは、予備試験についても簡単ですが紹介いたします。予備試験は司法試験と異なり、誰でも受験できます。大学を卒業していなくてもOKで、実際に、現役の高校生も受験しています。ただし、法科大学院修了生とバランスを取るために、一般教養科目や口述試験があります。

なお、一般教養科目について、社会人の方は苦手意識を持つようですが、予備試験には司法試験と異なり科目別の最低ライン点が設けられていないため、一般教養科目試験がゼロ点でも、法律科目試験で点数を伸ばして合計点で合格点に達することは可能です。実際、一般教養科目試験は配点が低く対策がしにくいため、多くの受験生が一般教養科目については特別の対策を行っていないようです。

●試験日程

予備試験は①短答式試験、②論文式試験、③口述式試験の3つのステップで構成されています。それぞれの段階で不合格となった場合、翌年度以降①から全て受け直しとなります。

短答式試験は5月中、論文式試験は7月中、口述式試験は10月中にそれぞれ行われます。日程としては土曜・日曜を中心に行われるので、社会人でも十分受験は可能です。

●試験科目

1.短答式試験

短答式試験では、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法という基本7法に加え、一般教養科目(人文科学、社会科学、自然科学、英語)の知識が問われます。

司法試験が憲民刑3科目なのに対し、科目数が非常に多いのが特徴です。

基本7法が各30点×7=210点、一般教養科目が60点で合計270点のうち、おおむね6割強を取れば合格するといわれています。2019年の合格点は162点でした。

なお、2019年の予備試験短答式試験の合格率は22.9%でした。

2.論文式試験

短答式試験に合格した方は、次の論文式試験を受験することができます。論文式試験では、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法という基本7法に加え、一般教養科目(人文科学、社会科学、自然科学)、法律実務基礎科目(民事実務、刑事実務、法曹倫理)の知識が問われます。

基本7法及び一般教養科目が各科目50点満点、法律実務基礎科目が民事及び刑事それぞれ50点とし合計100点満点、全て合わせて500点のうち、おおむね5割強を取れば合格するといわれています。2017年度の合格点は245点、2018年度では240点でした。

なお、2018年の予備試験論文式試験の合格率は18.0%でした。

3.口述式試験

口述式試験では、法律実務基礎科目のうち、民事実務及び刑事実務の知識が問われます。

口述式試験の配点・採点形式は少々複雑ですが、民事実務及び刑事実務に60点を基準点として配点し、合計119点以上で合格となります。

なお、2018年の予備試験口述試験の合格率は94.6%でした。

2018年の予備試験最終合格者(口述合格者)数は433人ですが、最初の試験である短答式試験の受験者数は11,136人(2018年)ですので、短答式試験受験からの最終合格率は3.89%となります。

合格した後は

予備試験合格者には法科大学院修了者と同等の司法試験受験資格が付与され、予備試験に合格した次の年から5年を経過するまでの期間に、司法試験を受験できます。

予備試験合格までに必要な学習時間について

一般に予備試験の合格に必要な勉強時間は3,000時間~8,000時間、中には10,000時間という方もいます。ただ、それまでの法律学習の経験の有無や学習環境、学習能力に依存する部分が大きいため、合格に必要な勉強時間を一概に決めつけることはできません。

また、上記の時間数には、予備試験合格後の司法試験対策時間も含めている場合もあります。

弁護士という職業の魅力とは

法律系資格の頂点にあること

弁護士は法律系資格の頂点に位置し、ほぼすべての法的トラブルを解決できるポテンシャルを備えています。弁護士資格があれば、弁理士や税理士、社会保険労務士などに許される独占業務も可能。大手企業や中央官庁に属して組織内弁護士として勤務する道もあります。カバーできる業務範囲の広さを考えると、独立開業の可能性を大きく広げてくれる資格はやはり弁護士、といえるのではないでしょうか。

社会貢献ができる魅力的な職業

はなやかで高収入というイメージをもたれがちな弁護士ですが、その活動の本質は「社会貢献」や「弱者保護」にあるといえるかもしれません。事実、「法律の知識を生かして困っている市民の手助けをしたい」「労働問題の解決を通して、日本の労務環境を改善したい」「経済苦・借金苦で悩む人々に対し、救済の道があることを教えたい」など、純粋に弱い立場に立たされた人々を助けたい思いで司法試験合格を目指す受験生も少なくないのです。

たとえば、大企業と係争中の市民がいたとします。大きな組織と比べ、個人の力はあらゆる面で貧弱です。個人ひとりの力では太刀打ちできないために、弁護士のような専門家が全面的にバックアップする必要があるのです。

困っている人を助けるのが、弁護士の役割です。そのうえ、多くの弱者の悩みを解決して感謝される仕事でもあります。その点にやりがいを見いだして弁護士活動を続ける専門家も少なくありません。最初の志が強いほど、弁護士活動を続ける原動力となるでしょう。

●弁護士に“定年”の2文字はない

士業資格の中には、資格の更新が必要なものもありますが、弁護士は一度取得すれば一生使える資格です。更新手続きや試験もないため、不正を働かない限り職を失う恐れはありません。

弁護士には、“定年”もありません。70歳、80歳を過ぎても現役でがんばっている先生たちはいます。苦学の末に身に付けた知識と実務スキル、問題解決能力は、一生使える財産なのです。

また、司法試験の受験には年齢制限がありません。いくつになってもチャレンジが可能です。事実、司法試験の合格者にはほぼ毎年60代・70代の年配者が含まれています。

いくつになっても活動できる資格のため、定年退職後の第2のライフプランニングに、弁護士資格を生かす方が少なくありません。先行き不透明な時代だけに、定年後の収入を安定的に確保する方法は多くのビジネスパーソンが考えておきたいところです。一生使える弁護士資格は、そのための有力なツールといえるでしょう。

弁護士資格を持てば、登録できる資格

裁判書類の作成や法律相談業務、刑事裁判の弁護人、民事裁判の代理人など、弁護士は法律に関するすべての業務を独占的に認められています。資格の汎用性は非常に高く、ほかの士業業務の兼任、および他資格の登録もこれひとつで可能です。

    以下は、弁護士の資格取得によって登録できる資格の種類です。

  • 弁理士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 行政書士
  • 海事補佐人

みんなはどうやって勉強しているのか

最も合理的と言われている試験の攻略法

●まずは予備試験対策から始めよう!

予備試験は最終学歴や年齢に関係なく誰でも受験可能です。予備試験ルートなら、社会人として働きながら、司法試験を目指すことも可能です。

 予備試験は司法試験と試験科目・出題形式が大きく重なり合いますので、最終的に法科大学院ルートに変更して司法試験の合格を目指す場合でも、それまでの予備試験対策の学習経験は大いに役立ちます。

●予備試験の短答対策は演習の日常化・習慣化

予備試験の短答試験は出題科目が法律科目だけでも7科目と多く、それぞれの科目の出題範囲も広範なため、試験直前期に短期集中で一気に詰め込めるものではありません。また、一度勉強したとしても、しばらく放置した分野の問題は解けなくなるのが通常です。

 そのため、筋トレやジョギングのように、毎日演習を行い、常に知識の精度が劣化していないかをチェックし、誤答問題の復習を通じて効率よく弱点を潰していく、このような地道な学習を早い段階から日常的に習慣化して行うことが、結果的に短期合格につながります。

●予備試験の論文対策は論証の事前準備とスキル、ノウハウのトレーニングが重要

論文試験で最も難しい点は、問われている内容ではなく、試験時間内に答案を書き切ることです。答案のレベルは、全科目で平均点を超えれば、合計で合格点を超えられます。高度な内容の論文を書くというよりも、受験生の平均レベルの答案を、いずれの科目でも、どのような出題に対しても常に書き切れるという安定力を身に着けることこそが合格する上で重要な力となります。

 合格レベルにある多くの受験生は、出題が予想できる重要基本論点については予め論証パターンを作成し覚えておくことで、答案を書くスピードを上げています。

 ただし、この論証パターンの事前準備による学習スタイルについては、出題側が好ましく思っておらず、この学習スタイルでは対応できない新しい出題方法を目指して、試験制度が大きく変更された経緯もあります。

 しかし、新試験に対応した新しい論証(議論の実益を踏まえて、判例の立場で書き、理由付けは短く、他方であてはめをたっぷり書く)には高い点数が与えられていることは、合格者の再現答案と成績評価から明白になっています。これは新・司法試験に限らず、予備試験の論文式試験も同様です。

 時間内に答案を書き切るためには、長文の問題文をいかに早く読んで、論点を的確に抽出できるか、という読解力も重要であり、問題文の読み方や問題文の事案の検討手順、論点の抽出方法等についての実践的な訓練が求められます。

 このような一種の高度なスキル、ノウハウはやはり独学では得難く、しかるべき指導者による実演型解説講義を参考としたトレーニングが有効です。

●口述試験は予行演習とこれまでの復習

口述試験は、合格率が9割以上であり、落とすための試験ではなく、合格させるための試験と言われております。

 その対策は、論文式試験が終わった後も、気を抜かず、実務基礎科目の勉強を定期的に行うことと、試験直前に行われる予備校の口述模試に参加して、口述試験特有の雰囲気に慣れておくことで十分です。

●予備試験の一般教養対策は特に不要。過去問検討で十分

・短答式試験について

そもそも出題範囲が事実上無制限であり内容も多岐に渡るため、有効な対策を行いにくい試験です。 しかも、配点割合も法律科目が77.8%と圧倒的に多く、受験戦略上、一般教養科目に対策のリソースを多く割くことは、そのコストパフォーマンスを考えると妥当ではありません。

 予備試験の短答の合格点は、過去8年間において、160点から170点の幅に収まっています。法律科目の合計満点は210点ですから、法律科目で8割を取れれば168点になります。法律で8割は、きちんと対策した受験生であれば取れない点数ではありません。しかも、合格点が最も高い年でも一般教養で20問中1問(3点)を正当すれば171点で合格点はクリアできます。

 実際には、一般教養は5肢択一の出題形式のため、目をつぶって機械的に選択した20問のすべての解答欄で同じ解答番号をマークすれば3問から4問すなわち9点から12点は取れる可能性が高いです。

 対策すればした分、得点が伸びる法律科目だけに集中して対策を進めましょう。

・論文式試験について

出題形式は、与えられた文章を読解し、設問1では指示に従った文章の要約を、設問2では文章の題意に沿った具体例を挙げての論述をそれぞれ求められますまた、事前に特定の知識が押さえておくことが全く必要とされていません。

配点割合は論文式試験全体の10%しかなく、一般教養科目に対策のリソースを多く割くのは受験戦略上は得策ではありません。

論文式試験は市販の過去問集で出題パターンと参考答案で文章要約と具体例の論じ方を確認しておけば十分です。答案の書き方もパターン化しており、複雑な論述は求められておらず、市販の解答例付きの過去問集でシンプルな書き方を確認しておけば十分対応できます。

学習方法の一般

司法試験・予備試験の受験生は、現在のところ、スクール(通学)や通信教育で勉強していくのが一般的です。その他には独学で勉強する人もいます。

最も一般的なのはスクール(資格学校)に通学しながら勉強する方法です。スクールのメリットは、教室講義を直接受けられることや、法令の改正情報を入手しやすいことにあります。一方、デメリットは、決められた講義時間に合わせる必要があり、受講料が比較的高額になることといえます。

通信教育のメリットは、スクールと同様に、改正情報を入手しやすいことに加え、通学に比べて受講料が安く抑えられることも挙げられます。ただし、紙のテキスト・教材で自ら学習を行うことがメインとなり、講義を受けられず、学習内容の詳細まで学習するのが難しいことがデメリットといえます。

独学のメリットは、最も費用が安いことといえます。ただし、改正情報を含め、自ら教材をそろえる必要があり、手間や時間がかかることがデメリットとなります。

なお、最近シェアを広げているオンライン講座では、上記学習方法のメリットをバランス良く享受することができます。スマートフォン・PC・タブレットでいつでも場所を問わずに勉強でき、スクールと同様に改正情報を入手しやすいというメリットがあります。さらにスクールや通信教育に比べ、受講料が安い場合も多く、費用負担の面でも魅力があります。ただし、教室での講義は受けられませんし、紙のテキスト・教材が別料金となる場合もあります。

  メリット デメリット
スクール(通学) 講義を直接受けられる。 改正情報を入手しやすい。 決められた講義時間に合わせる必要がある。 受講料が比較的高額。
通信教育 改正情報を入手しやすい。 通学に比べると受講料が安い。 紙のテキスト・教材で学習を行うことが主となり、講義はなし。
独学 最も費用が安い。 改正情報を含め、自ら教材をそろえる必要がある。
オンライン スマホ・PC等でいつでもどこでも講義を受けられる。 改正情報を入手しやすい。 通学に比べると受講料が安い。 教室での講義は受けられない。 紙のテキスト・教材は別料金。

司法試験、予備試験の学習は、長期間となる傾向にあります。上記のメリット・デメリットを参考に、学習期間トータルでの費用と学習の質とのバランスを考慮した上で、あなたに最も合った勉強方法を選ぶことが大切です。